変革しつつある高校野球界に、新しいことを受け入れられない人たちは何を思う?
今夏の仙台育英の初優勝には継投策が欠かせなかったと、コラムや音声アプリでしつこいくらいに言っていますが、大会トータルとしても複数投手制への理解が進んできたかと思います。
当然、緩々ながら「球数制限」の制度の影響も少なくはないですが、2018年以降、急速に投手の健康に関して、指導者の多くが向き合った結果だと思います。仙台育英の須江監督は、もともと継投主義でしたが、他にも変化が見えてきているということが言えます。
面白いデータがあるので、紹介します。
こちらは、僕の配信などにいつもご意見をくださったり、情報を教えてくれるシバカワユウジさん(@eagleshibakawa) です。
夏の甲子園起用人数
【2021年】 189人
【2022年】 227人
なんとか頑張って、複数投手を育成して、甲子園の舞台でも、しっかり決断できた証左と言えるでしょう。
さらに、こんな数字もあります。
<完投数>
【2019年】 28
【2021年】29
【2022年】 21
<完投勝利数>
【2019年】18
【2021年】20
【2022年】14
<球数140球以上>
【2019年】14 【2021年】9 【2022年】6
かなりの変化があると思います。
先も書いたように、球数制限ができた影響はあると思いますが、僕はそれ以上に指揮官たちの「決断」に寄るところは大きいと考えています。なぜなら、起用人数を増やしたからといって、結果が伴うとは限らないからです。
事実、こんな数値があると、シバカワさんが教えてくれました。
<夏の甲子園 防御率>
【2021年夏】3、44(先発3、13 救援4、25)
【2022年夏】4、34(先発4、19 救援4、65)
要するに起用人数が増えた2022年の方が明らかに防御率が高いわけです。
これをどう解釈するかなのですが、僕は起用人数が増えたのは、かなりの「手応え」があってのことではなく、多少の見切り発車があったのではないかということ。複数の投手を使うことの重要度を指導者がそれぞれ認識し、まだ、それに見合うだけの結果は出てないけれども、「なんとか抑えてくれるだろう」と起用しているケースがあるということ。
これには、複数投手を育成する機会を日本高野連は用意していないので、2、3番手以降でも戦える、十分にやれると体験をさせいないまま夏を迎えていることに起因すると僕は考えています。
だから、負担が大きいのが指導者に対してで、これは本当に今大会に出場したチームの指揮官たちは今の野球界の方向を理解してよく「決断した」と僕は賛辞を送りたいです。
出場校の中には、帰郷後にいろいろ言われた人もいるのではないかと思います。もっとエースを使うべきだったとか、なんであんな投手を使ったんだとか。新たに創設された制度に対して、環境が充実していない中なので、指導者側は苦しい。
それでも、選手のためにと決断したのは素晴らしいことだと僕は思います。
もちろん、今大会でも、それをしなかった古い体質の指揮官はいました。ただ、それらを批判しても意味がなく、単純に、そこにいかなければいいし、評価しなければいいだけのことです。
なので、本当に、今大会はいろんな意味で進歩があった大会だったなと改めて思います。
この動きの始まりには、登板過多の記事やツイート、世間からの声があったからそこに呼応した部分は大きかったと思います。そういう声があったから、タイブレーク制度、球数制限と進み、意識改革につながったと思う。
振り返ってみると、当時は「タイブレークは野球じゃない」とか「高校野球の延長戦のドラマがなくなる」とかいった声が大きかったのは事実です。その先に生まれる新たなドラマのことには目を向けず、現状維持ばかりを声にした人は少なくなかったです。
でも、動けば変わり始めた。
この事実をしっかりと野球界は自信としてほしいです。新しいことをやることに制限をかける必要なんてないんです。未来のことを見据えて、何かをやればまた新しいドラマが生まれる。そう思って「決断」してほしいです。
過去に否定し続けた人たち。
自分の当時の考えを恥じてください。
そして、これからは背中を押せる立場にまわってください。
本日は以上です。
最後に氏原の配信の告知を致しますので、興味のある方は遊びに来てください。