ドイツ語文法:「枠構造」#ドイツ語は実は日本語と語順が同じ?
ドイツ語の語順は英語寄り? 日本語寄り?
こんばんは。
突然ですが、皆様は英語の5文型で出てきた「SVO」を覚えていらっしゃいますでしょうか?
Sは主語、Vは動詞、Oは目的語ですね。
英語の場合は、主語、動詞、目的語の順番で文を作るので、語順は「SVO」になります。
一方で、日本語は、主語、目的語、動詞の語順なので「SOV」という順番になります。
それでは、英語と親戚関係にあるドイツ語の語順は、SVOでしょうか、SOVでしょうか?
実は、ドイツ語の語順は、日本語と同じ、SOVなのです。
動詞が一番後ろに来るヨーロッパ言語って、何だか意外ではありませんか?
語順が日本語と同じであるため、実は、ドイツ語は日本人にとって学びやすい言語なのです。
この語順を知る上で重要なドイツ語の特徴が、「枠構造」と呼ばれるものです。
枠構造は、動詞どうしで文を挟み込むこと
「枠構造」というと、何だかこむづかしい感じに聞こえます。
ドイツ語の用語では「ザッツ・クラマー Satzklammer」というそうです。Satzは「文」、Klammerは「カッコ」という意味です。二つのカッコで、文の要素を挟み込むという、まるでサンドイッチのような構造のことを「枠構造」と呼びます。
この両方のカッコの役割を果たすのが、動詞です。
例えば、助動詞を使う場合。
助動詞とは、「~できる」「~しなければならない」などの意味を持つ、英語のcanやmust等に相当するものです。
通常、別の動詞の辞書に載る形(不定詞)と一緒に使われることが多いです。
ここまでは英語と同じです。
英語では、
I must go to school. (私は学校に行かなければなりません。)
この文の場合は、canが助動詞、speakが別の動詞となります。canとspeakは隣り合っていて、疑問文等ではない限りこの位置は変わりません。
一方でドイツ語の場合は、
Ich muss zur Schule gehen.
という語順になります。
英語で並べ替えてみると、
I must to school go.
となっています。
このとき、「must」と「go」という二つの動詞が、まるで(主語を除いた)文のその他の要素を挟み込んでいるカッコのようには見えないでしょうか?
もっと言うと、to school goまでが、mustとgoが係る要素ですよ、ということを示していると言えます。
I must ( to school ) go.
見えないカッコが見えてきたでしょうか?
「canとspeakが係る場所ですよ」と言いましたが、ということは、文章が長くなってもcanとspeakによる挟み込みは続きます。
Ich muss jeden Tag um 8 Uhr mit meiner kleinen Schwester mit dem Bus zur Schule gehen.
(私は毎日8時に妹とバスで学校に行かなければなりません。)
英語をこの語順に当てると、
I must every day at 8 with my little sister by bus to school go.
となります。
これだけ要素を詰め込んでも、やはり、
I must ( every day at 8 with my little sister by car to school ) go.
のように、二つの動詞(助動詞と不定詞)がカッコのように他の要素を挟み込んでいるのが分かります。
gehenを言ったら、「ここまで言ったのが全部、muss gehenに係っているから!」というサインになります。「カッコ閉じる!」という感覚です。
そして、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、Ich muss(私はしなければなりません)の後のドイツ語の語順と日本語の語順が(ほぼ)一致しているのです(もちろん、「バスで妹と」のように要素内の順番を変えることも可能)。
ここがポイントで、助動詞の後の語順は、目的語+動詞(不定詞)という形になり、日本語と語順が(ほぼ)一致するのです。
日本語頭で話してもドイツ語の文が作れる
これは日本人にとってはかなりの朗報です。
というのは、日本語頭で考えると、どうしても動詞は後に出てきてしまうので、とっさの一言に詰まってしまうことがあるからです。
こういうとき、ドイツ語の場合は、取り合えず助動詞まで口にしておけば、後は日本語頭のまま、目的語→動詞の順番で文を作っていけば良くなり、結果として発話のスピードが速く、流暢になります。
もちろん、枠構造は細かく説明するとこの他にも複数のパターンがあるのですが、掴みとしては、「難しいものではなく、むしろ日本人にとってドイツ語の語順をやさしくしてくれるもの」というのがお伝えできれば嬉しいです。
ここまでお読みいただきましてありがとうございました!