元祖平壌冷麺屋note(2)
コロナ禍の前までは、月に2回ほどのペースで1人焼肉をしにご来店してくれていたHさんから、予約の電話があった。
2年ぶりでも、生センマイ、キムチ盛り合わせ、ハラミ、ミノ、冷麺(小)に、お持ち帰りでヤンニョンジャンの定番コースだった。
冷麺屋の2代目であるハンメ(祖母)は、震災前までは三ノ宮の東門街の入り口(旧東急ハンズとなり)のビルで冷麺屋を営業していて、今は本店で働いている。
現役映画監督兼俳優のクリント・イーストウッド、あるいは現役ジャズクラリネット奏者の北村英治と同い年だ。
Hさんの母もまた、ハンメと同世代だったということもあり、ハンメから「お母さんは元気?」と無邪気な質問ボールが飛んだ。
Hさんからの返球は、最近、亡くなったとのことだった。
それからしばらく、Hさんは生前のお母さんと話すような素振りでハンメと会話を続けていた。
Hさんの「どうして、そんなに元気で若くいられるんですか?」という質問に、
ハンメは「朝起きたら、ここ(冷麺屋)に行こうという目的があるからかな」と答えていた。
さらに、ハンメの姑(冷麺屋の初代)の言葉を紹介していた。
「歳はとっても、気持ちは19」
店内のテレビではCMに反町隆史が映っていて、すかさずハンメが「反町さんの親は、奥さんの方の親かどうかはしらないけど、100歳を超えているらしいねえ」
と、トリビアを開陳していた。
なるほど。若いわけだ。
自分(ボク)は、広瀬すずと能年玲奈と橋本環奈の違いも分からないのに。(芸能音痴)
Hさんはお会計のあとに、しばらくハンメの手をぎゅっと握りしめていた。