【漢字で覚えるドイツ語前綴り】durch【貫】【徹】
こんにちは!
今回は、前つづりの中でも、特に「非分離」と「分離」の区別がつきにくい、「durch」を取り上げたいと思います。
以前の記事でも書いたのですが、「非分離前つづり」と「分離前つづり」が同じ形をしている場合は、
非分離 ⇒ 動詞を修飾する
分離 ⇒ 動作後の目的語(あるいは主語)の状態を表す
という基準を目安にすると、理解しやすいことがあります。
さて、「durch」ですが、これには「~を通って」という、前置詞としておなじみの意味があります。
この「~を通って」は、入口と出口があるトンネルのような空間を「通り抜けて」行く、という意味合いがあるので、ここから「最初から最後まで徹底的に」という比喩的な意味も出てきます。
この「最初から最後まで」というのがポイントですね。
同じように「完遂」や「徹底」という意味を持っている前つづりでも、
「aus」は「中から外への移動」、つまり「前の状態が限界に至り、次の状態へと変化する」がコア・イメージであり、
「auf」は、「下から上への移動」、つまり「新しい状態が始まる」というイメージで、
どちらも「次の状態への変化」を見ているのですが、「最初から最後まで」という意味合いはあまりありません。
前つづり「durch」は、
非分離 ⇒ 動詞を修飾:「徹底して~する」「貫いて~する」
分離 ⇒ 目的語の状態を説明:「(目的語が)通り終える(=貫かれる)、最初から最後までし終わる」(自動詞の場合は主語を説明)
という風に、使い分けることができます。
日本語に訳すると「非分離」と「分離」の区別が殆ど見えなくなるのですが、
「自動詞か他動詞か」
「目的語に何を取るか」
「sein支配かhaben支配か」
などの点に注目すると、違いが見えてくることがあります。
では、早速見ていきましょう。
「貫」の「durch」:通過、貫通を表す
【非分離】他動詞であることが多いです。
そのため、動作自体よりも目的語に重点が置かれているように思います。
durchfahren ~を走り抜ける、~を横断(縦断)する
[直訳:~を通り抜けるように(乗り物で)走る]
※ 目的語には「場所」「区間」が来ます。
Wir haben ganz Europa durchfahren.
(私たちはヨーロッパを横断した(ヨーロッパ中を旅して回った)。)
durchlaufen ~を走り抜ける、~(課程などを)修了する
[直訳:~を通り抜けるように(脚で)走る]
※ 目的語には「場所」などが来ます。
Wir haben den Wald durchlaufen.
(私たちはその森を駆け抜けた。)
Unsere Tochter hat die Schule durchlaufen.
(私たちの娘は学校を修了した(卒業した)。)
durchdringen ~を貫通する、浸透する
[直訳:~を通り抜けるように進む」
※ 目的語には「貫通・浸透される物/場所」が来ます。
Seine Stimme hat die Wand durchdrungen.
(彼の声が壁を通して聞こえてきた。)
【分離】自動詞であることが多いです。
そのため、動作自体に重きが置かれているように思えます。
「durch+4格」を用い、durchがダブることが多いです。
durch/fahren 通り抜ける(「~を通って」と言うにはdurch+4格が必要)
[直訳:(乗り物で)走り、その結果、通り抜ける]
Der Zug ist durch einen langen Tunnel durchgefahren.
(その列車は長いトンネルを走り抜けた。)
durch/laufen 走り抜ける(「~を通って」と言うにはdurch+4格が必要)
[直訳:(脚で)走り、その結果、通り抜ける]
Wir sind durch den Wald durchgelaufen.
(私たちはその森を通って走っていった。)
Wir sind durch das Museum nur durchgelaufen.
(私たちは美術館をざっとだけ見て終えた。)
durch/dringen 貫き進む、浸透する
[直訳:進み、その結果、通り抜ける]
Kein Geräusch dringt durch, denn die Wand ist sehr dick.
(騒音が入ってくることはない。壁がとても厚いからだ。)
👈「壁を通って」とわざわざ言わなくても良い。「場所」よりも「動作(入ってくる)」に注目。
「徹」のdurch:完遂、徹底を表す
【非分離】あまり多くありません。
durchsuchen 徹底的に探す
※目的語には「場所」が来ます。
Die Polizei hat das ganze Haus nach der Tatwaffe durchsucht.
(その凶器を求めて警察は家中を徹底的に捜索した。)
🍀個人的に、「非分離(durchsuchen)」と「分離(durch/suchen)」の区別がとても難しいと感じています。
どちらも日本語に訳すと「徹底的に/くまなく探す」になりますし、「探し方が徹底的(非分離)」なのと、「家の隅から隅まで探しつくす(分離)」というのは、結局のところ意味がほぼ同じだからです。
強いて言えば、分離前つづりの方が、「漏れがないほど家の隅々を(探す)」というニュアンスが強いです。「全部見て回る」という感じです。
ただ、非分離の指す「徹底的に探す」の「徹底的」とは、別に「家の隅々」を見て回ることだけではありませんよね。
金属探知機を使ったり、警察犬を投入したりするのも「徹底的」と言えるでしょうし。むやみに全ての部屋、全ての隅を調べ上げる必要もありません。
というわけで、メディアで言う「警察の捜査」と言う時には、非分離の方がよく使われる印象があります。
【分離】「徹」の意味の分離前つづりは色々とあります。
durch/lesen (始めから終わりまで)読み通す
durch/arbeiten (入念に)練り上げる、(本などを)精読する
durch/führen (計画などを最初から最後まで)実行する
いかがでしたでしょうか?
「durch」は、非分離と分離のいずれも意味が非常に似ているのですが、若干意味の重点の置き方が違うのが特徴です。
意味が似ているだけに、実際の用例を見て、どのような文脈でどちらが使われるのか、是非確かめてみてください!
🍀ここまでお読みくださいましてありがとうございました!!🍀