元祖平壌冷麺屋note(200)
「三体」の面壁者が地下10階で過ごしたような時間を、しばらく過ごしながら、外構記事を4本書き、本を2冊読み終え、冷麺本を執筆中のライターさんからの質問を、メールで回答した。
Q .いつからお店に出ていますか? 以前はどのようなお仕事を?
2014年4月から、お店に出ています。それまでの10年間は、朝鮮学校の中級部教員として、主に日本語授業や吹奏楽部の顧問を担当しました。
Q.元祖平壌冷麺屋の冷麺の特徴を改めていうならば?
春・夏・冬の3季節。その心は、「秋(飽き・空き)」がない。というのは、ジョークですが、年中、美味しく食べられるのが、最大の魅力だと思います(2022年は、298杯の平壌冷麺を食べました)
Q. 冬、オンドルの部屋で冷麺を食べた経験はおありですか?
オンドル部屋の体験はありませんが、炬燵で食べる雪見だいふくのように、寒い日に温かい格好をして、震えながら食べる冷麺が、いちばん好きです。
初代は、平壌の女子学生時代に、凍った大同江をスケートで滑っていたそうですが、マイナス18度の平壌で食べる冷麺も経験してみたいです。
Q.張模蘭さん→ 張元鎮さん→ 張秀成さん→ 張守基さんと4代続いていますね。そして初代に似ていらっしゃると思います。私は特に初代チャンモランさんの「冷麺や故郷への想い」を伝えたいと考えています。4代続いた秘訣は?(家族の団結?地元に根付いた味?)この前も行列ができていましたね。5代目候補の娘さんも冷麺がお好きな様子ですね♡
初代の教えは、営利に走らず、お客さんも、食べたい時に食べられる値段で提供して、冷麺屋の家族みんなが食べていけるくらいがいい、ということでした。
また、家族それぞれに役割分担をすることで、皆が団結しなければ美味しい冷麺が作れない、という仕組みになっているのも秘訣のひとつでしょう。
家族が、健康で、元気であること。
美味しい食べ物は、世界の「共通言語」だと思います。美味しいものを、美味しいままで作り続けてきたからこそ、いまに続いているのだと考えます。
4代続けて通い続けてくれる常連さんたちや、北海道、九州、韓国、フランス、カナダ、アメリカと世界中から、口コミで食べにきてくれるお客さんがいて、美味しいと思ってくれるからこそ、お店が続けられているのだと思います。
5代目候補の娘は、生後7ヶ月で冷麺スープを飲み干し、2歳頃には、真冬でも「冷麺ください!」と元気に厨房へ向かう、冷麺至上主義者に育ちました。(寒いからうどんにする?と聞いたら、ダメ!冷麺でしょ!と叱られましたよ笑)
Q.今年、84年目になりますか?創業100年を目指す想いは?
看板を出してから数えると84年目ですね。創業100年の頃は、還暦を控えて、娘が結婚を迎えるかも知れない時期ですが、大きな病気をしないように、健康に気をつけて日々を大切に過ごしたいです。
Q.ネットフリックスの冷麺賛歌(冷麺ラプソテイ)はご覧になりましたか?
観ましたよ。平壌冷麺のことを知りたいという取材者や研究者には、まず観ることを勧めています。蜂蜜と梨たっぷりの高宗冷麺には、あまり食欲はそそられませんが(笑)
そのあと東京からの電話で追加取材を受ける。盛岡冷麺の話が出たので、2年前に盛岡冷麺創始者のお孫さんが、父に「冷麺の打ち方をうちの初代に学んだので、ルーツは神戸の平壌冷麺屋であるから、挨拶して来なさい」と冷麺屋を訪ねてきて、初代との2ショット写真を届けにきてくれたこと、
それから、北南会談後の平壌冷麺ブームについての話になったので、5年前に韓国のMBCスペシャルで、平壌冷麺ドキュメンタリーが撮られて放映されたことを伝えた。
取材者が冷麺大好き過ぎて、電話ごしだけど、大喜びなのが伝わってきて嬉しかった。
電話を切った後は、娘と久しぶりに、会話にあがったジョン・パクが平壌冷麺をめぐる「玉柳館ソウル1号店」を観たのだった。
ジョンパクも冷麺が好き過ぎて、本当に美味しそうに食べているから、やっぱり嬉しかった。
娘が各シーンごとに「うんうん、この蕎麦湯が美味しいんだよね、わああ、最高だなあ」とコメントするのが、面白かった。冷麺至上主義コメンテーター。