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ドイツ鉄道:遅延・運休時の払い戻し
ドイツ鉄道(DB)には遅延がつきものです。
今年の6月には長距離列車の約2本に1本が遅延したそうなので、
影響を受けた人は多いと思います。
あまりに遅延が多いので、
私は「遅延」の文字を見ると払い戻しが楽しみになります。
ドイツ鉄道の遅延は年々酷さを増しているのですが、
払い戻しのお客様対応は年々スピードアップしている印象です。
もう、諦めてそういう方向に舵を切ったのかな?
ということで、この記事では「ドイツ鉄道が遅延した」場合の対応について書こうと思います。
なお、ここでは特急列車であるICEやICを利用する場合に限定します。
主な参考URL:
Was tun, wenn es mal schief läuft (bahn.de)
Ihre Rechte als Fahrgast im Eisenbahnverkehr
20分以上遅延:別の列車を利用する
さて、皆さんがICEやICに乗ろうと中央駅にやってくると、乗るはずの列車が来ていません。電光掲示板には「20分の遅延」と書いてあります。
厳密には、皆さんの目的地への到着予定が定刻より20分以上遅れることが見込まれる場合です。
この場合は、別の列車に乗ることが可能です。
目的地さえ同じであれば良いので、元々の列車と同じルートを通る必要もありません。
(2024/09/09追記:ICEの切符でICに乗ることも、ICの切符でICEに乗ることも、どちらも可能です。)
また、ICEやICの切符で「Super Sparpreis」や「Sparpreis」など、指定された列車にしか乗れない格安切符が存在しますが、
20分以上の遅延が発生した場合は、これらの切符を持っていても他の列車に乗ることが可能となります。
遅延が原因で接続列車に乗り遅れた場合も同じで、他の列車に乗ることができます。
事実上の「Flexpreis」になるわけです。
今やICEやICは2本に1本が遅延するご時世ですから、私は、列車指定の「Super Sparpreis」で安く切符を買い、大幅遅延が発生したらラッキーと思って別の列車を利用しています。
結果、これがお得なんですよね。
余談ですが、無料キャンセル不可の「Super Sparpreis」の切符の場合であっても、購入後180分以内(つまり3時間以内)であれば無料でキャンセルが可能です。DBアプリ「DB Navigator」で切符を購入していると簡単にキャンセルができます。
(2024/09/09追記:本記事公開当初は「購入後720時間(12時間)以内」の無料キャンセルが可能でしたが、現在は「180時間(3時間)以内」へと大幅変更になっています。
払い戻し:目的地に遅れて到着した場合
一方、遅延列車の運賃の払い戻しはとなると、条件は厳しくなります。
まず、原則として、払い戻しの対象となるのは「目的地到着が予定より61分以上遅い場合」です。
「60分」ちょうどでは払い戻し対象となりません。
なぜ遅延時間の計算には厳しいんだとツッコミたくなりますが、2本に1本の長距離列車が遅れるドイツ鉄道は、基準を緩くしてしまうと財政難に陥ってしまうのでしょう。
61分以上で、切符全額の25%が、
121分以上で、50%が返金されます。
2時間遅延しても半額しか返ってこないんですね。
日本の新幹線は全額返金ですから大違いですが、
そもそも定時運行にも雲泥の差があります。
払い戻しは「金額の支払い」か「クーポンの発行」のどちらかを選ぶことができます。
一方、払い戻し額が4ユーロを下回る場合は、払い戻しができません。
つまり、切符が16ユーロ未満の場合は返金がされないことになります。
さらに、2023年6月から、たとえ61分以上の遅延があった場合でも、
「ドイツ鉄道に責めがある場合」でしか払い戻しができなくなりました。
払い戻しができない場合は以下のとおりです。
・「非常事態」:異常気象、大自然災害、公衆衛生上の危機状況
・「第三者の行動」:線路内人立入、架線の盗難、車内の非常事態、法執行行為、妨害行為、テロ行為
・「乗客の過失」
コロナ禍や昨今の異常気象を反映した内容になっています。
あと、最近よく聞く遅延理由に「Polizeieinsatz(警察動員)」があるのですが、これも原則的には「法執行行為」に該当するようです。
マナーの悪い乗客を車掌さんが通報して、鉄道警察(Bahnpolizei)が次の駅から乗り込んでくることがたまにあります。
自然災害や悪天候で目的地に大幅に遅れて到着しても、払い戻しの対象にならないなんて、乗客目線からすると踏んだり蹴ったりですね。
鉄道側からすると、ただでさえ多い損失をなるべく減らしたいのかもしれません。その割に経営陣の多額のボーナス給付が物議を醸していましたが。
一方、労組のストライキ等の場合は、払い戻しや別の列車の利用は可能です。
