寝っぺで闇おち あすかのクラスメイト殺し。
ぶりぶりっつぶりぶりっつ!!!!!
ぶりぶりっつぶりぶりぶりっつ!!!!!!
クラス内でそれは響き渡った。
【異様な音。】
それはテストの試験中のことだった。
クラス内の全員が、異様な音の先に、その視線を向ける。
視線の先にいた彼女は、クラス内のド真ん中で、
闇落ちしているのにも気付かずに
静かに眠りに落ちていた。
ー2時間前ー
「おはよっつーーー!!!あすかーー!!」
登校早々、愛くるしい声で声をかけられる。
アスカは、その声の先に視線を向けた。そしてにっこりとほほ笑む。
「おはよー明美ー! 今日も元気だねー!」
「おはよう!あすか! 今日も相変わらず美人だな!? 」
「ねぇねえ? あすかちゃんの化粧品ってさ?、どこの使ってるの?」
「あすかーー!! ごめん、、勉強教えてーー!」
アスカのクラス内での激しい人気っぷりに、
その声はとどまることを知らなかった。
だがそんな声たちにも、彼女はいつも通りに、優しく微笑んだ。
「みんなー順番、順番。」
頭脳明晰・才色兼備・文武両道・顔面偏差値。
全てという全てを兼ね備えてしまった彼女は、クラス内で
恐ろしいほどの絶大的な人気を誇っていた。
頭の良さ。スポーツの才能。角のない優しさ。
何より男子たちを虜(とりこ)にしてしまう美貌。
クラス中や学年の中、教職員たちの間でも、毎日のように、
彼女に見惚れし、尊敬し、崇拝してしまうほどだった。
「おー!!あの子が噂のアスカって子じゃない!?
まじちょー可愛い!! 黒髪似合いすぎだろ!!!」
「おい!!高橋!!わたしたちのアスカなんだから!!
わたしたちのアスカにっつ、変な下心向けないでよねっつ!!」
アスカの教室内に他のクラス男子が噂をききつけ、
彼女を見に来る。それを阻止すべく、対抗するアスカの取り巻き。
これはほとんど日常化された光景だった。
「高橋!あんた早く出ていきなさいよ!?
もうすぐ学年テストが始まるんだから、みんな予習したいのよ!!」
「そうよ高橋、朝からアスカに色眼鏡かけてんじゃないわよ
まじきっもっつ!!!!」
ボロクソに言われるお調子者な高橋は、
あまりの女子たちからの言われようにお尻を突き出し、反撃した。
力(りき)む高橋。
ぶりぶりぶりぶりっつっつ、、
高橋の肛門の間からは、見事な屁(へ)が炸裂された。
その音に、はり叫び、絶叫する女子たち。。
「イヤッツっつ”””ーーーーー!!!!!
こいつ今っつおならしたぁあ”””ーーーー!!!」
生臭い異臭がテスト前の教室内に充満される。
(へへっつ)
調子のいい高橋は、お尻をフリフリさせながら、
あざ笑うと、アスカのいるクラス内から飛び出ていった。
「あいつ、、まじきっっつも、、
音きっも、、まじ人前でおならとか、、よく出来るよね、、
わたしなら、、自殺もんだわ、、」
目の前の明美のドン引き具合に、
アスカは口元に、そっと手を抑えて微笑む。
「高橋くんも悪気があって、やったわけじゃない。
明美ぃ、ここは目をつむってあげよう?」
明美
「アスカぁ。ほんと完璧すぎだよ、、
今のおならなんて、めちゃめちゃぶりぶりっつ、いってたのに、
ちょっと女神すぎぃー(笑)」
幸子
「ほんとほんと。アスカはオナラにまで寛容(かんよう)なんだね。
ホントにここまで全部を兼ね備えてるなんて、クラスメイトながら
まじ尊敬しちゃうよ。(笑)」
尊敬の眼差しを向けられるのに対し、優しい表情でアスカは口を開く。
「そんなことないよ。おならなんて人前では絶対やっちゃだめだけど、、
それでも高橋くんだって、、普段からそんな下品な人でもないしさ。
ね? ここでこの話しはもう終わりっ!」
「アスカは本当に人として出来上がってる。
アスカの人生に犯罪(はんざい)という2文字なんて、、
なにがあったって、ないだろうなぁ~。」
両手を組んで崇め称える幸子に、優しいアスカはいつも通りに失笑した。
キーンコーンカーンコーン~ キーンコーンカーンコーン~。
なにかを予感させるように、朝のチャイム音が学校内に響き渡った。
そのチャイム音にアスカのクラスメイトたちは一斉に自分の席に着席した。
がらがらがらがら、、がらがらがらがら、、
アスカの教室の前扉が静かに開いた。
担任の先生である佐藤が元気よく入ってくる。
「は~い! おまえらぁ~!
