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掌編小説 京都の夏のはじまり
7月は、京都は忙しない。祇園祭があるから。町衆はほんとに忙しないが、関係のない京都市民はなんとのう忙しないのだ。
今年も前祭の鉾立が始まった。目抜き通りの四条通りにも鉾が立つ。
一番人気は、大丸前の薙刀鉾。大丸前にピンと立った長い薙刀はとても立派。みな、薙刀を見上げる。
わたしは、薙刀鉾には負けるけれど、月鉾が好き。こちらは薙刀てはなく、鉾の先が三日月なのだ。三日月が雨粒を反射させ、輝いている。
17日は、前祭の巡行。宵山では雨が降るのに、巡行はカンカン照り。目の前をビルの高さのある月鉾が、車輪をギシギシと響かせながら、通りすぎる。
前祭はおしまい。梅雨があける。京都の夏のはじまり。