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死刑囚表現展2024 其の十二

*感想は私の独断と偏見です。

山田浩二作品

彼の作品はもっのすごい数がありました。
23×17.7の便箋に日記のように思いや感じた事をびっしりと書き、挿絵のように漫画ちっくなイラストを入れた作品が343点ありました。
それとは別に小説やら随筆が多数。
全部で何点あるのかわかりませんが、1日に何枚も書いてるんでしょう。
会場に展示されていたのは数点であとはファイル6冊くらいに収められていました。
全部の作品をじっくり見たかったけど何時間かけても読み終わらなそうだし
ファイルの前には多数の来場者が列をなしていたので数点みたぐらいで諦めました。

絵は小学生が漫画を描いたようなものであまり上手だとは感じれなくて昭和のような古くささがありました。
今年流行った「推しの子」「東京リベンジャーズ」「SPY FAMILY」とか「ポケモン」「ドラえもん」「キティ」「ミッキー」「ドラゴンボール」の絵もあり
文章の中にはTikTok、Ado、FRUIT ZIPPER、踊ってみた、なんて言葉もあり
拘置所にいても外の世界の情報はある程度得られている事に驚きました。
そんな中「僕の1週間」というスケジュールを紹介した作品がありました。 

月曜から金曜:午前中は運動か入浴の予定があり空いた時間は作品作り
午後はDVD鑑賞か作品作り
夜間はラジオ聴いたり作品作り
土曜:1日中布団の中で過ごす
日曜:ラジオを聴く
祝日:作品作り
起床時間:7時30分
食事:朝食7時45分/昼食11時45分/夕食16時
昼寝:昼食後〜14時
就寝時間:21時

こんな事が書いてありました。
昼寝まである事に驚きです!
私の隣で見ていた若い女性2人組が「いい生活送ってるよねー」って嘲笑気味に言っているのが聞こえました。
私もそう思いました。
でも何の変化のない毎日、誰かと話すことはできない毎日、どこにも行けない毎日、ただ生かされるだけの毎日、自分が暮らすには厳しい。
羨ましくはない。
それでも黙っていても3食出て昼寝時間まであってDVD見れて…
年老いた死刑囚にとっては介護施設とそう変わらない、と感じます。

無期受刑者は刑務所で自分の犯した事件と向き合う教育的時間があるというけれど
死刑囚にはそんな時間設けてももう反省とか事件と向き合うとか無理だと諦められた人達なのだな。
死刑囚は周りから諦められた人達で、だから罰とか刑務とかもなくて、ただただ意味もなく生かされて
死刑囚本人も生温い生活に慣れて、だけどある時朝起きたら「死刑」って言われて
今までの生活の生温さと死への絶望の落差を味合わせるのが真の意味の「死刑」という刑罰なのか。
と感じてしまいました。

私は死刑囚表現展で「後悔」や「反省」を感じる作品を見たいと思っていたし、見れるのかと思っていたけれど
その前提からして私が間違っていたのだろうか。
だってそんな事は無理な人達が死刑囚となったのだから。

作品の中の1つに「自分の息子が癌で死んだ」
という事が書かれていたものがありました。
その息子も獄中にいたという。
この人、寝屋川の事件の人だよね。どういうこと?
と気になって「山田浩二」の事、ちゃんと調べました。

大阪の寝屋川市で中1の男女を殺害したのは知っていました。当時話題になったから。
でも動機とかなんだったか覚えてない為、調べ直したけれど…結局今も動機ってわかってなかったんですね。
裁判でも嘘をついたり適当な事を言って何も本当の事を話してくれなかった。
人の痛みや死に関してホントに何も感じない人なのかもしれない。
でも作品の中で自分の息子の死はとても悲しんでいた。
矛盾している。
この息子っていうのは誰なんだろうと調べると山田は獄中で自分と結婚してくれる人、養子縁組をしてくれる人を募集していたみたい。
同じ死刑囚の人とか罪を犯して刑務所に入っている人に手紙を書いて「ファミリー」になってくれる人を募っていた。
そのうちの1人が彼の言っている「息子」なる人物。
死刑囚になったら家族しか面会できないので獄中結婚したり養子縁組になったりするのはわかるけど、山田が養子縁組したこの息子なる人も同じ死刑囚。
養子縁組したところで顔を合わす事はできない。
何の意味があるんだろう?

山田の事をもう少し調べると、寝屋川事件の前にも多数の罪を犯していた。
薬物やら障害事件を何件も。
中学生の男の子を誘拐してイタズラして暴行していた、同じような事件が何件もある。
女の人をストーカーしてた事もある。

そこで私は感じました。
この人、他人にすごく「執着」してるって。
男でも女でも誰でもいいから自分と強く繋がっている人が欲しいんじゃないか?
塀の外にいる時は物理的に誰かと繋がりたくて、でも歪んでるから後をつけたり監禁したり傷をつけたり。
死刑囚になってからは物理的には無理だから精神的に繋がりたくて「ファミリー」を増やそうとしてる。
塀の外では物理的に束縛して執着して。
塀の中では精神的に束縛して執着して。
結局塀の外でも中でもやってる事は変わってない。
何も根本、変わってない。
それに自分も気づいてないんじゃないか?
だから裁判で動機を聞かれても上手く言葉にできないから
嘘をついたり適当な事を言ってその場を凌いだんじゃないか?

全部私の憶測でしかないので本当のところはわかりませんが….

手記を読むと、一応この人、自分では寝屋川事件を起こす前に刑務所に入っていて
出所する時にもう事件を犯さず真っ当に生きていこうと思ってる、って書いてるんです。
本当か嘘かわからないけど。
でも本当だったとして、でも数ヶ月経てばまた事件を起こしてるんです。
結局、他人に「執着」するっていう自分の欲に勝てなかった。
塀の外にいればまた事件を犯す可能性は高いって事ならば
やはりこのまま拘置所にいてもらう方が安心だと思ってしまいました。

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