元祖平壌冷麺屋note(27)
リリーフ投手として、冷麺を始球から練り続けた。ノンストップで4時間。
灼熱の釜のかたわら、木臼の中央に、白い粉を投入し、熱湯を混ぜながら、攪拌(かくはん)する。手のひらと指で、混ざり具合を感知しながら、体重をかけてこねる。心臓マッサージをするように。
注文を受けて、一度に作れる冷麺の量は、並(大)サイズが5〜6杯、特大だと4杯程度、レギュラー投手のアボジ(父)は、ウルトラCで、それより1.5倍ほど多く練ることもあるけど。
オープンと同時に、自己ベストの特大4〜5杯の量を15分前後で作り続ける。途切れることなく、二時間ほど長距離マラソンのペースで、呼吸を整えながら。
2時間ほどで、第一陣を送り届けると、昼ご飯どきを避けてご来店する第二陣を迎える。さらに2時間。おやつの時間を過ぎるあたりで、ピークを過ぎる。
自作の冷麺をまかないとして食べて、体力と気力を回復させる。たわむれに、4時間で練った冷麺を数えてみたら、おおよそ特大が6杯、大(並)が54杯、小が38杯だった。来客65組。
ちなみに、夕方からラストオーダーまでは来客が25組ほど。後半は父が主に、練り途中、数回交代した。
本日の収穫は、右手に豆が二つ、左手に豆が一つ。
「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす。(宮本武蔵)」
3年間は練習で技術を身につけたとして、さらに10年、20年、練習(稽古)を続けることで次のステージへ進めるのだろう。量の蓄積で質が大きく変わる。
質量転化の法則に、近道はない。
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