ついにお前らの嫌がっていた学年末テストを始めるぞォ~♪ 」
いたずらそうに笑う先生に相反し、笑いが漏れるクラス。
「先生、うざすぎー!!、
早くテスト用紙配ってよー!はやく帰りたいー、、」
先生
「たしかにそうだな。今日は2限目までしかテスト無いから。
お前らぁ。
今日は学校早く帰れるぞー!?」
歓喜が沸く教室内、アスカもまた女神のように優しく微笑んでいた。
「もうこのクラス大好き。」
アスカはその完璧さゆえに、その歩んできた人生ゆえに、
己がどれほど底知れぬ恐ろしいプライドの持ち主なのか。
まったく自覚出来ていなかった。
アスカはクラスのど真ん中の席で、教室をゆっくり見渡す。
振り返ったり、左右を見渡しても必ず誰かと目が合う。
目が合うと必ずといっていいほど、
クラスメイトたちは微笑み返してくれる。
そんな眼差しを向けられることに対し、
アスカは異常までの、優越感の感情だった。
それでもその優越感を心の奥底にひた隠し、
女神のように優しく、微笑み返す。
「学校生活がこんなにも楽しいなんて。 」
担任の先生の元気な号令が飛ぶ。
「では、テスト用紙を前から配るぞー。」
前から順々に配られていく、わら半紙のテスト用紙に、
アスカは優しい笑みを浮かべた。あまりにも簡単すぎる。
他のクラスメイトたちは、頭を抱える生徒や余裕な生徒、うなだれる生徒。
個性あふれる態度だったが、そんな姿さえも彼女は愛おしく感じていた。
先生
「ではーテスト始めー!!!
頑張れよ~お前らぁ~!。」
あったかみのある佐藤先生の激励とともに、1限目のテストが開始された。
だが、アスカはものの数分で、全ての問題を解き終えてしまった。
テストは45分もあるため、やることがなく急に眠たくなってくるアスカ。
「流石はアスカってとこだな。? もう解き終えたなんて、
まぁいつものことだな笑。
アスカ、次のチャイム鳴るまで寝てていいぞ。」
先生の一言に驚愕するクラスメイトたち。
「もう、、アスカ解き終えたのかよ、、凄すぎ。。
やっぱ尊敬一筋だわ、」
「ほんと、、すげーよな、、非の打ち所がないだろ、もう。。
神様に愛されすぎじゃん、、絶対、、尊敬。。」
そんな周りの崇拝コメントに、なんなくほほ笑むと、
先生の言葉を受け入れ、先生にうなずくアスカ。
「少しだけ、仮眠します、でも5分だけ。」
そう言って、アスカはテストの試験中、クラスのど真ん中で、
机に顔を突っ伏せ、仮眠をとり始めた。
アスカの闇落ちが、
一方的な殺人ゲームが
こんなきっかけで、
こんな些細な場所で。
仮眠とり、熟睡し始めたアスカ。
アスカはクラス内のど真ん中で夢を見ていた。
クラスの全員がアスカを見て微笑んでいる夢。
アスカの取り巻きが、明美、幸子がアスカの両手を掴んで、
草原を走り回っている。二人ともアスカを尊敬の眼差しで見つめている。
その表情に、アスカは心の底から優越感を感じひたされていた。
熟睡していても、微笑んでしまうほど、それはアスカにとって
代えがたい幸せだった。自己肯定感の源は、己の自己肯定感の源は、
みんなからの尊敬や崇拝の眼差しだったから。
そんな静まるクラス内のど真ん中で、
なぜか【異様なまでの音】が、教室中に響き渡った。
ぶりぶりっつぶりぶりっつ!!!!!
ぶりぶりっつぶりぶりぶりっつ!!!!!!
その異様なまでの音は、明確にクラスメイトたちの鼓膜を揺さぶった。
蒼ざめた表情で啞然とするクラスメイト。
担任の先生はもう呆然としていた。
ぶりぶりっつぶりぶりっつ!!!!!ぶりぶりっつぶりぶりぶりっつ!!!!!!
2連発。
ぶりぶりっつぶりぶりっつ!!!
ぶりぶりっつぶりぶりぶりりりりrっつ!!!!!!
