元祖平壌冷麺屋note(42)
「良いTシャツを着ていますね」と、冷麺屋の二階席で、友田とんさんが言った。
冷麺屋の日記を書き始めよう(精確には公開しよう)と考えたのは、二見さわや歌「行商日記」を読んだことがきっかけかも知れない。
自転車の荷台にオカメサブレを並べて、公園などで行商をする日常が書かれている。改めて、人の日記を読むことは楽しいと感じた。
書くときに心がけたのは、気負わずに、日常を綴ること。過去、未来を問わずに、今書けることを書くこと。
近藤聡乃「ただ暮らす」に描かれた、エッセイ漫画を書く際の手順が、とても参考になった。
①内容を考える
②文章にする
この後は、ページのコマ割りや絵に起こす、原稿用紙のトレース、ペン入れ、仕上げと続くのだけど、大事なのは、①と②だとのこと。
そして①以前の、⓪ただ暮らす、ということについて描いていて、それがとても新鮮だった。
「日記を書くために」と思って暮らすと、うまくいかない。準備していることを忘れて、ただ暮らすだけ。
でも、完全に忘れてしまってもダメで、少しだけ準備中の気持ちで暮らすこと。
どちらの作品も、夏のあいだ、じっくりと読み進めた「代わりに読む人0 創刊準備号」に収録されている。
友田とんさんは、この雑誌の創刊者であり、編集者であり、書き手の一人でもある。
だから、友田さんがご来店したときに、感想をたくさん伝えたかったのだけど、
「良いTシャツを着ていますね」という、おうむ返ししか出来なかった。
その日、ボクは「1973年のピンボール」Tシャツを着ていて、友田さんは「代わりに読む人」Tシャツを着ていたのだった。