見出し画像

ジュビロ磐田はこれからどうすれば良いのか?

2024年シーズンも終盤に差し掛かってきました。これを書いている時点でジュビロの残留はほぼ絶望的。可能性は残しながらも、ほとんど低いと見ていいでしょう。かといって諦めるということではありません。全力で掴んでほしい。

一方で私は、過去に書いているように、チームの勝敗にはあまり一喜一憂しないようにしています(まだ修行が足りないですが・・・)。それより重要視するのは、

【①(いろいろなものの)継続性(例:複数試合での戦術あるいは決め事)】

【②一貫性と柔軟性のバランス(例:①と矛盾するが、決め事を壊せるか、相手にとってのカオスが自分達の秩序となっているか)】

【③(結果として得られる)試合後の満足感(例:勝敗といった結果、試合中の選手の振る舞い、交代枠の使い方)】

【④投資に対するリターン(例:新加入選手の活躍具合、下部組織からの加入、地域への貢献、設備投資)】

といったものです。特にここ数試合は、3-4という大味な試合で連敗。しかし逆を言えば、「サッカーをこれから見ようと考えている人」にとっては、(結果はどうあれ)面白かったのではないか、と思います。ホームガンバ戦では、磐田市への移住体験の一環として試合観戦もあったようです。「勝ち」というのは、(私にしてみれば)③のパラメータの一つ(にすぎない)、というわけです。

多くのサッカーファンは、いわゆる【箱推し】ではないかと思うのです。箱を推してもらい【続ける】ためには、上記4点が極めて重要です。【顧客を囲い込む】ということに他なりません。簡単に言えば【ジュビロだから愛してもらえるようにする】。Apple製品だから買い続ける、というのと同じですね。そこに必要なのは(広義での・意匠だけではない、思想とほぼ同義の)デザインです。

企業としてのデザインがあって、シーズンが始まり、シーズン終わる。これが健全なものだと思います。各試合の戦術の詳細については、他に記事があり、より見えている素晴らしい方がたくさんいますし、正確です。ここでは、具体的な戦術以外の視点で考えてみたいと思いますし、こうしてアウトプットすることで、私個人の考えもまとまります。誰かが読んでいるかもしれないというプレッシャによって、思考が深くなることは経験済みです。もしご興味があれば、お読みくだされば嬉しいです。

※以下、個人名は敬称略していますが、最大限の敬意を込めて。

監督交代をした方が良いのか?

多くのサポーターにとって、これが最も大きな関心でしょう。私個人の意見は、こうです。

【監督は変えずに、戦術あるいはセットプレーのコーチを充実させるべき】

詳細を説明してきましょう。

2023シーズン。J2で辛くも自動昇格したジュビロでしたが、明確な課題が2つありました。それは、
【①(攻撃的)サイドバックの裏が狙われる】
【②インテンシティが高いとは言えない】

今季は右に植村が入ることが多かったですが、これはおそらく昨年の①の課題解決のためだったのではと想像します。西久保は松原と近く、攻撃的。昨年は右には鈴木雄が入っており、左は今年も松原。特に松原の裏はわかりやすい弱点としてJ2時代は明確でした。

J2では拙攻のため助かる場面もありましたが、J1ではそんなこともなく、簡単に前進を許すことに。さらに、右サイドハーフにクルークスが入って以降は、右サイドからの攻撃を受けることも目立ちました。これは、夏場までのファーストチョイスが松本と平川だったことからも、まずは守備という意識づけがあったものと推測しますが、終盤になりそう入っていられなくなった、ということかなと。

一方で、平川が適正だったのかという議論もあるかと思います。私も平川は中央の方が良かったと思います。しかしもう一つの問題②があったのではないかと。それが明確なのはホーム湘南戦の開始数秒での失点場面です。となれば、中央で使うリスクよりもサイドの方がまだ管理はしやすかったのかなと。そうまでしても起用したかったという魅力が平川にはあった、というポジティブな考えです。慣れていくに従い、かつてのドゥドゥのように中央に進行することも増え、アウェイ福岡戦のように、クロスに入り込むことができるようになりました。移籍の可能性も出てきてしまうと思いますが、どうなるか。

