[小話]武士のCM
成功例
武士「やあどうもこんにちは」
富豪「これはこれは。はて本日はどういったご用事で」
武士「最近ここらへんも治安が悪くなりましたね」
富豪「最近は怪しい連中がうろちょろしてて夜も寝れたもんじゃない」
武士「あなたの土地なんか広いから警備もよほど大変でしょう」
富豪「まあそうですね。最近はうちの若い連中でも手に負えん」
武士「そんな時に土地の警備を外注したいと思いません?」
富豪「そんな便利なサービスがあるんですか!」
武士「お住いのご地域は弊社の管轄内ですので、あなたもご利用できます」
富豪「具体的にはどんなサービスなんですか?」
武士「弊社の屈強な武士が、あなたの家に侵略する輩を追い払います」
(ここで武士団の経歴ラインナップを見せる)
富豪「これはとても心強い。でもお高いんでしょ?」
武士「なんと今なら月額米二俵でひきうけさせていただきます」
富豪「なんてお安い!今すぐ契約しよう」
安くて安心~幕府印の警備会社~♪ジャンジャン♪
※契約内容は予告なく変更となる場合がございます。
失敗例
武士「やあどうもこんにちは」
僧侶「なんだよ。新聞ならお断りだよ」
武士「最近ここらへんも治安が悪くなりましたね」
僧侶「ああ」
武士「あなたのお寺の土地なんか広いから警備もよほど大変でしょう」
僧侶「こっちは忙しいんだ。早く要件を言いな」
武士「警備を外注したいと思いません?」
僧侶「警備の営業ならうちは間に合ってるよ」
武士「弊社の武士団は腕っぷしぞろいですよ」
僧侶「うちには僧兵がいるから」
武士「でも最近のゴロツキはタチが悪いですよ」
僧侶「あんたもしつこいね。そいつらもどうせあんたらのグルだろう」
武士「なにをおっしゃいますの」
僧侶「こっちは全部知ってんだよ。人を雇って治安を悪くしてそれで自分らのサービスを売りつけようなんて、アコギな商売してるよ本当に」
武士「あらヤダばれちゃった。こうなったら実力で奪うまでだ」
上司「おいやめろ、帰ってこい。あいつら多分俺らより格上だぞ」
武士「なんでやねん」
*なお、これらはすべてフィクションです。
解説
中世の武士団は税を上納させる代償として、納税者を保護するという義務を背負っていた。本来荘園領主は独自の軍事力を有していたが、承久の乱以後、自身の荘園の警備を幕府の下部組織である地頭に任せるようになる(地頭請)。一方で興福寺や延暦寺をはじめとした独自で武装する寺院や一部の荘園領主は、武士に保護される必要がないため、当然納税もしなかった。一般的にはこれが不輸・不入の件と呼ばれている。
室町時代から戦国時代にかけては貨幣経済の浸透などにより町人、百姓らの経済力が上昇し、一向宗の集団である一揆や百姓の集団である惣が各地で独自に武装をしていった。代表的な例では加賀の一向一揆や石山本願寺、鉄砲を巧みに操った雑賀衆がある。応仁の乱によって疲弊した幕府が地方に影響力を持たなくなり、各地の武士集団(守護大名、守護代、地元の土豪など)が実質的に幕府から独立した戦国大名となっていった。
こういった様々なバックグラウンドをもった集団があちこちに独立して武装していたのが戦国時代である。
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