了巷説百物語を読んで

 京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズと並ぶ人気シリーズの最終巻。1149頁の大作にも関わらず、文章が読みやすく、山場が幾つかある展開も巧妙だったし、孤独な藤兵衛が人間らしくなっていくところなどもあり、楽しく読み終えた。
 ただ、巷説百物語シリーズの最終巻としては物足りない部分があった。このシリーズは御行の又市が化け物を利用して仕掛ける過程が醍醐味だが、クライマックスは憑き物落としだった。もちろん、強大な権力から攻撃されて迎え撃つという構成上、仕掛けがメインにならないのは当然と言えば当然なのだが、巷説百物語としてはやはり物足りない。百鬼夜行シリーズの前日譚的なタイトルなら納得だが。
 そういった点はありつつも、20年以上読み続けたシリーズにけじめがついて良かったし、最初に書いたように楽しく読めた作品だった。

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