ボランチには、インテンシティの高い選手がレオ・ゴメス、中村と揃っていましたが、中村がまさかの長期離脱。これがかなり痛かったのではないかと。さらに鹿沼の移籍も重なります。藤原の期限付き移籍は個人的には納得で、もっと言えば、彼はボランチではなくもう一つ前の方が適正な気もします。平川との共存が見てみたかったですが来季はどうなるか。

こうした問題は、単に監督に責任を求めるのは酷でしょう。特に選手の入れ替えに関してはSDおよび会社の責任です。ただ、藤田SDを責めるのも酷で、昨年の補強禁止、もっと言えば、鈴木政一時代の【個人攻撃】【チーム戦術なし】というところのツケが来ているにすぎないのかなと。その点で言えば、今季の新加入選手の選定は適正だったのかなと。

不運だったのは、天皇杯の早期敗退と、ルヴァンカップのレギュレーション変更でした。特に後者は、かつてのリーグ戦方式の方が、新戦力の底上げができた。そのため、ブルーノ・ジョゼ、石田、川崎といった選手の適応に失敗したのではないかと。ジョゼはその後持ち直し、アップダウンを繰り返すようになりますがやはり守備時に難があったようで、クルークス加入後は出番なし。クルークスとジョゼは互換性が高いと思いますが、レオ・ゴメスとペイショットは捨て難く、グラッサとヒルを外すと途端に守備強度が落ちるため、やむなしということでしょう。

渡邊とクルークスの加入からしばらくして、チームはよりロングボール多用になります。これも嗜好したわけではなく、編成の問題からこれしかなかったと言った方が良かったのかなと、今では思います。古川移籍に伴い高畑が採用され、ほぼ同時期に戦術変更。高畑の起用は意外でしたが理に適ったもので、アップダウン可能守備もそれなりにできるというところがマッチしていました。高畑は来季も是非残ってほしい。

もちろんこの戦術の片鱗はあり、例えばホーム新潟戦の2点目などは目指す形でした。さらにチームは、守備時に5バックにすることでインテンシティの低さと、一人一人の守備範囲の低さをカバーすることで、守備力の強化をはかりました。

しかし結果は、失点は減らず。特に①の問題がさらに顕在化し、形を変え、露呈することになりました。サイドバックの裏だけでなく、サイドバックとサイドハーフの間、センターバックとサイドバックの間といった中間ポジションでボール保持されることが増えました。

さらに、セットプレーでの失点という悪癖も改善されず。ジュビロはゾーンで守ることが多いですが、マークにつききれないためにフリーで触られる場面も目立ちました。特に、ペナルティスポットより後方からの走り込みや待機に非常に弱い。ゾーンの精度を上げることにも限界があり、方法論を変えるという柔軟性がなかったのは残念です。

こうした理由から、監督の方針は、私は間違っていないと思います。特にインテンシティの強化はトレーニングだけでは難しいことがあり、初速の速さ、筋力、試合中の個々の判断といった、人依存のパラメータが多い。一方で、失点パターン・時間帯が、シーズン終盤になるに従って類似してきた部分は、戦術的な柔軟性でも解決可能だったのかなと想定すると、監督の右腕・左腕次第だったのかなと。フベロ監督がかつて参謀と共に入閣したことも記憶に新しく、横内監督も監督初挑戦という状態のため、コーチの整備はもう少し取り組むべきだと思います。これも編成の問題です。藤田SDにはぜひここを期待したい

横内監督が辞職してしまう可能性がありますが、これはもう、どうしようもない。もしその意思を覆せるとしたら、編成で応える以外にありません。フットボールには新地代謝がつきもの。町田ですら、新加入選手がフィットしているとは言い難く、シーズン序盤からの植え付けがもっとも重要となります。かつての名波時代で、新加入選手が二人だったこともありますが、ああいったことは繰り返してはいけないでしょう。

ちなみに私がサッカーゲームをするときには、移籍はほとんど行いません。選手全員に愛着ができてしまうからです。そういう意味で言えば、私は、SDもGMも監督も、全く向いていないといえるでしょう


嫌な時間の失点をどうするのか?

