アルゼンチンロックの旅1976年
Hola!
アルゼンチンロックの旅は1976年。1976年には軍事評議会がクーデターを起こし、軍人のビデラ将軍が大統領に就任。再びアルゼンチンは軍事政権へ。しかもこの頃の軍事政権はよりひどく、所謂「汚い戦争」と呼ばれる時期になる。この時期は左翼ゲリラの取締と称して、政治活動家、学生、ジャーナリストなど、政府の邪魔になると思われる人たちが逮捕、監禁、拷問され、3万人が死亡者や行方不明者となったとされる。しかし、3万人なので、本当にちょっと気に食わないレベルで逮捕してたんだろうな。生きたまま飛行機から海に突き落としたり、残虐なものだったみたいだ。
そんな中のアルゼンチンロック。普通に考えたらロックこそ取り締まられそうなものなのだが、なんでチャーリーガルシアもスピネッタも殺されなかったのか。
諸説あると思うが、Xでアルゼンチンの方と話してる感じだと、イギリス等のロックは取り締まられてたが(後にマルビナス戦争で戦うことになる)、アルゼンチン国内の音楽は基本的には守られていたとのこと。
もちろん基本的には。政府批判の歌なんて歌えるはずはありません。そこで、彼らは歌詞に深い意味…比喩などを混ぜて想いをぶつけていたみたいです。これがアルゼンチンロックの深みを作ることになったとも言えます。
またこれは僕の持論なのですが、アルゼンチン人の熱狂はサッカーを見ていたら分かります。もしチャーリーやスピネッタを殺したら、なんとなく暴動が激しくなりそうだったのでしなかったのでは、とも思ってます。
とはいえ、スピネッタやチャーリーがとりあえずアルゼンチンにとどまったのに対して、アルゼンチンロックの重要人物として何度も登場したBILLY BONDはブラジルに亡命してます。なので、基本的にはLA PESADAはもう出てきません。しかしBILLY BONDはプロデューサーとしてこれからも活躍します。
さて、前書きが長くなりましたが、アルゼンチンロックはプログレ全盛期に入ります。また世界的にはパンクロックの狼煙が上がります。ラモーンズの1stがいよいよ発売されます。
さて、ここから1枚ずつ。ハイ・ホー・レッツゴー!
①Invisible / El jardín de los presentes
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名盤。スピネッタ率いるInvisibleの3rd。ギターにTomás Gubitschに加わり、カルテットへ。彼は翌年ピアソラ楽団に入るくらいのすごいギタリスト。彼が入ることにより、よりジャジーで深みのある音楽になったと思います。
特にこのアルバムは僕が好きなカンタベリーロックに通じるものがあり、ジャズとロックの素晴らしい融合を生み出してます。
そして、またも人気・実力とも最高潮のときに解散。まあ、これはメンバーの亡命も関係はあるのかもしれないが、スピネッタはなかなかバンドが続かない。
②PorSuiGieco / 1st
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一方のチャーリーガルシアは、sui generis解散後、スーパーバンドを作ります。PorSuiGieco。
つまり、
por→Raul Porchetto
sui→Charly Garcia Nito Mestre
gieco→Leon gieco
またこのバンドはプラスでチャーリーの奥さんMaria Rosa Yorioも参加。raul porchettoとnito mestreの高音ボーカルコラボなんてなかなか聞けません。
sui generisの緊張感のある感じとまた違い、なんとなく仲良くやってる感じがあり、微笑ましいです。
③La Maquinas De Hacer Pajaros / 1st
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/169843260/picture_pc_a55bac26394f96be3e4e9c2b9bb8a76b.jpg?width=1200)
そして、アルゼンチンロック。時代はプログレ全盛期。チャーリーはLa Maquinas De Hacer Pajarosというプログレの音楽に特化したグループを結成。通称マキナ。
メンバーは
Oscar Moro ドラム
Jose Luis Fernandez ベース
Gustavo Bazterrica ギター
Carlos Cutaia メロトロン、オルガン、キーボード等
Charly Garcia ピアノ、シンセ、キーボード、ボーカル等
このグループは(も)名盤しかありません。
プログレとはいえ、歌心がたぶん一番にあり、その間奏にすごいシンセソロとか色々詰め込んである感じです。チャーリーのボーカルの表現力も一気にアップします。
④POLIFEMO / 1st
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/169844378/picture_pc_1906374c3b024dfc92ead295cc61dfed.jpg?width=1200)
その頃、David lebonはsui generisなどで活躍していたRinaldo RafanelliらとPOLIFEMOというバンドを結成します。
初期のアルゼンチンロックのような荒々さはこの頃になるとかなり無くなってきます。顔の広いDavid lebonらしく、いろんなものを吸収し、スピネッタ的でも、チャーリーガルシア的でもあるレベルの高い作品になってます。
⑤MIA / TRANSPARENCIAS
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そして、ここでアルゼンチンロックの重要人物がもう一人登場。LITO VITALE率いるプログレバンドMIA。
アルゼンチンロックの初期の流れのロックやフォークとはまたちょっと違うところからやってきました。クラシックにかなりの教養がありそうなプログレロックです。シンフォニック・ロック・ファン必聴の一枚。オルガンが暴れまくります。
⑥Espiritu / Libre Y Natural
プログレ全盛期。アルゼンチンロックはこの頃、多種多様なプログレロックが生まれている。こちらはEspirituというバンド。
アルゼンチンのプログレロックの共通点としては美しい作品が多いこと。
僕はアルゼンチンにはイタリア系の人が多いから、イタリアのプログレから影響してるのかなと勝手に思ってます。
歌心と複雑な曲構成と、素晴らしいです。
⑦CRUCIS / 1st
こちらはCRUCISというバンド。先程のEspirituと比べるとより技巧派?な印象を受ける。なんか全体的に手数が多い。それでも、美しい世界観。やはりイタリアのプログレに近い印象。このバンドのGustavo Montesanoは charly garciaとの交流もある。
⑧el reloj / 1st
こちらはプログレではなく、ハードロック。これがまたカッコいいんだな。南米の泣きのメロディが満載のバンド。また初期のアルゼンチンロックの荒々しさを引き継いでいる気がする。アルゼンチンロックは南米ハードの国でもある。
さて、大豊作の1976年。独裁政権下で名盤が生まれまくります。まだまだ追えてない部分もあるくらいたくさんの名盤があります。他のサイトとか本とかも片手に是非アルゼンチンロックの旅に出かけてみては!