払い戻し:旅行を諦めた・中断した場合
では、61分以上の遅延が出ているので、そもそも目的地まで行くのを諦めた場合はどうなるでしょうか? これには3パターンが考えられます。
①そもそも出発するのを諦めた。
この場合は、全額の払い戻しを受けることが可能です。
②途中まで移動していたが、諦めて出発地まで引き返した。
この場合も、全額の払い戻しを受けることが可能です。
③途中まで移動して、途中下車した。
この場合は、利用しなかった区間について払い戻しを受けることが可能です。
これらの場合の払い戻しは「口座送金のみ」で、クーポン発行の扱いはしていません。
なお、上記は、電車が運休(Ausfall)になった場合にも適用されます。
駅の掲示板に「Der Zug fällt aus」と書いてあれば運休です。
この場合、そもそも出発することを諦めれば全額が返金されますし、
その切符を使って別の列車で目的地まで移動することも可能です。
払い戻し:指定席
列車に遅延が発生し指定席を利用できなかった場合には、指定席代の払い戻しを受けることができます。サービスセンターやDB Reisezentrum(日本で言う「みどりの窓口」)などに問い合わせることで返金を受けられます。
払い戻しの方法
払い戻しの方法は、「Reisezentrum(日本で言う「緑の窓口」)」やDBウェブサイトにある用紙の使用、DBアカウントの使用、DBアプリ「DB Navigator」の利用など色々あります。
ここでは、私が一番使いやすいと思うDBアプリ「DB Navigator」を使った例を挙げたいと思います。
ただこれは、このアプリを使って切符を購入した場合に限られます。
①DBアプリの「Reisen(Meine Reisen)」から、該当チケットを選択。
②「Reisedetails」の中から「Reiseplan」もしくは「Ticket」を選択し、画面一番下にある「Weitere Aktionen」を押します。
③「Entschädigung beantragen」を選択します(「Reiseplan」の場合は上から2番目、「Ticket」の場合は一番上)
④「bahn.de」に画面が変わり、「Entschädigung beantragen」という画面が出ます。一番下の赤枠に囲まれた「Antrag jetzt stellen」を選択。
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⑤3つの選択肢が表示されます。
(1)Verspätung am Ziel:目的地に延着した場合はこれを選びます。
(2)Reise nicht angetreten:
61分以上の遅延があってそもそも出発を諦めた場合や、
列車が運休になり旅行を諦めた場合はこれを選びます。
(3)Reise abgebrochen und zurück:
移動を中断し出発駅に戻った場合はこれを選びます。
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(1)の場合は、どれくらい遅延したかという質問が現れるので、「60分よりも少ない(Weniger als 60 Minuten)」か「少なくとも60分(Mindestenst 60 Minuten)」の中から適切なものを選びます。
払い戻し申請をしている時点で61分以上遅れが出ていることは確実なので、「Mindestens 60 Minuten」を選びます。
それから、当初の予定での出発駅の出発時刻と目的地の到着時刻を入力し(普通であれば、元々自動で入っています)、「Weiter」を選択。
その次の画面「Wann ist Ihr Zug tatsächlich in (目的地)angekommen?」で、実際の目的地での到着時刻を入力し、「Weiter」を選択。
次の画面で「Hatten Sie zusätzliche Ausgaben?」(追加の出費がありましたか?)と訊かれるので、あった場合は「Ja」、無かった場合は「Nein」を押し、「Weiter zu Persönlichen Daten」に移動。
⑥氏名、住所、口座番号等を入力。
メールで申請の写しが欲しい場合には「Möchten Sie eine Kopie Ihres Antrages per E-Mail erhalten?」の横にチェック✅を入れます。
最後に「Antrag jetzt senden」を押して終了。
一部端折りましたが、大体こんな感じで申請ができます。
審査結果が来るのは10日ほどではないかと思いますが、最近アプリで申請した際には翌日に払い戻しの確認書がメールで届きました。
なお、払い戻しの申請は当該列車の運行日から3カ月以内に行う必要があります。
アプリのアップデートがあったため、少し仕様が異なっているかもしれませんので、ご了承いただけますと幸いです。
以上、長くなりましたが、お役に立てれれば幸いです。