やぽんすく

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木下龍也の短歌と、青葉市子の詩に寄せて

服を脱ぐたびにあなたは神様をやめてわたしの獣になった        木下龍也『あなたのための短歌集』ナナロク社 幻の答えはいつも同じ 鬼ヶ島に授けた赤子を 殺しに来る肌艶の良きあなた        青葉市子「鬼ヶ島」 大英博物館で、踊るシヴァ神の像を見つけました。 破壊と創造の神。 妖艶に黒光りするその艶肌を前にして、どうして膝まづかずにいられましょうか。でもあなたは、これが欲しいとささやいて、そのとき少しだけ鼓動が速くなるのを私は知っています。 濁流にのまれた私たちを

    • くじら

      時計の針は22時を回ったというのに、まだ外はうっすらと明るい。真っ暗な部屋の中に、2階のオランダ人たちのパーティの声だけが響く。 この国に来てから、ふと、 私って、ここにいなくてもいいよな と思うことが増えた。 意見が言えず、周囲に貢献することもできず、世間話もできず、ジョークも言えない私は、この世界ではただの空気。ときに、お荷物。 大きな音が聴こえる。 質問に答えられなくて、焦って、何度も聞き返して、空気が凍りついて、そのうちみんなが私に落胆して、苦笑いが広がる。 ご

    木下龍也の短歌と、青葉市子の詩に寄せて