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【ドイツ語】「ausführen」と「durchführen」
こんにちは!
今回は、似ていて区別のしにくい単語「ausführen」と「durchführen」の違いを見ていきたいと思います。
独和辞典にはどちらにも「実行する」の意味が掲載されることが多く、
実際この2つの単語は置き換え可能な場合が多く、意味がよく似ています。
強いて言えば
「ausführen」は「実行に移す」、
「durchführen」は「実施する」と訳すことができると思いますが、
もう少し詳しく見ていくことにしましょう。
「führen」は英語の「carry」に似ている
まず、2つの動詞に共通する「führen」から。
これは「率いる」という意味を持つ動詞です。
英語の「lead」に相当する意味です。
もう一つ、「運ぶ」という意味も持っています。
こちらは英語の「carry」に相当する意味です。
なお、ここまで聞いて、「ausführen」と「carry out」の対応に気づいた方は、とても勘が鋭いです。
「carry out」も「あるものを外に持ち出す」という意味が元にあり、そこから「実行する」という意味に広がっていきます。
ただ、残念ながら「carry out」は「ausführen」と「durchführen」両方の意味を持っているため、この2つの語の区別にはあまり使えません。
「ausführen」は「実行に移す」
では、前つづりの違いから2つの動詞の違いを見ていきましょう。
まずは「aus」から。
「aus」は「中から外へ」という場所移動の意味を持ち、
漢字1文字で書くと「出」となります。
つまり、「ausführen」の文字通りの意味は「~を中から外に運び出す」。
ausführenの数ある意味の中で、この字義通りの意味に近いのが「輸出する」という意味です。
まさに「中(国内)から外(国外)に出す」ということです。
そして、「中から外へ」という場所移動の「場所」を「段階」と置き換えると、「ある段階から別の段階に移す」というような意味にも理解できます。
この「ある段階」を「計画や構想」、「別の段階」を「実行」と考えると、
ausführenは比喩的に
「計画段階のものを実行段階に移す」
と使うこともできるわけです。
日本語にも「~を実行に移す」という表現がありますが、これは「ausführen」の持つニュアンスと似ていると思います。
そのため、「ausführen」とよく一緒に使われる名詞には、
「Befehl」(命令)
「Auftrag」(依頼)
「Plan」(計画)
「Aufgabe」(任務)
「Vorhaben」(もくろみ)
「Experiment」(実験)
といったものがあります。
また、英語の「execute」の意味でも使われ、コンピュータ用語では
「Programm」(プログラム)
「Neustart」(再起動)
「Skript」(スクリプト)
などの「実行」の際には、この「ausführen」が使われます。
このように、「まだ計画の段階だったものを、実行の段階に移す」という「段階のシフト」に焦点を当てているのが「ausführen」です。
「durchführen」は「最初から最後まで行う」
次に「durch」を見ていきます。
「durch」は、漢字一文字では「徹」や「遂」が近いかと思います。
四字熟語の「一部始終」「徹頭徹尾」の方がイメージしやすいかもしれません。
要するに「(ある動作の)初めから終わりまで」です。
つまり、
「aus」が「ある段階から別の段階へのシフト」を意味するのに対し、
「durch」は「ある段階の最初から最後まで」を意味するのです。
「実行に移す」ではなく「最初から最後まで行う、実施する」という意味であるため、「durchführen」の目的語の方が、「ausführen」のよりも種類が豊富な印象が私はあります。
強いて言えば、時間的に一定の長さのある名詞が目的語に来ます。
例えば、
「Veranstaltung」(イベント)
「Tagung」(会議)
「Durchsuchung」(捜索)
「Untersuchung」(調査)
「Arbeit」(業務)
「Messungen」(測量)
「Test」(試験)
などがそうです。
また、「Gesetz」(法律)も「durchführen」の目的語として使われます。
この場合は「durchführen」は「施行する」と言う意味になります。
意味の違いが分かりにくい場合
さて、ここまで違いについて書いてきましたが、残念ながらどちらの単語にも共通して使われる目的語は存在します。
「ausführen」に使われる目的語である
「Plan」(計画)
「Befehl」(命令)
「Experiment」(実験)
これらは「durchführen」でも使うことができます。
強弁すれば、「ausführen」は「実行『に移す』」点に重点を置き、
「durchführen」は「実施すること『それ自体』」に焦点を当てるため、
これらの目的語がどちらの動詞とも使われるのも不思議ではありません。
「計画を実行に移す」
「計画を実施する」
日本語でもどちらも使えますもんね。
まあ、「命令を実施する」はあまり言わない気はしますが…。
私の印象としては、「Befehl」のように、誰かから指図されたもの、依頼されたものについては「ausführen」の方をよく使うように感じます。
「durchführen」にはそんな「任務のような感じ」がそこまでありません。
こんな尻切れトンボのような終わり方となってしまいましたが、
少しでもお役に立てれば幸いです。