エアラインパイロットまでの道のり

はじめまして。ジェーンと申します。

パイロットを目指し始めたのは小学生の頃でした。大きな金属の塊と、制服から発せられる魅力に包まれたパイロットに憧れたのがきっかけだと思います。高校・大学を経て、多くの素敵な方々に支えられ、パイロットとしてのチャンスをいただきました。

このnoteでは、パイロットになる上で避けては通れない、自社養成や航空大学校、私立大学の養成課程についてお伝えすることができればと思います。拙い文章ですが、ご容赦いただけますと幸いです。

パイロットを取り巻く現状

まずパイロットを目指す上で、航空業界はイベントリスクに弱いということを理解しておく必要があります。また、現在世界的なパイロット不足(2030年問題)が叫ばれています。しかし私は、この問題を正しく読み解く必要があると考えています。ここから先は私の一意見ですので、ご自身のお考えや周囲の方々の考えも合わせて、考慮いただければと思います。

「2030年問題」とは、航空需要の増加と、団塊世代の退職に伴い、運航を担うパイロットが不足すると予想されている問題です。表面上の問題はパイロット不足でが、結論から言うと本質は「大手航空会社の機長不足」であると考えています。

資料によると、2030年には確かにバブル期に採用された機長の退職が迫っています。しかしながら、自社養成の近年採用推移を見ると

例: JAL
2023年度以前約80名→2024年度以降約50名


と採用人数が減少していることがわかります。パイロットを養成するのに4〜5年程度かかるとすると、この採用数減少は「副操縦士要員は足りている」「会社の機長養成スピード」が鍵となっていると私は推測しています。

しかし、子会社や地域航空会社などは、私立大学や民間フライトスクールからの採用もされていますので、こちらに関しては副操縦士要員も不足していることが窺えます。また、経験者採用で機長の募集もされていることから、大枠での「パイロット不足」があると考えても良いと思います。

これらの情報は、国土交通省のサイトや各エアラインからの資料がインターネット上に掲載されていますので、状況を正確につかむことが必要だと考えています。また、それらの情報をご自身で分析・取捨選択し納得した上で、今後も判断材料にしていただければと思います。

パイロットになるための選択肢

パイロットという職業に就くためには、以下の4つの選択肢があります。エアラインパイロットに限定して列挙していこうと思います。私の知見の限りをお伝えしようと思いますが、すでに多くの現役パイロットの方々がネットやSNS等で言及されておられると思いますので、一意見として留めていただけると幸いです。

自社養成

各航空会社が新卒・既卒を対象として0からパイロットを養成する制度です。2024年現在、ANAグループのパイロット共通選考であるFCAT(Flight Crew Assessment Test)や、JALグループ(JAL、J-air)、スカイマークなどが実施しています。また、海外エアライン(Cathay・EVA・STARLUX・Lufthansa・Unitedなど)もCadet ProgramやSponsored Programなどを行っていますが、海外エアラインについては今後機会があればお伝えしようと思います。

自社養成のメリットは、やはり給与をいただきながら訓練を受けるところにあります。パイロットを1人養成するのに4000万以上のコストがかかると言われています。そのコストを会社が負担し、プロのエアラインパイロットとして養成します。また、エアラインには「その会社の飛ばし方」があります。0から養成する分、その会社色のパイロットを育てることができる点でも優れていると言えます。

ただ、入社試験は難関になります。倍率は100倍以上と言われますが、私は途中で倍率について考えることをやめました。通常の就職活動では、3次選考ともなると最終選考と同等と思いますが、自社養成パイロット選考は英会話試験や操縦適性検査、身体検査なども含め7〜8次選考まで行われます。また、採用人数も情勢に左右され、近年では大手では各社40〜50人程度となり、非常に狭き門と言えます。選考については、今後少しずつお伝えできればと思います。また、各社規定によりますが、以前に受験経験があり、一定の選考(特に身体検査)まで通過している場合は、受験できない可能性があります。

入社後は1〜2年(情勢に左右される)程度地上研修を経験し、基礎課程や型式限定や副操縦士任用訓練を経て副操縦士へと昇格します。大手航空会社の養成は、指定養成制度で養成していることが多いため、Failが存在します。指定養成制度とは、簡単に申し上げると国土交通省によって認められたカリキュラムで行う制度のことです。その為、訓練の質を担保している代わりに訓練にリミットがあり、2度不合格すると訓練から外れることになります。1割程度がFailすると言われています。

  1. ANA

  2. ANA WINGS

  3. PEACH AVIATION

  4. AIR DO

上記の4つはANAグループが行うFCATという共通試験の合格を持ってエントリーとなります。例年、秋頃と春に2回選考があります。ただし同一年度に2度受験することはできません。ANAは40〜50名、ANA WINGSは10名程度、PEACHは10名程度採用されていますが、AIR  DOに関しては不明です。
PeachやAIR  DOに関しては、訓練費の約半分を会社が負担し、残りは銀行提携ローンなどで訓練生が負担するシステムとなっています。約1000万程度ですが、パイロットを目指す中では圧倒的に安い方ではないでしょうか。

  1. JAL

  2. J-air

上記の2社については例年夏頃〜冬頃に学生向けインターンシップが行われます。例年冬開催のインターンシップは、合同であることが多いです。多くの場合はこのインターンシップから採用されているようですが、本選考からも数人採用しているようです。年度により内容は変更されるようです。こちらも2024年度からJALは40〜50人程度、J-airは10名程度となっているようです。

