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風電の弥七

「あの人は、何の業務担当なの?」
社長の高橋友一は、総務部長の村上英治に尋ねた。
「総務部付け節電担当部長です。先日、導入検討していました“小型風力発電機”の試験を担当しています。鈴木隆宏担当部長です。」
件の部長は、窓を開けて壁にのりだすように何かを設置?操作している。
小型の風車が壁に設置されている。大量な数だ。
先月だったろうか、子会社が開発した小型風力発電機を実験導入していたのだ。
相当の発電量があり、電力節電に相当の効果がみとめられるとの報告があったようだ。
彼ももちろん、親会社からの出向組だろう。
【この合併は誰にたいして正解だったのだろう。】高橋は都度に思っている。
確か節電効果は年間100万程度と報告されていたようだ。
それに対して節電担当の彼の年収は1200万円。社会保障費用等も加算すると2000万円以上が必要だろう。
その彼を専担において節電とは。
総務部次長の田中洋治が書類をもってきた。
「こちらが先月承認されました節電関連の決裁書です。」
タイトル“風力発電導入にともなう節電効果について”の上に回覧承認欄がかなりのスペースを割いている。

風電の弥七は、実際によくできている。小型ながら発電力・効率等相当のものだ。
案外大発明なのかもしれない。
現行では、蓄電システムに課題があり、メンテナンスに人手をようしているが将来的にはその課題も克服されたならば世界を揺るがすことになるだろう。
だが、現在の会社は赤字含みで導入しはければならない蓋然性はない。単に親会社に忖度しているだけの結果だ。彼ら大きな会社に生きてきた人間は本当の利益は死角だ。只管上を見て親会社、上司、より強いものに忖度する。
忖度することがすべてだ。ほかに価値基準、規範をもっていない。
かなしいかな以上だ。
その親会社に吸収されて5年。良くも悪くも経営は安定している。出向組にみられる人材補填、給与補填は会社経営上の負担を助けていることは間違いない。
親会社は、そのことでも痂疲とならず安穏としている。このまま忖度主義でいつづけることは将来に暗雲であるはずなのに100年以上の歴史がそのことに濁らせ未来を予測させづらくしている。
ピーターの法則ではないけれど、この評価制度では全ての階層で無能になっていく。
悲しいかなそれが、事実だ。


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戸辺 忠良
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