
私の52個のエートル トゥルマンテ ◆48個目◆
◇薬をちゃんと飲見切れない話◇
私は薬を飲むのをよく忘れる。いや、よくというより、ほぼ毎回忘れる。これでは「薬を飲む習慣がある人」ではなく、「薬を飲み忘れる習慣がある人」になってしまう。
飲むべき薬があるとき、私はまずテーブルの上に置く。「これなら絶対に目に入るだろう」と思うのだけど、なぜかそのテーブルを見ていない。いや、見ているのに、見えていない。薬の存在を認識する前に、「あ、テーブルにホコリたまってるな」とか「リモコンどこいった?」とか、別のことが気になってしまうのだ。
そこで次に、「寝る前にベッドの横に置く作戦」を試みた。これなら寝る前に気づくはず…と思いきや、寝る直前にはすべてのことを「明日でいいや」に分類してしまう癖があるので、当然のように忘れる。
「持ち歩けばいいのでは?」と思い、通勤バッグに入れてみた。が、バッグに入れると、「飲まなきゃ」ではなく「持ち歩いているから安心」という謎の安心感に包まれ、結局飲まない。もはやこれは「薬を持ち歩く習慣」になっていて、本来の目的とズレてきている。
いよいよ最終手段として「首からぶら下げる」という案を考えた。朝、鏡を見るたびに「あ、薬だ!」と気づく。これはいい。しかし、外に出るときに「あれ、私、なんか首からぶら下げてる?」と気づいて、薬をポケットに入れる。そしてまた忘れる。
ここまでくると、「もう自分がロボットになって、体のどこかに薬をセットして、時間になったら自動で口にポンって入る装置が必要なのでは?」という気分になる。もしくは、AIアシスタントが毎日「薬の時間です!」と警告してくる…が、それでも私は「あとで飲むから大丈夫」と言って忘れる気がする。
もうこうなったら、薬にGPSでもつけて、「飲まれていない薬があると自動的に警報が鳴る」くらいのシステムが必要なのかもしれない。でも、たぶんそのアラームも「とりあえず止めるか」とスヌーズして、また忘れる未来が見える。
この事を家族に話してみた。
「命の危機ではないから、結局、自分が心底困ってないからだよ」
た、確かに……。いや、困ってはいるんだけど、体調も回復してくると「飲まなくてもまぁなんとかなるか」と思ってしまう程度の困り方だから、本気で対策しようとしていないのかもしれない。
家族の話を聞いて、私は思った。「結局、私は本当に困るまで改善しないのでは?」と。たとえば、薬を飲み忘れた結果、風邪が悪化して会社を休む羽目になったり、大事な予定をドタキャンすることになったりすれば、その時は「もう絶対忘れないようにしよう!」と誓う。でも、良くなるとすぐに「まぁいっか」に戻る。
これはもう、私がどうにかするしかない。AIでもロボットでもなく、私が「本当に困る前に困ったつもりになる」訓練をするしかないのだ。……とは思ったけど、これってどうなんだ??