【英語】「名詞の複数形+名詞」の正体
英語で複合名詞、つまり「名詞+名詞」等のような組み合わせを作る時、原則として最初の名詞は単数形を使います。
tennis court
teamwork
shoelace
trouser press
上のように、複合語は単語によって分かち書きしたり一緒に書いたりします。また、普段はペア扱いで複数形を使う名詞(shoeやtrouser)も、1番目に来た時には単数形を使います。
ちなみに、英語の複合名詞の作り方(品詞の組み合わせ)はた~くさんあるのですが、今回は「名詞+名詞」に的を絞りたいと思います。
さて、この「名詞+名詞」の複合名詞、最初の名詞が次の名詞を、あたかも形容詞であるかのように修飾していることから、
名詞の形容詞用法 と文法的には説明されるようです。
cat food と delicious foodを比べたら、「cat」(名詞)も「delicious」(形容詞)と同じように「food」を修飾しているように見えるためです。
しかし、「名詞の形容詞的用法」や「英語の複合名詞」でネットで調べても、あたかも示し合わせたかのように「単数形の名詞+名詞」ばかり取り上げているサイトがとても多いのです。
もちろん、原則は「単数形の名詞+名詞」だからですが、
お陰で「複数形の名詞+名詞」の例を探すのに苦労しました。
皆さんの中には、こういう疑問を持っている方もいるのではないでしょうか?
「複合名詞の最初の名詞は『単数形』と習ったのに、『複数形』を使っているものがあるのはなぜだろう?」
例えば、「arms race(軍拡競争)」「sales department(営業部門)」などがこれに当たります。
今回はこれを見ていきたいと思います。
大きく分けて、3種類のパターンが考えられます。
①複数形と単数形で意味が違う単語
②所有格の「'(アポストロフィ)」が省略されている
③増える傾向にある複数形の形容詞的用法
では、早速見ていきましょう。
①複数形と単数形で意味が違う単語
これは一番説明しやすい類のものです。
名詞の中には、単数か複数かで意味が全く変わるものがあります。
そんな時、「単数形の名詞+名詞」という規則に従っては意味が変わってしまうので、複数形を使うことになります。
この例の場合は、「ジーニアス英和大辞典」では、丁寧に「形容詞的に」とカッコ書きがあるものもあるので、見てみてください。
なお、この項の冒頭で取り上げた「arms race」の「arms」は「腕」を意味する「arm」とは別の単語です。
「arm」には同音異義語で「武器」を意味する単語「arm」があるのですが、これは通常複数形「arms」のみ使います。
そのため、少し例外だったわけですね。
さて、次から厄介になります。
②所有格の「'(アポストロフィ)」が省略されている
例えば「king」の所有格は、「's」をつけて「king's」とします。
一方、複数形「kings」の所有格は、「'」だけをつけて「kings'」とします。
困るのは、耳で聞くと「king's」「kings」「kings'」が全部一緒に聞こえることです。従って、ネイティブでもアポストロフィには苦労するそうです。
次の例を見てください。
これらは本来単数と複数で意味が変わらないので、複合語にする際、最初の名詞を複数形にする必要はありません。
これらの正体は「複数形名詞の所有格+名詞」であり、本当は
となるべきです。
が、イベント名やファイル名など、固有名詞のように使われる場合、スタイルの観点、つまり「見た目の美しさ」から「'」が消える傾向にあるようです。
つまり、これらは本当の意味での「複合名詞」ではないことに注意です。
なお、「student conference」「beginner class」と最初の名詞に単数形を使ってもOKで、これらは本来の複合名詞です。
婦人服については「women's wear」が別の表現としてあるようです。
③増える傾向にある複数形の形容詞的用法
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
最後のこれが一番厄介かもしれません。
どうやら、複合名詞の最初の名詞に複数形を使うことが増加傾向にあるのだそうです。(Wiki情報)
これは①のように「単数と複数で意味が違う」でもなく、
②のように「所有格の『'』が抜けている」わけでもありません。
次の例を見てみましょう。
下の例は日本語に「ズ」が反映されておらずややこしいですね(「ズ」を入れる例もあるようです)。
これらは、実は「communication network」や「operation management」と最初の名詞に単数形を使っても、実質的な意味はほとんど変わりません。
強いて違いがあるとすれば、
このように、動作全体に注目した場合には単数形、個々の具体的な内容に注目する場合には複数形が使われます。
しかし、結局のところはニュアンスにそこまで差が出ないそうで(ネイティブ談)、なぜこうなったかは「それが定着したから」としか言うことができなさそうです。
気のせいかもしれませんが、ビジネスやIT部門では特にこの傾向が多い気がします。
ここまで来ると、ノンネイティブの我々には全く判断ができない領域に入ってしまいますね……。
皆さんも例を見つけたら是非教えてください!
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いかがでしたでしょうか?
「名詞+名詞」の複合名詞には、原則から外れて「複数形の名詞+名詞」となっている(ように見える)ものが結構あります。
この記事が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです!
【参考文献(②のみ)】英語の歴史から考える 英文法の「なぜ」(朝尾幸次郎著)
【参考URL】Noun adjunct (Wikipedia) Noun adjunct - Wikipedia