名盤ランキングに推薦! 【Second Coming/The Stone Roses】
【データ】
リリース:1994.12.05
2nd Album
UK Chart:4
US Billboard 200:47
【背景】
デビューは1989年なので、およそ5年の空白期間がある。これは、レーベル移籍に伴う裁判によるもの。最後のライブからも約4年が経過していた。
1stは、キラキラした(聴くだけなら健康的なサイケデリック)サウンドで、バンドミュージックの(ある意味)極地点となり、時代を変えた作品として、チャート記録以上に歴史に残った。
次作への期待感、成功へのストレス、バンドスタッフの突然の死や、家庭環境の変化などから、不安定な状況の中で制作された。2nd制作過程の問題行動についてはここでは省略。
【推薦ポイント】
どうしても1stと比較されてしまうことや、発表当時の酷評が足を引っ張り続けていることが、本作品の正当な評価を妨げているような気がしてならない。
これは筆者の想像だが、1stをはじめとした、いわゆる「マッドチェスター」の中心は、比較的若い世代だったのではないかと想像するからだ。
しかし、2ndで注目すべき点は、「若者からの脱却」と言っても過言ではないほどの落ち着き、技量、タイトなグルーブである。こうした点が1stの対極にいることは理解しつつ、その変化が急だったことから、リスナーも変化についていけなかっただけ、であると信じたい。
Led Zeppelinと比較されるのはそのギタープレイからだろうが、それ以上に類似しているのは、ドラムスとベースのヘヴィなリズム隊だと考える。
かつて、Arctic Monkeysが大きく変化して、5th『AM』で、ヘヴィでスローでダークなロックを展開したが、リスナーは受け入れた。それどころか、2010年代最高のロックアルバムと称されるに至った。これは、1stと5thの間の変化がリスナーにも伝わっていたからだ。
Led Zeppelinも、『III』で酷評されたが、彼らは負けなかった。その後の活動で見返した。彼らも、続けてさえいれば。しかし、それが一番難しいのかもしれない。
彼らは、リスナーからすれば、あまりにも突然に、急に、変化してしまった。少しずつ変化すれば、リスナーも、バンドと共に変化することができたのではないか。それだけが悔やまれる。その後、彼らは解散した。
【この曲!】
#2:Driving South
リズム隊の素晴らしさが際立つ。こうして聴くと、やっぱり1stもこの二人だからこそできたんだな、と思う。ギタープレイも実はトップクラスの出来で、こうも性格の違う曲を書けるジョンも、やっぱりすごいんだなと再認識。
#7:Begging You
一番好きな曲。とにかくドラムが凄まじく、「千手観音」と言われたレニの独壇場。と言いながらも、実は打ち込みであるという証言も・・・。いや、私は信じないぞ。だって、再結成ライブでレニが叩いていたから!! 筆者はフジロックで見たが、そこではやってくれなかった・・・。やってくれなかったんだ・・・。
#10:Tears
技術の高みを見せつける一曲。歌詞もどことなく切なさがあり、ボーカルの不安定さが不思議とマッチ。中盤のギターソロは、平成に復活した泣きのソロと言っても過言ではない。
#12:Love Spreads
5分以上の大作。ボーカルは本作で一番良いかもしれない。謎に満ちたPVとは裏腹に、メッセージはかなり明確。サビ(Let me put you ~)の歌い出しの意図的なずらしは天才的だなといつも思う。The Beatles『I Want to Hold Your Hand』の歌い出しに匹敵するずらしだ。
【その他】
奇跡の再結成を果たした時、なんとこのアルバムからもセットリストに加わった。ということは、彼らも好んでいたし、リスナーも好んでいる人がいたということだ。それを知ってとても嬉しくなったし、ほらね! と言いたくなった。
大抵、1stが名盤ランキングに入り、これはそこまでではないというレッテルを貼られてしまっている。しかし例えば、ベスト500くらいまで拡張すれば入るだろうし、90年代のベスト100には入っていてもいいのではないかと思う。
バンドに限らず、音楽に限らず、アーティストには、必ず変化が訪れる。その時に、よっぽどのことがない限りは、受け入れてみたいと思っている。それも、この作品のおかげだ。
今は、2作をこの世に残してくれてありがとう、という気持ちでいっぱいだ。