マッチ売りの先輩
「今から飲み来られる?」
夜は21時も過ぎた頃に、中学時代の先輩から唐突なお誘いLINE。ちょうど帰宅する途中だったので顔を出してみると、お世話になった懐かしの先輩方がいい感じに出来上がっていた。
学年は2つ違いなので、実際に会うのは中学1年以来。だからもう10年も会っていなかったことになる。
当時から十分お兄さんお姉さんに見えていたけど、それぞれ立派な社会人になって、もっと大人っぽいお兄さんお姉さんに。
あの頃の話をすると、皆さん1つ下の後輩すら朧げで、自分の同期のことなんかほとんど覚えていなかった。それはそう。一緒に活動したのはたったの半年間だから。
そんな中で自分のことを今も覚えていてくれて、さらに飲みにまで誘っていただけるなんて、なんて有り難いことだろうって感謝しながらビールを流し込む。
途中、先輩の1人が席を立つ。その先輩は体質もあってお酒を飲まない。シラフでも飲んでいる人以上にハイテンションになる、一番コスパの良い人だ。
どうやら煙草を吸いに行ったよう。その時は別に何も気に留めなかった。
時は進み、帰り際、会計を済ませ外に出ると、その先輩は「あー、また〇〇煙草だってよー」なんて言われながら喫煙所へ向かう。そこで、
手には金のマルボロ。
そしてライターは…持ってない、ん?どういうこと?
(かばんの中をごそごそして箱を取り出して)
マッチをシュッとひと擦り。
ええええええ!!!せんぱあああいい!!
マッチで火つけるんですか!!??
渋すぎますよさすがに
当時、部長で優等生だった先輩。そのお方が煙草をふかすというのも、ギャップはすごいけれど、いやいやマッチの衝撃は大きい。
聞くと、zippoは持っているけどオイルを買っていないから一度も使ったことないらしい。オイル買うのが面倒だからマッチを使っている、って。
たぶん深く考えたら、マッチを使うデメリットだって負けてないのだろうけど、便利とか効率ばっかりを追求する世の中で、我が道を行くことが素晴らしいです。
いつから煙草吸っているんですか?って聞いたら、ここでははっきり書けない歳から吸ってた。通っていた高校だって、県内では名の通る伝統の女子校だったはず…。人生まっすぐだけが正解じゃないんだなって、本当に思う。
目の前で慌ただしく1本吸い切っている人は、私の知っている先輩とはほど遠くて、でもかっこよくて。
煙草ってカルチャーとか憧れから始めたくなるって気持ちがよく分かった。
同じマッチで火をつけるとしても、おじいちゃんが道端でショートホープやPeaceを吸うのとは違う。
マルボロのゴールドと象印のマッチ。そして2つ上の代で部長だった先輩。この組み合わせが揃っているからこその何かがある。
マッチって2箱1セットで売ってるんだってね。
私はたまに友だちからもらうくらいで、普段は煙草吸わないけど、あまりにかっこよかったので先輩にマッチを1箱せがんで頂きました。
マッチ売りの先輩。ありがとうございました。
いつまでもマッチユーザーでいてください。
日本のマッチ業界は先輩がいる限りなくならないと信じています。
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