【ドイツ語】漢字で覚える前つづり【über(非分離)】【越】【移】【覆】【過】
こんにちは!
今回は、ドイツ語の前つづりの中でも、非分離動詞にも分離動詞にも使われる前つづり「über」を扱おうと思います。
非分離動詞にも分離動詞にも使われる前つづりはいくつか存在しますが、どれも意味の差がそれほど大きくなく、単語ごとに丸暗記していかなければならないことが殆どです。
非分離?分離? 見分けるヒント
敢えて「非分離」と「分離」の区別をすると、次のようになります。
これだと抽象的なので、例を挙げると、
überfliegen「上を越えて飛ぶ」は非分離動詞ですが、
このüberは「fliegen(飛ぶ)」を修飾しています。
つまり、「どのようにfliegenする(飛ぶ)のか」ということを、「über(上を越えて)」が説明しているのです。
この場合の「über」は「上を越える」という意味で、überfliegenは「上空を飛ぶ」という意味になります。
従って、
というと、
「一機の飛行機がライン川を越えて飛んで行った(=ライン川上空を飛んで行った)」
という意味になります。
一方、分離動詞のüber/setzen(~を船で渡す)は、「目的語(人、もの)を「setzen(置く)」した結果、「目的語」は「überされた状態になる」ことを表します。
この時の「über」は「向こう側にある」という意味なので、über/setzenは、「~を置いて向こう側にある状態にする」、つまり「~を(船で)向こう岸に渡す」という意味になります。
「その渡し守が私たちをライン川の向こう岸へ渡してくれた。」
目的語と動詞の関係に注目して下さい。
den Rhein überfliegen は、「ライン川の上を越えて飛ぶ」でしたが、
uns übersetzen は「私たちを向こう岸に渡す」です。
ライン川を向こう岸に渡すのではなく、「飛行機が越えて飛ぶ」。
私たちを越えていくのではなく、「私たちを向こう岸に持っていく」。
もし、
というように、überfliegenを分離動詞として扱ってしまうと、
「ライン川がüber(=向こう岸にある)状態になる」となり、
「1機の飛行機が飛んでライン川を向こう岸に渡した(???)」
というような意味になります。
このように、「動詞をüberするのか」(=非分離)、「目的語をüberするのか」(=分離)の違いで非分離、分離の違いが出てくることになります。
ただ、この考えが全て当てはまるわけではないので、最終的には丸暗記が一番現実的な解決策ではあるのですが……。
非分離と分離のイメージの違いについての説明が長くなってしまいました。
それでは、今回は非分離、つまり動詞を修飾するほうの前つづり「über」の意味を見ていくことにしましょう。
非分離「über」:「超」
非分離の「über」の持つコアな意味は「こえる」に集約されます。
「越える」と「超える」両方の意味を持ちます。「超越」という意味もあれば、「超過」「過度」という、限度を超えるという意味のマイナスな意味もあります。
「超過」「超越」の意味を持つのは、ほぼ「非分離前つづり」(※)。
この点は、「非分離か分離か」で迷ったときの手がかりになりそうです。
(※über/wiegen(重すぎる)などの一部の例外を除く)
当てる漢字を「超」にするかか「越」にするかで迷いましたが、「超越」「超過」「超克」どれにも含まれている「超」の方を選ぶことにしました。
色々見ていきましょう。
「超過」と言う意味の「超」
überschätzen 度を越えるほど評価する ⇒ 過大評価する
überfordern 度を越えるほど要求する ⇒ 過大な要求をする
überziehen 度を越えるほど引っ張る ⇒ (時間を)超過する
「乗り越える」という意味の「超」
(「上を越えていく」という意味も含みます)
überspringen 越えるほど飛ぶ ⇒ 飛び越える
übertreten 越えるほど踏み入れる ⇒(国境・限度を)踏み越える
überfahren 上を越えて走る ⇒ (人を)車でひく
「超越」「凌駕」「超克」という意味の「超」
überleben (相手を)超えるほど生きる ⇒ 生き残る
※「den Krieg überleben」は、「戦争を超えて生きる」=「戦争を生き残る」。「ihren Mann überleben」は「夫より長く生きる」という意味。
überdauern (比較対象を)超えるほど長持ちする⇒~よりも長持ちする
überwinden (相手を)超えるほど勝つ ⇒ 打ち勝つ、克服する
übertreffen (相手を)超えるほど命中させる ⇒ 凌駕する、上回る
überwiegen (相手を)超えるほど重い ⇒~より重要だ、圧倒する
überstehen (何か)を超えて立つ ⇒ (困難を)切り抜ける、克服する
überreden (相手を)凌ぐほど話す (話で相手を凌駕する)⇒ 説得する
überzeugen(相手を)凌ぐほど証言する(証言で相手を凌駕する)⇒説得する
非分離「über」:「移」
分離前つづりにも共通する「移転」「移行」の意味です。
ただ、分離の場合は、「移転」の動作が具体的であるのに対して、非分離の場合は、抽象的であることが多いです。
例えば、「翻訳する(übersetzen)」。
この文の場合は、「このテキスト」をどこか具体的な場所、例えば本棚や引き出し、といった場所に「移す」のではありません。
「抽象的」というのも、非分離前つづりを見分けるカギになります。
この「移転」という意味に関連して、「委任」という意味もあります。ここでは「移転」と「委任」を一つの「移」にまとめました。
例えば、
übergeben 移して与える ⇒ 委任する、委ねる
überlassen 移して置いておく ⇒ 任せる
という単語があります。
非分離「über」:「覆」
この意味も分離前つづり「über」と似ていますが、
分離前つづりが「対象の上の部分を覆う」のに対して、
非分離前つづりは「対象全体を覆いつくす」という意味です。
überziehen 覆いつくすように引っ張る ⇒ 覆う
überdecken 覆いつくすようにかぶせる ⇒ 覆い隠す、隠ぺいする
übersehen 覆いつくすように見る ⇒ 見渡す、概観する
überblicken 覆いつくすように見やる ⇒ 見渡す、概観する
überrechnen 覆いつくすように計算する ⇒ 概算する、検算する
überlegen 覆いつくすように置く ⇒ じっくりと考える、熟慮する
非分離「über」:「過」
最後にここで紹介する意味は、「看過」の意味を持つ「過」です。「過失」とか「見過ごす」という意味で使う時の「過」ですね。
übersehen 過ぎて見る ⇒ 見過ごす
übergehen 過ぎて行く ⇒ 見過ごす、無視する
このübergehenは、非分離では「見過ごす」という意味ですが、分離では「移る」「移行する」という意味になるので要注意です!
長くなりましたが、ここまでお読みくださいましてありがとうございました!🍀🍀
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