スカイマーク

2024年採用の社員から約5年ぶりに再開しました。以前(2010年代)は30人程度採用していたようですが、現在は10名程度となっているようです。時期としては4年(修士2年)の夏頃から選考が始まります。恐らく大手航空会社や航空大学校から惜しくも外れた学生を獲得する狙いがあると推測しています。こちらは、1度受験するといずれの段階であっても今後受験不可能という点で他社とは異なります。

補足: JTA JAC RAC
上記の3社は運航乗務員養成制度を設けており、鹿児島大学や琉球大学、沖縄出身の学生を対象とした養成プログラムを行っています。こちらもPeachなどと同様で訓練生が一部費用を負担するシステムですが、一定期間の勤務後は残りの訓練費を会社が負担するというシステムです。各社1〜2名程度採用され、その後は大学養成施設で事業用操縦士の資格までを取得する流れです。

航空大学校

日本のパイロットの4割を輩出してきた歴史ある訓練校です。例年5月に出願、7月に1次試験、9月・12月に2次試験、2月に3次試験が行われます。定員は108名で倍率は約12倍です。通過者の選定は特殊で非公開ですが、1次試験と2次試験の合算で評価されます。具体的にいうと、2次試験(身体検査)でS・A・Bと評価がつき、80名程度がS評価をつけられ、1次試験の結果に関わらず上位80位前後に入ります。残りの30名程度はA評価がついた学生を1次試験の結果順に並べるというものと言われています。また、2次試験B(脳波)で不合格となった場合は、再受験できません。
25歳までという年齢制限があり、訓練期間は3年半程度となっています。自社養成に次いで訓練費が安く、現在は500万強です。自社養成と同様にFailするリスクもあります。また情勢に左右されますが、訓練実績から高い就職率があり、航空大学校からしか採用しないという会社もあると言われています。航空大学校に出資する金額によって採用順位があり、内定が出た時点で就職を決めるか、希望する会社の就職試験までパスするかどちらかです。

先述の通り、パイロットという職業は情勢に左右されやすい仕事です。特にコロナ禍で機材の部品不足やキャパシティ不足による問題が露呈し、各フェーズで待機期間が発生しています。航大側も、この遅延解消に力を入れていますが、訓練期間の短縮には至っておりません。現在もキャパシティ不足により宮崎課程の学生は一部オンラインで講義が行われているようです。パイロットの安定供給が使命の航空大学校ですが、今後の状況によっては1年程度募集をストップする可能性もゼロではないと懸念しております。

私立大学

東海大学や桜美林大学、崇城大学、法政大学など操縦課程のある大学では主に4年制学部として設置されています。東海大学や桜美林大学では、航空会社との連携により推薦制度などがある点、学位を取得できる点などがメリットとして挙げられます。パイロットになる上では最短のコースで、最速で23歳で副操縦士昇格も可能です。近年では、社会人を経て入学する学生も多くいるようです。

デメリットとしては、莫大な訓練費があります。2000万以上+生活費がかかることが多いです。またエアラインは採用する際に学生の技倆を図る一つの市場として、基礎課程の訓練校があると考えています。多くの大学養成課程では、海外訓練校に委託や国内フライトスクールに委託しています(例:東海大学→UND、桜美林大学→CAE、第一工大/千葉科学大→HAA)。採用実績のある訓練校の場合は採用される可能性は高いですが、採用実績も吟味する必要があります。もう一つ、就職で一度不採用となる(就職浪人)と、次年度は自分よりも若いライセンサーと就職試験を受けることになります。有利・不利についてはその人次第と思いますので言及は避けますが、この点でもしっかり考慮する必要があります。

民間フライトスクール

国内で大手フライトスクールと言われるのは、朝日航空は本田航空です。メリットとしては自社養成・航空大学校・私立大学など他の養成ソースでは年齢的な制限などで挑戦の機会が狭まってしまっている場合は、非常に魅力的な選択肢です。訓練費は1600万〜2000万以上と幅はあります。訓練期間は2年程度、さらに就職期間が2年程度です。

デメリットとして就職の難易度が高いことが挙げられます。特に同じ自費訓練でも、私立大学の学生と比較した場合、エアライン推薦の有無や年齢、訓練校の実績(先述した通り訓練校の実績が学生の技量レベルとして見られる可能性があります)などの点で、難易度が高いと言われています。しかし、近年ではANAやJALなど大手エアラインへの採用実績もあるようです。エアライン出身の教官がいる訓練校もありますが、使用事業や自衛隊出身の教官も多い場合があるのでそこも一つの判断材料だと思われます。朝日航空の場合は年に3回程度入学しているようですが、本田航空は近年採用をストップしているようです。

これらの情報は私が知りうる限りの情報です。特に情勢に左右されやすいソースだと思いますので、実際に現場に赴き、ご自身の目で見て耳で聞いて判断されると、より納得のいく判断ができると思います。

まとめ

今回はエアラインパイロットになるためのソースをご紹介しました。再三の言及にはなりますが、情勢は刻一刻と変化します。また人やご家庭によって取り巻く環境は様々だと思います。情報を鵜呑みにするのではなく、できる限りご自身で情報を収集し(知り合いの関係者や組織にコンタクトをとる)、分析・取捨選択し、ご年齢・ご予算・ご家族の事情なども含めて、パイロットになる方法をご自身の優先順位と照らし合わせて吟味してください。

少しでも空の世界を目指す方の力になることができれば幸いです。


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