【語学】基礎固めを急ぐな
また昔話になるのですが、
私は中高と吹奏楽部に入っていまして、楽器はトランペットを吹いていました。
今から思えば楽器もスポーツと同じくらい基礎がとても大事で、本当は専門教育を受けた先生から基礎固めの指導を受けるのが理想なんでしょうが、
公立学校の吹奏楽部で全ての楽器にそんな指導なんてできませんから、先輩から教わったり自己流で基礎練をすることになります。
早く音階が吹けるようになりたかった私は、気がはやるあまり、変な癖を身に着けてしまいました。結果、基礎を疎かにしてしまったので、音は出るには出るけれど音色に広がりがなくなり、6年間にわたってトランペットに取り組んだにもかかわらず、ずっと「さまよえる初級者」の域を出られずに終わってしまったのでした。
この失敗体験から、基礎固めがいかに大事かということを悟りました。
この反省を語学に活かしたはずなのですが、それからもう20年以上経った今振り返ってみると、やはり基礎を疎かにしたがために伸び悩んでいる外国語があることに改めて気づきました。
語学は体型が変わっても体調を崩しても続けていける「一生ものの趣味」である一方、基礎固めに費やす時間は意外と短かったりします。
しかも、一度始めてしまったら、学習者のレベルはみんなバラバラになってしまい、きれいさっぱりゼロ初級者なんて人はいなくなってしまいます。
だからこそ、基礎が大事と言うか、「ちょっと興味があって昔かじってみました」という人が一番厄介だったりするんです。
ただ、この記事では本当は「基礎固めが大事」ということよりも、「似ている言語は難しい」という内容の記事の続きを書こうとしていました。初っ端から脱線しました。でも、一応話は共通しているのでご安心ください。
韓国語を学ばれた方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?
私は大学生時代、とにかく韓国語で新聞が早く読めるようになりたくて、初級文法書を1周しただけで、直ぐに辞書を片手にニュース記事を読み始めました。
「外国語記事100本ノック」というのは韓国語学習の際の成功体験を元にした私の学習法なんですが、実はあれも善し悪しがあるんです。
というのは、韓国語は上級語彙ほど日本語と似ているため、100本くらい読めば新聞記事の書き方にも慣れてくることができ、あたかも自分が韓国語が分かるような錯覚に陥ってしまうからです。
でもそれって、本当に韓国語力が身に着いているのではなく、
自分の日本語力を活かしているだけなんですよね。
本当に自分の韓国語力が上がったのか、韓国語は本当に自分に合っているかを測るには、固有語の語彙力がカギとなります。
そして、私は韓国語の固有語がめっぽう弱いし、何よりそこまで好きではないんです。覚えられないから好きじゃないのか、好きじゃないから忘れるのか。両方だと思います。
このように、一見自分の母語と似ている言語は、一足飛びに中上級の教材に飛びつくことができてしまうがために、逆に基礎が疎かになってしまうことがあります。
中国語を勉強したことがなくても、字面を読めば何となく意味が分かる。それも、初級者向けの文章よりも、新聞や本のような硬い文章のほうが意味が分かる。
こういう点から「あ、中国語って取っつきやすいんだな」と思って始めてしまうと、私と同じくエンドレス・ビギナーの森をさまようことになります。
また、英語との類似性から、フランス語を学ぶときも注意が必要です。
フランス語も、初級教材よりも中上級教材のほうがむしろ読みやすいのではないかと思います(聞きやすいかは別として)。
まだ少しアレンジのあるスペイン語・イタリア語単語と比べて、フランス語単語は英単語とスペルが全く一緒のものが少なくありません(意味は違ったりするんですけれどね)。そのため、特に自分がよく知っている分野の文章になると、単語を拾っていくだけでも何となく意味が分かってしまうものです。
で、これが語学学習においては罠になると私は思うのです。
