留学先から留学する
これができると知ったのは、去年の夏休みのことでした。
うちの大学に、パリの大学から1学期(半年)の間留学しにきた中国人学生と出会ったことがきっかけです。
ヨーロッパには、「痴愚神礼賛」で有名なかのオランダの人文学者・エラスムスから名を取った、その名もずばり「エラスムス・プログラム」と呼ばれる交換留学制度が存在します。
これを使えば、主にEUその他のヨーロッパ諸国の大学に、授業料無しで短期交換留学をすることができるのです。
「ヨーロッパ人の学生は良いよなあ……」と思っていたのですが、くだんの中国人留学生も「エラスムス」を使って来たとのこと。そのとき、国籍ではなく、ヨーロッパ域内の大学に正規入学していれば、「エラスムス」の応募資格があることを知ったのです。
それを聞いてから、僕の心の中で、「英語圏への留学」という、昔から描いていた夢が再び頭をもたげはじめたのでした。
僕は日本での大学時代には、留学したいとは思っていたのですが、主に「語学力」と「手続きが面倒臭い」という理由で断念し、就職してからドイツに2年留学しました。
それでも、やはり、英語圏に少しでも留学すれば良かったなあ……という思いは残り続けたのです。
ドイツ語の上達に伴い、英語力も上がってきたのですが、「実生活」という裏付けがないと、自分の話している英語が「教科書英語」のようにどうしても思えてしまうからです。
英語を仕事で使うにしても、少なくとも一度は、この言語を母語として使っている人の中で暮らしてみたい……という気持ちは常にありました。
留学したからと言って必ずしも語学が上達するわけではない、と普段から思っている自分としては、この点が凄く矛盾していると思うのですが……。
そんなこんなで、ちょっとやってみるか、と軽い気持ちで「エラスムス」に応募してみることにしました。残念ながら、僕が応募できるプログラムには学部しかありませんでした(修士もないわけではありませんが、僕の専攻と合わなかったのです)。
30歳過ぎのオッサンだし、日本人だし、修士課程だし、本来はもっと将来ある若者たちに向けたプログラムだし、と、ダメ元で、全く期待せずに応募書類をメールで提出し、
3月初めに最終結果が通知されると言われていたのに、面接に呼ばれる気配もなく2月が過ぎたので、あーもうこれは書類選考で「サイレントお祈り」されたんだなと思って、今年の秋に卒業すべく準備を進めていました。
そんな矢先の3月4日、大学側から、「エラスムス」に選出されたとの連絡がありました。留学先は第一志望だったイングランドのダラム大学。イギリスの名門大学の1つであり、ハリーポッターの映画のロケ地でもあります。そこに、今年の秋から半年間の留学が認められたのです。
現在在籍している大学院の関係上、微妙に春に卒業試験を受けるタイミングを逃してしまうので、卒業は1年延びてしまいます。
もうこの歳なので日本で再就職も難しいかもしれない。一回り違う学部生たちとうまくやっていけないかもしれない。コロナ禍でまたオンライン授業になるかもしれない。実際、大して英語力は伸びないかもしれない。
一方で、これが英語圏に留学できる当面は最後のチャンスかもしれない。大学時代、「面倒臭い」で手放してしまった留学のチャンスを、また今、別の(後から思い返せば)些細な理由で手放してしまうのは勿体ないかもしれない。
大学には、留学の意志の回答をすぐにしなければならないので、あまり考えている暇はありません。
でも、「留学先から留学する」って、きっとなかなかない経験なので、恐らくは留学する方向で回答をすると思います。更に世界が拡がると良いなあ。
ここまでお読みくださいましてありがとうございました!!
【画像】jimsumo999さま(Pixabay)