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日本を覆う『自民党という絶望』と、そこからの起死回生策

ある一つのテーマについて、複数の識者に取材した原稿や、執筆原稿を掲載する。よくある(最近ではその地位がかなり落ちている)総合雑誌の特集のつくり方だが、最近ではこの手法を新書で行うケースも多い。

雑誌のつくりで、自民党政治の宿疴に迫る新書

『自民党という絶望』(宝島社新書)もそうだ。自民党によって続く現下の長期政権、そのマイナス面を、防衛政策、旧統一教会問題、対米姿勢、右翼、経済政策、行政のデジタル化、食の安全保障、派閥、新自由主義、といった9つのテーマに分け、それぞれ識者や政治家へのインタビューを掲載している。数名を除き、取材の人選と内容が秀逸で、今の自民党が抱えている問題を広範囲に認識、捉えることができる。

旧統一教会問題の本質は何か

その白眉はやはり、旧統一教会問題を長く取材している鈴木エイトに取材した第2章だ。新聞や雑誌で断片的に紹介されている「旧統一教会と自民党とのずぶずぶの関係」が、簡潔に手際よくまとめられている。

こうある。〈本来、社会的百者に目を向け、その言葉に耳を傾けなくてはいけないはずの政治家が、多くの被害者がその家族が苦しんでいる事実を知りながら、元凶となっているカルト教団をひたらすら庇護してきた。さらに、自分自身の私利私欲のためにカルト教団をも食い物にして(引用者注:選挙協力を存分に受けて)、ひとたび関係性を指摘されれば、平然と切り捨てる。自分のことしか考えない政治家たちによって、この国は動かされてきたのだ(後略)〉

おざなりになってしまった頂上作戦

彼によると、メディアが面白おかしく取り上げた「マザームーン問題」、つまり、複数の自民党議員(その代表が山際元経済再生担当相)が当該団体の各種会合に頻繁に顔を出している(いた)問題の本質は、その議員が自ら望んで会合に赴いていることにあるわけではなく、彼らは「自民党からその場の盛り上げ隊」として派遣されているに過ぎず、その派遣元の特定(頂上確定作戦)こそがメディアが追究するべきテーマだった、というのである。当該問題は議員個人ではなく、自民党という組織と、(旧統一教会という)組織の強固なつながりにあり、というのだ。
そうなんだろうなあ。それにしても、この問題に切り込んでこなかった大手ジャーナリズムは情け無さすぎる。

政権交替など考えるな。首相公選制への道

本書の掉尾には特別寄稿として、浅羽通明の「自民党ラジカル化計画」が紹介されている。こんな風である。

国民はまず、二大政党制による健全な政権交替といった、永遠に実現しない「夢」から覚めよ。そのうえで、自民党を〈財界ほかの諸国民集団の諸国民集団の利益を汲み上げ、政策にまとめあげ、派閥という疑似政党同士の競争、または連携によってその優先順位を決定し、(癒着ですね)距離が近い官庁に実行させる準国家機関と割り切るのです〉という驚きの内容だ。

そのためには、各野党が自民党の総裁選のたびに、それぞれが推す総裁(首相候補)に投票する。自民党総裁選挙に野党も参加するのである。しかも、各党は自党が応援する候補者を国民からの推薦投票で決める。これによって実質的な首相公選制が実現することになると浅羽はのたまう。

思考ゲームとしてはものすごく面白い。日本政治ラジカル化計画である。が、問題は実効性だ。誰が猫の首に鈴をつけるのか。しかも、議会の存在価値が地に落ちる。最終的には要らなくなってしまうだろう。それこそ憲法改正が必要かもしれない。







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