語彙力強化のためにフランス語で色々本を読んでいるものの、これって本当に語彙力強化になっているのか?と思うことが多々あります。
国際政治の本を読んでいると「basculer」とか「bouleverser」って動詞がたくさん出てくるんですけれど、何度辞書を引いたことか。正直、これを書いている今でも定義があやふやです。
英語の知識では解析できない単語は、何度出会っても覚えられない。
よくよく考えてみると、韓国語とフランス語はどちらも独学です。
難解な内容になればなるほど、日本語や英語と使う語彙が似てくるので却って読みやすくなる。そのせいで、基礎が身に着いていないことに気づきにくいし、気づいていても目を背けてしまう。
「独学でC1を取った」なんていうのは記事の見出しとしてはとしては目を引きますが、本人的にそれが良いかは微妙。独学はやはり基礎を疎かにしがちです。学習内容にもムラが出来てしまうし、復習もなおざりにしてしまうためです。
こりゃ、伸びません。
人間、何年も勉強を続けていたらそれなりにプライドが芽生えてしまうので、基礎固めは本当にフレッシュなときに済ませておかないと、なかなかもう一度そこに立ち返るのは精神的にも辛いものがあります。
語学はタイムトライアルではありません。早く音が出せるようになっても、そこで身に着けた変な癖がその後自分にずっとつきまとうように、いびつな形で学んだ基礎は脆く、後々伸び悩む原因となってしまいます。
なので、結局のところ、誰か先生について教わり、定期的に試験を受けるアウトプットの機会がある場で、じっくりしっかり基礎を身に着けていくほうが、愚直に見えて実は一番確実な語学学習法なのだと思います。
積み上げるのは後からいくらでもできますが、土台固めは最初のときにしかできません。機を逃すと、いくら積み上げてもバラバラと崩れてくるだけです。自分も辛いし、周りも辛い。
私が誰かに教わって基礎から学んだ言語は、わずか2つだけ。
中高で学んだ英語と、大学の2外だったドイツ語。
よく考えれば、この2つの言語だけは基礎が盤石です。
ただ、これにはドイツ語が基礎固めをしやすい言語だという、ドイツ語特有の理由も隠れていると私は思います。
私が思うドイツ語の良いところは、
英語と基礎的な語彙は似ているけれど、高度な語彙は似ていない点です。
もちろん、基礎語彙でも英語とドイツ語は違うものも多いです。
手紙をドイツ語で「Brief」と言うのは、何度覚えても忘れたものでした。
それでも、英語はどれほどフランス語に染まっても心はゲルマン。
基礎語彙はフランス語よりもドイツ語と共通するものが多いですし、
文法構造も基本的な考え方はフランス語よりドイツ語寄りです。
そして、新聞や本が読めるようになるのに必要な高度な語彙が英語とドイツ語で異なるものが多いということは、そう言った語彙はドイツ語では一から学ばないといけないということです。
これをドイツ語の面倒な点と捉えることもできますが、
逆に言えば、一足飛びに中上級の教材に触れることができないからこそ、
基礎からしっかり語彙力を積み上げていくことができるので、穴の無い語学力を身に着けることができるのだと思います。
英語とドイツ語は基礎語彙が似ているということは、基礎はしっかりと固めることができるわけですし、ドイツ語の語彙はかなりシステマティックに作られているので、基礎さえ固めれば基礎語彙の知識で上級語彙を習得することは比較的容易です。
ただ、基礎固めという点では、やはり最初は誰かから教わるのが良い気がします。どうせなら独習ではなく、クラスのように一緒に学ぶ人のいる環境で、かつ先生が1人など少数である環境で学ぶほうが基礎が固まる気がします。
1日も早く上達したいというはやる気持ちは痛いほど分かりますが、語学はやはり基礎固めが最優先。効率や速度を求めずに続けたほうが、後々の飛躍的成長につながるのではないかと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
【画像】Mircea Lancuさま(Pixabay)
もし宜しければサポートいただけるととても嬉しいです!