第101回箱根駅伝総括
1月2日、3日に行われた箱根駅伝は総合6位に終わりました。チームとして掲げた目標は4位以上、私個人としては青山学院大学、駒澤大学、國學院大學の「3強」のうちの一角を崩せるだけのチームを作れたと思っていましたので、この結果はとても悔しいです。
大会が終わり、短い解散期間の間で、いろいろな角度から敗因を分析しました。まだすべて終わっていませんが、3位に入った100回大会は選手層は薄かったものの体調不良者はもほとんどなく、チームの持てる力をほぼ発揮できた一方、今大会は選手層は厚く、総合力が上がりながらも故障者、体調不良者が昨年以上に出て、力を発揮しきれませんでした。指導者として選手の力を引き出せなかったことを悔やんでいます。
レース自体はうまく流れたと思います。1区、久保出雄太は勝負強さがあると見込んでいたので、少ないタイム差でまとめたあの順位は想定通りです。中央大学の吉居駿恭選手が抜け出した際にも周囲の出方を確認し、冷静に集団内に留まることを選択しました。事前に抜け出す選手が出たときの対応は一切の迷いがないよう事細かに指示していました。欲を言えば多くの選手が残っていたのでスパートのタイミングが早過ぎましたが、良い経験になったことでしょう。
2区のヴィクター・キムタイはこれまでにない仕上りで苦手な上りに挑戦し、現状できる走りをしてくれたことを評価しています。平林樹も最初の10キロを28分10秒で通過するオーバーペース気味の入りでしたが流れを引き戻し、林晃耀もアップダウンのコースを粘り切りました。しかし2区、3区、4区でそれぞれ30秒ほど想定より下回っていたのは私の読みが甘かったのかもしれません。
斎藤将也は大会1週間前に発熱し、体調不良だったことが響きました。その中での区間3位は見事と言うしかありませんが、「もし万全だったら」と思うと、残念でなりません。本人もきっと同じ気持ちだと思います。エースの体調不良でチーム全体に不安が生じたことも事実で、その意味での影響も大きかったです。
ただ将也は2学年上の山本唯翔が区間記録を出したときの取り組みを見ていたこともあり、自分はそこまで山対策ができていなかったという自覚もあるのでしょう。大会後、最終学年となるこの1年は唯翔のように本気で山に取り組むと決めたようです。その前向きな気持ちが生まれたことはチームにとっても彼の競技人生にとって収穫です。大会直前にも書きましたが、上りのトレーニングはトラックにも必ず生きます。この悔しさを飛躍のきっかけにしてほしいと思います。
復路は小林竜輝が6区で1年生歴代最高の好走を見せ、また9区で桜井優我が区間賞を獲得しました。一時はシード権争いも覚悟しましたが、ここは選手たちが粘り強さを発揮してくれたと思います。復路のレース直前、目標を総合6位に修正して選手たちを送り出しました。往路成績7位を守るのではなく、強気の姿勢で挑む気持ちが必要だと感じたからです。実際に劣勢の場面においても大きく崩れなかったところが今年のチームの強さであり、私も運営管理車から見ていて選手たちを誇らしく思いました。
これからまた1年かけてチームを作っていきますが、来季に向けては大きな期待を抱いています。その理由のひとつは今の3年生に実力者が多いことです。将也やヴィクター、桜井だけでなく、今大会前に故障で離脱した鈴木健真や、能力では彼らに匹敵するものを持つ山中達貴もいます。最終学年を迎える彼らが集大成の年として、花開いてくれると期待しています。
そして将也、竜輝と山で計算できる選手がいることも強みです。将也はコンディションさえ万全であれば区間賞、区間新まで狙える選手。そして竜輝もまだまだ未完成で、選手としての特性は違うものの、将也に近い成長曲線を追っていて、今後の伸び代は私でも測りかねるほどの潜在能力を持っています。今大会の青山学院大学が山で圧倒的な力を見せて優勝へひた走ったように、箱根駅伝では山の有力選手を用意できなければ優勝の2文字はありません。城西大学は城西大学らしい方法で、1年かけて箱根の特殊区間を攻略していきます。
今回、初の大学駅伝出走となった三宅駿、岩田真之、中島巨翔は貴重な経験を得ました。特に中島は緊張する場面で区間7位の結果を手にし、大きな自信となったことでしょう。また忘れてはいけないのが今回走らなかった下級生たちです。2年生の柴田侑や1年生の福田海未、橋本健市、大場崇義、正岡優翔、村木風舞など多くの選手が力をつけてきました。今年はトラックシーズンから存在感を見せてくれるはずです。
2025年は城西大学の創立60周年、そして男子駅伝部も25周年の節目の年になります。発足から3年で箱根駅伝に初出場してからしばらくの間は、メディアでも「新興校の代表格」のような取り上げ方をされてきました。そして今、箱根の出場も19回を数え、近年はシード権獲得では満足しないチームになりました。ただずっとこの位置に安住していては成長はありません。まだ私の個人的な思いではありますが、次の大会では優勝を狙うチームを作りたいと考えています。平均タイムや選手個々の実績を見ても、高すぎる目標だと思われる方は多いでしょう。しかし、それができるだけの選手とエビデンス、環境も整ってきましたし、これまでの陸上長距離界にない新たな取り組みも行う予定です。なにより優勝を目指す強い信念、覚悟を持つことが、選手たちのこれまで以上の成長につながるのではないかという思いがあります。
私自身が2025年は勝負の1年と位置づけて城西大学としての取り組みを進化、深化させ、これまでにない結果を手にしたいと考えています。
今年もご声援いただきますよう、よろしくお願いいたします。