枠構造を制する者はドイツ語を制す
こんにちは!
今回はドイツ語初級文法の山場の1つ「枠構造」について書きたいと思います。
以前、枠構造に少し触れた記事を書いたことがありました。多くの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。
上の記事では、「枠構造」とは「動詞どうしで文を挟みこむこと」と書いています。
正確な表現ではありませんが、これが分かりやすいのではと思います。
「動詞どうし」って何? と言いますと、
次のように「2つの要素から成り立つ動詞」のことを指します。
○分離動詞(本動詞+前つづり)(aufstehenやeinladenなど)
○助動詞+動詞(können….sprechen、werden…kommenなど)
○助動詞+過去分詞(bin…gegangen、hat….gemachtなど)
これらの3つのパターンの動詞を使って文を作るときは、
2つの要素の間に文中のその他の情報を(ほぼ)全て入れてしまうのです。
あたかも2つの要素が枠になって文の他の要素を囲みこんだように見えるので、「枠構造」という文法用語で呼ばれます。
具体的に見ていきましょう。
○分離動詞を使う場合
Ich stehe jeden Tag um 8 Uhr auf.
(私は毎日8時に起きます)
Ich lade euch zu meiner Geburtstagsfeier ein.
(私は君たちを私の誕生日パーティに招待します)
上の二つの例では、「aufstehen」と「einladen」という動詞がそれぞれ使われています。
本動詞「stehen」「laden」と前つづり「auf」「ein」の間に、その他の文の情報が入っています。
なお、語順を替えれば主語も枠の中に入れることだってできますよ。
Jeden Tag stehe ich um 8 Uhr auf.
○助動詞+動詞を使う場合
Ich kann noch nicht gut Deutsch sprechen.
(私はまだドイツ語が上手に話せません)
Sie werden bald nach Frankfurt kommen.
(彼ら/彼女らはもうすぐフランクフルトにやって来るでしょう)
未来形を作る「werden」、話法の助動詞と呼ばれる「können」や「müssen」などは、動詞の原形と一緒に用いられます。
この場合、助動詞と動詞の原形で、残りの文の要素を囲い込んでしまいます。
○助動詞+過去分詞を使う場合
Ich bin gestern mit meiner Freundin ins Kino gegangen.
(私は昨日ガールフレンドと映画を観に行きました)
Er hat seine Hausaufgaben noch nicht gemacht.
(彼は宿題をまだやっていません)
完了形のように「助動詞+過去分詞」を作る場合も、このように助動詞と過去分詞で文の他の要素を囲い込みます。
この枠構造を考える上で大事なのは「定動詞2番目の原則」というドイツ語の語順の鉄則です。
名前は覚える必要はありません。私も今ググりました。
ドイツ語では、動詞の活用した形は文の中で必ず2番目の位置に置かれるという原則があります。
「動詞の活用した形」というのは「ich stehe」の「stehe」のように人称変化をしている動詞の形のことで、これを専門用語で「定動詞」と言います。人称や時制が「定まって」いるからです。
なお、定動詞を2番目にさえ置けば、1番目には基本何でも置くことができます。
Ich lerne jeden Tag bei Frau Müller Deutsch.
Jeden Tag lerne ich bei Frau Müller Deutsch.
Bei Frau Müller lerne ich jeden Tag Deutsch.
Deutsch lerne ich jeden Tag bei Frau Müller.
但し、2番目の位置には1つの要素しか置けません。上の3パターンのように2つの要素からなる動詞については、全部を2番目の位置に置くことはできないのです。
(X)Ich aufstehe jeden Tag um 8 Uhr.
(X)Ich kann sprechen noch nicht gut Deutsch.
(X)Ich bin gegangen gestern mit meiner Freundin ins Kino.
ではなぜ、動詞の原形や過去分詞、動詞の前つづりが文の後ろに来るんでしょうか?
実は、これらが後ろに来ているのではなく、
定動詞が前のほうに飛び出してきたんです。
???
ここで取り上げたいのが不定詞句です。
ドイツ語では、不定詞で作られたフレーズを作る場合、「目的語➡動詞」のように、動詞を最後に持ってくる順番にしますよね。
不定詞句が何か分からない方は、辞書を開いて、好きな単語の用例を調べてみてください。「zur Schule gehen」のように、文ではなくフレーズが掲載されていることがありますが、このフレーズがずばり不定詞句です。
皆さんの単語帳にも、表現は不定詞句で書かれているかもしれません。
さて、上記の例文をもとに、次のような不定詞句を用意してみました。
⚫︎ jeden Tag um 8 Uhr aufstehen
⚫︎ noch nicht gut Deutsch sprechen können
⚫︎ gestern mit meiner Freundin ins Kino gegangen sein
不定詞句は主語がなければこのままの順番で良いのですが、いざ文の中で主語がつくと、動詞を変化させなければいけません。
そして、「定動詞2番目の原則」に従い、動詞の活用した形は必ず文の2番目に持って行かなくてはならないんです。
ich stehe…..jeden Tag um 8 Uhr auf
ich kann….noch nicht gut Deutsch sprechen
ich bin….gestern mit meiner Freundin ins Kino gegangen
上の文を見てみてください。
例文として紹介したものと同じものが出来上がりましたよね?
「aufstehen」のような分離動詞の場合は、「auf stehen」のように分かち書きしてみると、前つづりと本動詞は実は2つの異なる要素だということがイメージしやすくなると思います。
そのため、「枠構造」は、「不定詞句の中から、定動詞を前に持っていったもの」という風に捉えることができるのです。
上記3つのパターンでない場合は、不定詞句を特に意識しなくても文を作ることができます。文の後ろに動詞が残りませんからね。
Ich gehe mit meiner Freundin ins Kino.
(← mit meiner Freundin ins Kino gehen)
でも、動詞の要素が2つになる場合には、実はドイツ語の語順は不定詞句をベースにしているんだということに気づくようになります。
Ich bin gestern mit meiner Freundin ins Kino gegangen.
(← gestern mit meiner Freundin ins Kino gegangen sein)
「枠(に収まる)構造」とは言いますが、むしろ定動詞が不定詞句の「枠からはみ出している」ようにも見えますね。
でも、つまるところ、正しい語順でドイツ語の文が作れるようになれさえすればいいので、ここの理屈っぽいところの捉え方は皆さんにお任せします。
いかがでしたでしょうか?
大変長くなりましてすみませんが、以上が「枠構造」の説明です。
少しでもお役に立てれば幸いです。
ここまでお読みいただきありがとうございました!!!