誰かが腹を抱えて
豚に真珠を与えた。豚はすぐに飲み込んだ。それが何かも知らずに。真珠がなんなのか、俺もよくわかっていなかった。貝の中に入っている丸い石みたいなやつ。欧州貴族の首飾り。ダンジョンの秘密を暴く鍵。初めてもらった合鍵。中古で買った自転車。ここに引っ越してきて数ヶ月が経ったが、駅前にあんなお店があるなんて知らなかった。
フラッと立ち寄った店で出会った460円のジャンベ。それはあまりに小さい。指が何本かしか収まらないサイズ。俺にも余暇があった。1年だったか26年だったかもう忘れたが。君は今日傘を忘れた。明日も明後日も忘れた。俺は君を忘れて、寝てしまった。たった2040万年だけ寝過ごそう。
いつか君と話した、雲がまだそこにいて俺の部屋から見えてる。それがかなり不気味で鳥肌が立つ。君の影は少したりともここに残っておらず、それがなんとも生きている実感を際立たせているのである。