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フーさん、田舎からの脱出

フー『お母さん、耳が痛いよ』
フーさんは、弱弱しい声でうったえる。
フー『ここにきたら急に耳が痛くなった』
母『どうしたんだろうね。急に走ったからかしら』
母『まったくあの人って、異常に追いかけてくるし、ただやりたいだけなんだから』
母『お前も、そんな男になっちゃだめだよ』
フー『ん、わかった、あんな男にはならないようにします』
フー『でも、お母さん走ったらお腹すいたね』
母『そうだね。でもなんか実がなってないね』
母『前はたくさんなっていたのに』
いつからだろう。木の実がなっていない。この周辺の半径何メートルぐらいか。
冬眠前の大事な時期なのに。
しょうがないから木の皮で我慢我慢。
それにしても、耳が痛い。
嫌、反省して痛いわけじゃなく、現実に耳が痛い。
追いかけられて走っていた時は感じなかったのだけど。
ここにきて急に耳鳴りみたいな音・キーンって音が聞こえている。
頭に響く。
フー『おかあさん、頭が痛いよ』
母『ほんとだね。私もすっごく痛いよ』
母『ここにいるのは無理ね』
長くはいられない。
戻るわけにはいかないし。その先は里に近づくし。
ニッチもサッチもいかない。
あの男が悪い。
他の男の子供だと思って、この子を排除したくてしょうがないみたい。
油断できない。本気で食い殺しにくる。やりたいだけの男は危険。

金の亡者的な言いかたなら何?
飢えた狼。やりたいだけの熊。だはんこく象。
大好物の木になってる梨を落としちゃったんだけど、首が長すぎて拾えないキリン。
下におりたら食い扶持には困らないのだけど。
もっと怖いやつらがいるからな。
お金もないし、下で食糧庫をあさるしかないのか。
どうしたものか。
それにしても、あのおっきな風車みたいのが腹たつ。
あれが建ってから碌なことがない。
木のみがならないどころが、虫もネズミもいない。
なんなら、シャケものぼってこない。
これでどうやって生きていけっていうの。

夕方のニュース
11日午前2時半すぎ、新聞配達中の男性がおっかない市のおっかない小学校のグラウンドに親子とみられるクマ2頭がいるのを発見、警察に通報しました。親とみられる個体は体長1.5メートルほどだったということです。
(付近に住む人)「三十四・五年ここに住んでいるけれど、クマなんて初めて」クマの目撃を受けて、市は目撃のあった小学校を含む幼稚園と小中学校合わせて5つを臨時休校としました。(おっかない小学校校長) 「駅も近いので困惑しています。あす以降、必要に応じて保護者に送迎をお願いすることも検討しています」市は現場を調査しましたが、クマの足跡やフンは見つからなかったということです。 しかしクマの目撃はこれだけではありません。おっかない小学校からおよそ2キロ離れた公園の近くの路上でもきのう午後8時ごろ、親子とみられるクマ2頭の目撃がありました。

市広報
『おっかない市では、2024年4月以降、クマの目撃件数が例年と比べて増加しています。おっかない市では、ヒグマの目撃情報があった場所には看板が設置されており、看板周辺での活動には注意する必要があります。』
 
企業のレポート
『今回使用する風車はシーメンスガメサ社製で、定格出力は4.2MWです。風車そのものは中国で生産して船でおっかない港まで運んで陸揚げします。ここまでは事業主の管理です。そして深夜から明け方に掛けておっかない港から現場まで部品を輸送し、これを据え付ける工事までを当社が管理しています』

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戸辺 忠良
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