J1ではすべてが格上と考えると、先行されるのは織り込み済みとも言えます。横内監督のインタビューでも【とにかく失点しないこと】と繰り返し挙げられていました。では、今季はここまででどうたったのでしょうか。

先制を許した試合:21/36試合=約58%
節数:1, 3, 4, 5, 8, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 21, 23, 25, 26, 27, 28, 32, 33, 35

スポーツナビより筆者が集計

どうでしょう。かなり多いのではないでしょうか。このうち勝利したのは、16節のホーム湘南戦、26節エコパ鹿島戦のみ。いかに勝ち点を失ってきたかが如実にわかります。これだけ広範囲の時期に負けていると、夏場に弱いと言われた傾向も今年は霞んでしまいそう。

直近2試合では、前半終了間際と後半開始直後という時間帯に揃って失点しています。では、他チームと比べてどうだったでしょうか。

前半31分〜終了まで:14失点(1位)
後半46分〜60分:15失点(1位)

J.LEAGUE Data Siteより

2位はいずれも一桁なので、ダントツです。特に後半開始は、ハーフタイムに修正可能であるにも関わらず。直近の試合でも流れを変えられず。選手交代などの変化が乏しいこと、ただでさえ緩いインテンシティが緩みがちな時間帯であること、の2点が原因ではと考えます。

一方で、ジュビロが得点した時間帯で最も多いのは、後半76分〜終了までの15点。上記データと照らし合わせると、ビハインドからのパワープレイといえるでしょう。では、これがどうして他の時間帯に用いることができないのか?

まず、大きな外的要因として、相手チームがあることです。相手が勝っていることで試合をクローズする、そのため無理に攻めてこなくなる、といったことはもちろんあるでしょう。

一方で、そういった状況でないと攻撃できていない、ということの証明でもあります。では、意図的にそういった状況を作り出せないのか? と考えるはずです。その結果、ジュビロでは足元からボールを繋いで前進する、という方向性になるわけです。

しかし残念ながら、私の目には、効果的なビルドアップはあまりみられなかったです。ショートカウンターには一定の評価ができます。

では効果的なビルドアップとは何か、ということになります。これには答えがなく、それこそ組織のデザインの中で決めることになります。ただ私が気になったのは、サイドチェンジの無さと、同一サイドへの人的リソースの物足りなさです。おそらくは決め事なのでしょう。特に後者は、近くにいる人数はいるものの効果的な位置どりをしているとは言いにくく、そのため安易にカットされる場面も散見されました。その結果、手薄になったラインの裏や逆サイドに振られてしまう。

先日のガンバ戦では、ゴール前にリソースを割いて、相手にとってのカオスを作り出すことができていました。しかしそれは、自分達にとってのカオスにもなっています。これが、自分達にとっては秩序である、という状況を作る必要があります。相手だけを混乱させるわけです。そのためには日々のトレーニングが必要で、試合中には誰かがトリガーを入れる必要があります。そのトリガーが、失点・ビハインドだけになっているのは、個人戦術の問題なのかなと。横内監督はそこを強く取り締まるタイプではないのかなと思いますが、実際はどうなのか。

こうした自分達の秩序を、ある程度意識的に、かつ複数の時間、柔軟に壊すことが重要ではないでしょうか。もちろん、そこまで至れなかったということもあると思います。特に守備では秩序がより重要になるからです。しかし、それまでセンターバックの守備範囲で、サイドバックの裏をケアしていたところもJ1では通用していないことを考えると、攻撃時のカオス発生に時間を避けられなかったと考えるべきでしょうか。

守備時の課題がまったく解決されず、シーズンが進むにつれて悪化してきたという点において、私は、試合観戦でストレスが溜まることが増えてしまいました。監督は、打てる手は打ったと思います。そのために余計、行き場のない悲しみがあります。100%編成のせいにするのは、私も気が進まないですし、現実とも乖離しているでしょう。それだけに、現メンバーの奮起を期待したいのですが、残り試合でどうなるのか。


選手編成に資金を充てられるのか?

ジュビロの経営は、極めて健全であると個人的には感じています。その中でも収入に関して、以下に数字を見てみましょう。

売上高の推移(百万円)
2021年度:3,108
2022年度:3,232
2023年度:4,254
 
スポンサー収入の推移(百万円)
2021年度:1,855
2022年度:1,830
2023年度:2,675
 
入場料の推移(百万円)
2021年度:358
2022年度:348
2023年度:530

Jリーグ・クラブライセンス事務局 2023年度クラブ経営情報開示資料より

入場料は、J2は試合数が多いことも影響しているのではないでしょうか。ここで特筆すべきはやはりスポンサー収入です。今年に入ってからも、多くの企業がスポンサーになったことがアナウンスされましたし、営業はこれ以上ない活躍をしてくれています。ぜひ、ボーナスは弾んであげてほしい

