コロナウイルス感染記③
これで最後。
6日目、深夜目覚めると、熱が引くと同時に喉の痛みもなくなっていた。前日までの痛めつけられかたが嘘のようだ。この回復具合は、無理やり着せられた呪いの鎧を教会で外されたかのようだった。それぐらい急な回復だった。寝たきり状態だったから、体の筋肉が落ちていることがわかる。咳と痰だけは続いていて、時折、激しくせき込む。
起き上がり、部屋を片付けはじめる。辺りに散乱しているペットボトルや、食べ物の包装紙を処分すると、すこしすっきりした。あとはしっかり回復してからだ。冷蔵庫にあった魚肉ソーセージが恐ろしく美味かった。固形物かつ蛋白質を摂るのは久しぶりだ。こんなに美味い魚肉ソーセージははじめてだ。サンドイッチを見ただけで吐き気を覚えていたことが噓のようだ。
今のところの後遺症としては、咳と痰が続いていることと、やたらと疲れやすくなったことだ。すぐに横になりたくなる。また、あれだけ眠ったはずなのに、少し気を許すと場所を選ばず、あっさり寝落ちしてしまう。
まともな食事を摂ることができるようになったので、その分回復すると思いきや、思うように元に戻っていないのが、現状だ。
その後、推測だが、感染経路が判明した。おそらく会社だ。私が罹患する前の週に、数人が有給休暇を取得していた。その後、体調を心配するような話が聞こえたような気がする。ただ、その人たちの休暇は1日程度だったため、コロナウイルス感染症とは思わなかった。ただ、変な咳をしていた社員がいた記憶がある。会社で感染したと思った理由は、私が療養中に数人の感染者が発生したためだ。間違いなく真っ黒だ。回復後、出勤し、もごもごと休暇中の詫びを言ったが、会社で感染したことがわかった時点で、申し訳なさ、迷惑をかけたという気持ちは霧散した。いや、むしろ労災だろ。
最後に、休んでいる間の仕事は見事に放置されていた。改めて、転職活動に力を入れ直すことを堅く心に誓った。
後日談としてその後の状況を書いておく。発症から10日以上経過したが、相変わらず疲労感がひどい。自室も戻り、シャワーと食事を終えるとすぐ横になってしまう。この横になりたいという感覚は15時ごろにはある。そして横になるとすぐ寝てしまう。目を開けていられないのだ。夜間は、数度目が覚めるが、そこでも起きていられず、すぐ寝てしまう。どうやらまだ回復途上のようだ。怠さも相変わらずだから、後先考えずに残業を切上げ、仕事を放置して帰宅している。社畜歴が長いから、次第に体がしんどいから帰宅しているのか、仕事が嫌だから帰っているのかわからなくなっている。定時が過ぎ、いつもなら一息入れてここから粘るところだが、その粘りが効かない。あっさり退却してしまう。相撲取りなら、体力の限界を感じたということで引退するところなのだろうが、社畜はそうはいかないところが辛いところだ。