Day16】愛犬共生住宅時代の幕開け #10
前回#9の続きです。
併せてお読みください。
22.販売(購入客)と譲渡(里親)、その流れの違い
甲斐さん曰く自由主義国家である日本でペットショップで生体を売るというビジネス自体が悪い訳ではなく、売る時にその飼い主となる人の住宅事情や生活状況をよく調べずに売るのが良くないと仰られていました。
ボク自身も10年前、殺処分や保護活動等の状況を知らない時期にペットショップで犬を飼いましたが、確かに住宅の状況がどうだとか家にいる時間はどうですかとかそういった事は訊かれませんでした。
犬猫に関しては販売と譲渡では飼い主への審査は全く違うものがあり、ペットショップ等による販売は登録や予防接種が終われば簡単に飼い主のみで家に連れて帰る事ができます。下手すれば賃貸の場合の規約を見せて下さいというのもないショップもあります。
しかし譲渡の場合は、例えばハッピーハウスではまず最初の面談(家で暮らす人全員が動物が好きかも含めるので全員参加がまず基本)が終わり、実際に家に連れて行って新たな家族と試験的に暮らすトライアルのさらにその前に、ハッピーハウスにて何日か一緒に散歩をして貰う。そこでお互いの相性と扱えるかを確認したあとトライアルに挑む、それでお互いダメなら譲渡は白紙。飼い主が望んでもハッピーハウス側から断る場合もあります。
甲斐さんではなく施設を案内して下さったスタッフの方が介護犬舎案内の時に、介護犬、老犬を迎えるうえではその犬の体重が何キロあるか、迎え入れる里親が犬に何かあった時に何キロまで支える事ができるか、それも基準の1つ、また何よりも私は看取りが大事だと思っているという事を仰られていました。
最後は甲斐さん自らの案内で病院棟の床の入角の工夫を見せて頂きました。
入角が船のように丸まっており、それを防水加工する事で汚れが溜まりにくく掃除がしやすいとの事でした。
これはボクも愛犬共生住宅で施している方法で、やはり有効だなぁと思った次第です。
またいつでも子供も一緒に連れておいで、住宅についてもいろいろアドバイスもできるだろうから、と最後にそう言って下さった代表の甲斐さん。
これだけの保護頭数がいてお忙しい中、時間を割いていろいろな話をして頂いた事に恐縮するとともに、僕ももっと動物保護の現場を、真実を、ペット業界の裏側を知らねばならないと思いました。
23.「目指せ殺処分0」は1側面の数字に過ぎない
ボクも時折口に出しますが、殺処分0を目指すという行政の指標があり、犬の殺処分頭数は例えば2010年の51,964頭から2020年は4,059頭と90%以上減少しています。
ただし、この数はあくまで行政における殺処分の頭数で、2013年に改正された動物愛護管理法により保健所は簡単な理由での犬猫の引き取りを拒否できるようになり、それが殺処分頭数の減少に影響しています。それにより行き場のない犬は新たに引き取り屋といわれる業者や、ハッピーハウスのような民間の保護施設に行き場が取って代わられています。
前者は全てではないですが、メディアでも取り上げてられているように粗悪な環境で犬が飼い殺し状態におかれる事で行政の代替殺処分となっている現実もあり、後者においては民間の個人や団体の資産と時間を圧迫します。
また、殺処分頭数が0になったとしても犬がペットとして飼われる以上、前述の課題はその後も続き、気を抜くとまた数字が元に戻りかねません。
殺処分0はあくまで1側面だけの数字であり、その裏で数字に反比例して苦労されている(苦労が増している)個人、団体の保護活動者、虐げられている犬の事を知る事も必要です。
そこと交わらない愛犬共生住宅は、ただのイベント型のコンセプトハウスに過ぎないものになります。
今回はハッピーハウスには初めての訪問で、甲斐さんやスタッフの方の話の聞き手でしたが、次回はどういう流れで600頭もの犬猫が保護されるに至ったかの実際をお訊きしたいと思います。
愛犬共生住宅は、社会課題の解決を目指すインフラ型の事業として進めていくものです。
「犬を救う」が「人を救う」
犬と暮らす事によって、人がどう救われるかをも住環境というハードの面から捉えていきたいと考えます。