売上高でジュビロよりも上にいるのは、浦和・川崎F・神戸・G大阪・横浜FM・鹿島・名古屋・FC東京・清水・C大阪・柏でした。例えば広島は磐田よりも低いです。

一方で、トップチーム人件費(2023年度)はどうかと言えば、広島は24億なのに対して磐田は14億と水を開けられています。これは実は、長崎(17億)よりも低い

高い=良い選手とはなりませんが、高い≒良い選手なのは事実。編成的な問題からしてもここが大きな課題となります。ジュビロを選んでもらわなければいけない。あとは、現有戦力の引き留め。さらにアカデミーからの昇格ですが、前田遼一がJFAになってしまったこと、藤田義明が低迷の原因となりつつあったため解任(そしてまさかのトップチームコーチ)されたことが、アカデミーの難しさを物語っています。昇格は今のところ、川合のみ。アカデミーから毎年複数人は昇格してほしいところですが・・・。一方で、大卒は有望新人を獲得できています。この辺りは金園の人間性も関係しているかもしれません。

特筆すべき成果もあった2024年

ホームタウンの拡大に成功したこと、これは極めて大きなことかなと思います。チームのPRや集客において、メリットしかないからです。さらに、ジュビロが地域密着を掲げるにあたっても、活動範囲が広がるのは良いこと。特に子供たちに対しては、どんどん関わってあげてほしい。それが未来への投資になります。

JFAで言えば、名波・前田の両者が、元清水の斎藤とともに入閣し、現時点で、最終予選で無敗、破格の得点力と守備力で首位を独走していることも明るいニュースです。この二人にはぜひノウハウをジュビロに還元してほしい。特に名波は、まだジュビロのことを気にかけていると、30周年記念DVDで明言していたほど。ありがたいじゃないですか。名波時代にも参謀がいれば、と思ったものですが、もしかしたら名波自身が参謀タイプなのかもしれません。横内監督の下に二人が帰ってきたら、と考えたくなってしまいます。

小川航基も結果を残しています。ジュビロが育てきれなかったのは、ひとえに鈴木政権及び会社が昇格にこだわりすぎたためだとずっと考えています。移籍後の活躍を見ても、ジュビロのせいなのは明確。怪我には気をつけてほしい。伊藤もバイエルンへ移籍しました。怪我してしまい残念ですが、これからこれから。

3月にはドイツのボーフムと提携しました。これにより人材交流が盛んになると思われます。人件費が裂けない=良い選手がジュビロを選んでくれないという事実からも、こうした海外交流を盾に、高卒・大卒の良い選手を獲得する流れに重きを置きそうな気がしています。このあたりは一般企業のリクルートと同じですね。たとえ海外への腰掛けとなってしまっても、それはJリーグ全体のブランドの問題。はっきり言って、彼らの人生の方が重要です。企業はあくまでも受け皿であり、人生の全てではないと再認識するべきでしょう。海外どころか、他のチームに移籍した選手を気にかける、応援する。それも広義での箱推し。そしてそうしたサポータの態度は、必ず選手にも届きます。対戦相手として現れた選手に拍手を送る。それは素晴らしいことじゃないですか。そんなサポーターがいるなら、移籍しよう・頑張ろうと思える選手が必ず現れます。だから、ブーイングは百害あって一利なし、と考えるわけです。

最後に:2026年優勝という【デザイン】は適切か?

私はこれは取り下げても良いと思っています。おそらくここまでの風呂敷を広げることで、選手獲得に一役買おうと考えていた節もあります(町田のように)。しかし結果は降格寸前。目標の勝ち点40にも届かず。そうなると今度必要なのは、地に足をつけること。基盤を作る、と掲げた2022年、山田は「何も残らないシーズンだった」と語りました。

大きすぎる目標は、かつての鈴木時代のような悪癖を植え付ける可能性が高いです。そうならないためにも、より現実的なマインドで、一試合ずつ進歩が確認できる時間を過ごしたい。それが私の意見です。

DAZNがまた値上げしました。現実的な問題として、来季はDAZNには入れず、フルタイム視聴ができなくなりそうで、このように偉そうに講釈を垂れることもできなくなりそうです。それでもファンクラブは入り続けます。応援し続けます。

すべては磐田のために。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集