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【ドイツ語】漢字で覚える前つづり【unter(分離)】【下】
こんにちは!
今回は、分離前つづり「unter」を見ていきたいと思います。
分離「unter」:「下」
実は、前つづり「unter」は、分離も非分離も「下」という意味です。
ですが、着眼点がそれぞれで異なるのです。
何度も書いておりますが、ここでも、非分離と分離の前つづりの着眼点の違いについて記します。👇
非分離前つづりは 動詞を修飾し、
分離前つづりは 目的語(※)の変化した状態を説明する。
(※)他動詞:4格目的語、自動詞:主語
従って、同じ「下」という意味でも、
非分離「unter」は、「『下で』動作する」
分離「unter」は、「動作の結果、人・物の位置が『下になる』」
ことを表すのです。
実際に、分離動詞の例を見ていきましょう。
unter/gehen 【自】行って(主語が)下にある状態になる ⇒(日が)沈む
unter/stellen 置いて、~を下にある状態にする ⇒ 下に置く;しまう
unter/legen 置いて、~を下にある状態にする ⇒ 下に敷く
unter/bringen 連れてきて、~を下にある状態にする ⇒ ~を収容する、泊める
unter/graben 掘って、~を下にある状態にする ⇒(肥料)を地中に埋める
⭐本題とズレますが、unter/stellenとunter/bringenは、「どこに」という部分を「方向」ではなく「場所」で表します。
「unter」に「下への移動」や「下からの移動」という「動いていく描写」が含まれていないのは、非分離「unter」と同じですね。
日本語では「~に」「~へ」と、「方向」を表す表現と用いるので、日独のズレに注意が必要です。
Kann ich mein Fahrrad bei Dir im Keller unterstellen?
(僕の自転車を君のところの地下室にしまってもいいかい?)
Der Verletzte wurde im Krankenhaus untergebracht.
(その負傷した男性は病院に運ばれた。)
このように、主語(自動詞の場合)や目的語(他動詞の場合)が、動作の結果、下に位置を変える、というのが、分離「unter」に共通する意味です。
非分離と分離の違いは?
ここで改めて、非分離と分離の見分け方について見てみましょう。
「unterstellen(~を従属させる)【非分離】」と
「unter/stellen(~を下に置く)【分離】」を例にします。
Ⓐ Man hat die neue Abteilung dem Direktor direkt unterstellt.【非分離】
(新しい部局を社長に直属させた。)
➡「unter」は「どうstellenするのか」を補足説明している。
Ⓑ Ich habe mein Auto in der Garage untergestellt. 【分離】
(私はガレージに自分の車を片付けた。)
➡「stellen」した結果、「mein Auto = unter」になった。
Ⓐ(非分離)の場合は、「『下に』置く、『下に』位置づける」という動作の『やり方』に着目しています。
一方、Ⓑ(分離)では、動作そのものではなく、動作の結果、「自分の車」の状態が『変化』した(=位置が変わった)ことに着目しています。
Ⓑの場合、自分の車はガレージに置かれる前までは別の位置にあったことが文脈から読み取れます。
実際に「下」に置かれたかはさておき(ガレージが玄関より下の階にある家も集合住宅ならあり得ますが)、
「位置が変わった」ということが大事なメッセージなのです。
更に、この「unter/stellen」は「しまう」という意味なので、「使い終わって片付けられた」という意味でも「状態の変化」があったと言えます。
一方、Ⓐ(非分離)では、「新しい部局」がそれ以前はどの場所にあったか、ということは重要ではありません。新しい部局なので、そもそもそれ以前にはどこにもなかったでしょう。
「状態の変化(=位置の変化)」は重要ではないのです。
そもそも、物理的に部局が社長という人間の足元あたりに位置している可能性はとても低いはずです。会社によっては、社長室より上の階に課室があることもあります。
非分離と分離の前つづりの区別については、
一般的には、よく、
「非分離前つづりは抽象的、分離前つづりは具体的な動作を表す」
という説明を耳にします。
分離前つづりは「目的語の変化した状態」に注目するわけですから、具体的な動作を示すのもロジカルですよね。
長くなりましたが、ここまでお読みくださいましてありがとうございました!
【画像】kordula vahleさま【Pixabay】