3連発。出し切った。
クラス内のど真ん中で仮眠していた彼女はなぜか
3回も音を奏(かな)でた。そして最後はちゃんと出し切っていた。
そのいきなりの異様な音楽に、周りのクラスメイトや先生は
もう口を開け、呆然(ぼうぜん)としていた。
クラスメイトや先生は、目の前で起こった惨劇に理解ができず、
音の出元であるど真ん中の席に視線を向ける。。
頭脳明晰・才色兼備・文武両道・顔面偏差値。
彼女はどの分野においても、全てという全てを兼ね備え
もう非の打ち所がないほどに、
クラスメイト中から尊敬され崇拝(すうはい)されていた。
ただそんなスペックはお構いなしに、彼女は、クラスメイト全員が見守る
ど真ん中で、寝っぺをした。
呆然と静まり返る教室内。
誰かが口を開く。
「先生、、今って音楽の授業ですか、、?」
そんな誰かの冗談にも、誰もなにも答えられない。。
そうしているうちにも、アスカはゆっくりと起床した。
アスカは、その現実に気が付かず、目の前にある時計を見た。
(ちょうど5分。)
アスカの時間感覚は抜群で、ちょうど5分の仮眠を綺麗にとれていた。
そのたった5分でここまでの惨劇(さんげき)になっているなんて
アスカは、自分の周りに立ち込める生臭い異臭に気が付いた。
生卵が腐ったような強烈な臭いは、的確にアスカの嗅覚を刺激した。
(くさっつ、、なにこの臭い、、)
担任の先生は絶望のような蒼ざめた表情で、
教室の窓を開け始めていた。
2時限目のテストもすべて終わり、
帰り支度をしていたわたし。
いつも通りに声をかけてくれる男子クラスメイト。
「アスカー!今日テスト難しかったな!
明日もテストあるから、お互い頑張ろうぜ!!」
そう言って、なぜか肩をぽんぽんと優しく叩いてくる。
(ん?)
少しの違和感を感じる。。
(肩なんて叩かれたことないのに、、)
その後もいつも通りに明るく声をかけてくれるクラスメイトたち。
「アスカ! 今日も可愛いね!また明日ね!!」
「アスカ~!化粧品どこの使ってるのか教えてって
さっき聞いたじゃん! ねぇ教えて~!」
次々といつも通りに優しく話しかけてくれるクラスメイトに、
わたしは、いつも通りにまた女神のように微笑み返す。
明美
「アスカ!!一緒に帰ろう!!
さっきは災難だったね!気にすることないよ!
あるあるそういうこと!ね!」
明美のその一言が理解できなかった。
まるで慰めてくれているかのように、
幸子
「そうそう、私だって、絶対寝てるときやってると思うもん!
あんなの無意識だから、絶対仕方ないよ!
アスカ気にしないでね!」
なぜか二人は意味が分からない言葉をずっと発している。
わたしは終始、二人の表情を確認する。。
「二人はなに言っているの、?」
明美が明るく優しく口を開いた。
「あれ?、アスカ、、もしかして自分で気付いてなかったの?
アスカさっきのテスト中、、?
アスカ、寝っぺしてたんだよ?」
無邪気そうに答える明美に、
アスカは何を言っているのか全く理解出来ていなかった。
「何を
言っているの
?」
幸子
「もう気にしなくていいよ!アスカ!
よし今日はテスト祝いにみんなでたこぱでもしよー!
わたしの家でね!」
明美
「いいねー!3人でたこぱしてさー!
いっぱい恋ばなでもやりましょうよー!!」
盛り上がる二人に対し、
いつも通りに笑顔を見せる。
「そうだね。学校も早く終わったことだし、
みんなでぱっと盛り上がろう!」
そういって、明美と幸子は教室から出ていこうとする。
誰もいなくなった教室で、アスカは口を開いた。
「明美と幸子、ごめん、、さき帰ってて。
ちょっとロッカールーム整理したくってさ。」
少し驚いた顔をする二人だったが、誰もいない教室で、
分かった!と笑顔でアスカに手を振った。
帰っていく二人を目で確認すると、
誰もいない教室で
アスカはひざから崩れ落ちた。
彼女はひとりぼっちになった教室の中で、
大泣きしながら、その手をかき混ぜた。
【わたしの
自尊心。】
アスカは教室に落とした自尊心を必死で拾い集めようと、
何度も何度も床をかき混ぜた。
アスカの血走った目には、
以前のような清楚な雰囲気なんて一切感じられなかった。