エピソード3 im KEN
目を覚ますと、ママの背中が見えた。
ボクはうわ〜んと泣いた。
ママはおっぱいをくれた。
足の間がビチョビチョだったけど、ママが快適にしてくれた。
ママは今日も表情が暗い。大丈夫かな。不安な気持ちが伝わってくる。ボクは分かる。ボクとママは一心同体だから。
ご飯を食べて、クッションでリラックスしていると、チャイムが鳴った。
ルースだ。丸くて黒い目、赤い髪。ママとは違う見た目、違う話し方。
今日はルースと何をするんだろう。
ルースはコマを持ってきた。
ボクはクルクル回るものを見るのが好きだ。もちろん、自分でも回せる。ルースは「とっても上手。ケンはコマ名人ね」と褒めてくれた。
1時間ぐらい遊んだ後、ルースは誰かに電話した。
「これから、MUSEUMへ行くからそこでベビーシッターをバトンタッチしない?」
MUSEUMってどんな所だろ?
ベビーカーに乗せられ、ポカポカ暖かい日差しの中街を歩いた。
「ふ〜。見て、あの大きな白い建物がMUSEUM。」
入り口にこの前も見た、大きくてモジャモジャした恐ろしい見た目をしたヤツがいた。
ヤツは「やあ」とルースに言いながら、ボクの顔も覗きこんだ。
「ロドリゲス、ありがとう。助かるわ。
ドードーがチケット2枚くれたからあなたもどう?ドードーったら、会社の上司にチケットを貰ったみたいだけど、興味がないみたい。私は見たいと思ってた展覧会だから良かったわ。」
ボク達は建物の中に入った。中は外とは違ってひんやりしてる。たくさん人がいて、ときどき喋ったりしながらみんな四角い物ををじっと眺めていた。ルースはキラキラした目であちこち見ている。
ここがMUSEUMってとこか。
「ルース、こっちにスゴイ絵がある!」
モジャモジャしたヤツは言った。
「ああ、それは春画って言うのよ。日本では花嫁道具の一つなのよ。」とルースが説明した。
「へ〜、日本ってHENTAIな国だな。アメージング!」
ルースは建物の外に出るとベビーカーをモジャモジャしたヤツに渡した。
「よし、これからはオレがお世話するからよろしく!んじゃ〜、腹も減った事だしマクドナルドへ行こうか。」
マクドナルドに着くと、モジャモジャは何かを話し、ボクの前にも見たこともない物が置かれた。ヒョイっと紐みたいなものを掴み、ボクの口に入れた。ポテトと言うらしい。ボク好みでしょっぱくて美味しい。
「よし、次は公園だ!」
モジャモジャはそう言うと、赤いケーブルカーに乗り込んだ。ケーブルカーで隣に座ったおばあちゃんがボクに「まあ、かわいい坊やね」と言った。褒められて嬉しくなった。
公園に着き、モジャモジャがベンチに座っていると、今度はまた不思議なヤツが話しかけてきた。
「やあ、ロドリゲス。君に子どもがいただなんて驚きだよ。何歳なんだい?」
「やあ、ドードー。いやいや、オレの子じゃなくて、ベビーシッターしてるのさ。この子はケン。1歳ぐらいさ。」
「なんだ、そう言うことか。ほら、君って老け顔だろ?お父さんに見えなくもない。ハイ、ケン。はじめまして。」
2人の様子をジッと見ていた。
2人とも毛がフサフサで変なヤツだ。
でも、悪いやつではなさそうだ。
一緒にいると楽しい。家の外には楽しいことがたくさんある。
公園で散歩して、家に着くとロドリゲスは「今日は楽しかったな!またな、ケン!」と言って帰って行った。
ルースが用意してくれた夕飯を食べた。
夕飯を食べ、お風呂に入り、歯を磨くとボクの1日が終わる。ママのおっぱいを飲みながら眠りについた。
今度はママと一緒に外に出てみたいな。