【ドイツ語】be-という不思議な前つづり
こんにちは!
これまで、ドイツ語の前つづりのイメージを漢字で捉えるために、いくつか記事を書いてきましたが、
今回扱う前つづり「be-」の場合は、漢字を使わずに、別の形で取り上げたいと思います。
この「be-」という前つづり、英語にも「become」や「believe」などで見かけますよね。
ドイツ語の「be-」の前つづりの大きな役割は、「自動詞を他動詞にする」というものです。
これはどういうことでしょうか?
例えば次の例を見てみましょう。
Ich wohne in einem alten Haus.
(私は1軒の古い家に住んでいる。)
この「wohnen」は、自動詞です。
自動詞は、直接目的語(=4格目的語)がなくても文を作ることができる動詞です。
よって、「Ich wohne.」でも文は成立するのですが、もう少し説明をくわえたければ、「in einem alten Haus」という風に、前置詞句を付け足して表現します。
前置詞を繋げる分、少しまどろっこしいですよね。
では、「be-」をつけるとどうなるでしょうか。
Ich bewohne ein altes Haus.
(私は1軒の古い家に住んでいる)
日本語訳は同じですが、さっきは「in einem alten Haus」と前置詞を使って表現していた「1軒の古い家」が、「ein altes Haus」と直接目的語になっています。
これが、「be-」の持つ役割です。
どうしてこんなものが必要なの? と思われるかもしれませんが、
僕の考えとしては、「受身形が作れるようになれる」というのが大きな利点ではないかな、と思うのです。
例えば、「arbeiten an」と「bearbeiten」を見てみますと、
Wir arbeiten an Ihrer Anfrage.
Wir bearbeiten Ihre Anfrage.
(私たちは貴方の問い合わせを処理しています)
この2つは、大体同じ意味ですが、受け身形にしたいときは、「bearbeiten」の方だけが、「Ihre Anfrage」を主語に取ることができます。
《受身形》
An Ihrer Anfrage wird gearbeitet. (主語が取れない)
Ihre Anfrage wird bearbeitet. (主語が取れる)
自動詞は「主語なしの受け身文」になるのがドイツ語の特徴です。
※「形式的な主語」として「es」を文頭に置くことができますが、これは空白を埋めるだけの役割で、実際の主語ではありません。
でも、主語がある方が、やはり焦点がハッキリしますし、強調できますよね。
これを可能にするのが「be-」という前つづりなわけです。
実際、「be-」のつく他動詞には、ペアになる自動詞(または他動詞)がある場合が多いです。
下にそのうちの少しの例だけ紹介しますが、たくさんあるので、是非見つけてみてください!
使い方や使う場面の微妙な差も気づくことができれば、最高ですね!
● kommen an A と bekommen
⇒「bekommen」は基本単語なので、「kommen」との関係をあまり気にしませんが、「kommen」にも対応表現があるのは面白いですね。
「~に到達する ⇒ 手に入れる」という関係があるわけですね。
● reisen nach/in と bereisen
⇒ これは1対1対応ではなく、「bereisen」のほうは「旅行先の地を徹底的に知り尽くす」みたいな意味が入ります。
「reisen」の方は「旅行する」という動作自体に焦点があるのに対して、「bereisen」は「目的地」の方にフォーカスが置かれているんですね。
自動詞は(直接)目的語を取らないのだから、動作自体に重きが置かれるのは当たり前のことかもしれませんが、「be-」の有難みを知るためには重要なポイントですね。
● achten auf A と beachten
⇒ これも、「注意すべきもの」を直接目的語に取れるかどうかで動詞の形が変わります。
「achten」は「注意する」という動作そのものに、「beachten」は「注意すべきもの」のほうに、それぞれ重点が置かれているイメージですね。
● antworten auf A と beantworten
⇒ これも同じく、「答える」動作か、「答えるべき」対象の方かで、少し重点が変わっていますね。
主語のある受身形が作れる「beantworten」は個人的に重宝しています。
● fahren in 場所 と befahren
⇒「befahren」は、「Diese Straße ist stark befahren(この通りは交通量が多い)のように、受身形でよく使われます。
「In dieser Straße wird stark gefahren」よりも、主語がある文、ピントのハッキリした文になっていますよね。
● laden auf A(他動詞)と beladen
⇒「laden」は他動詞!ですね。面白いのは、
「laden」の直接目的語は「荷物」なのに対して、
「beladen」の直接目的語は「荷物を載せる物(トラックなど)」
であるということです。
「be-」が付くだけで同じ動作でも視点が変わるんですね!
● denken an A と bedenken
⇒「~を考える」と日本語では言いますが、直接目的語を取れるのは「be-」のついた「bedenken」の方です。
● folgen と befolgen
⇒「folgen」は間接目的語(=3格目的語)しか取れない「自動詞」ですが、「be-」が付くと直接目的語(=4格目的語)が取れるようになります。
英語の「follow the rules」に形も意味も対応するのは「die Regeln befolgen」のほうですね。
🍀ここまでお読みくださいましてありがとうございました!!🍀