終日谷橋の上に座る意あり
ガザの幼い命の無惨さに胸がいたむ…
秋鮭が不漁ときく。
この季節になると母は飯鮨(いいずし)と呼ばれる鮭とハタハタを使った漬物の一種を作り出す。そしてその作業は過酷である。
まず生の鮭とハタハタは、お腹を出してから
数日間血を抜くために流水につけておく。
その前にも4匹くらいの鮭を三枚におろす。
その作業は寒いさなか外でやっていたので、
今思うだけでもぶるっとなるのだから毎年たいへんなことを続けていたものだ。そのあとも管理がだいじで、漬けた樽からつけ汁が上がってくればその樽をひっくり返して汁を抜く。それは父の仕事になっていた。飯鮓は
魚の他に人参、大根、生姜の野菜と麹、炊いたご飯、お酢、塩でつけていく。鮭の方は
身だけ使うが、ハタハタは頭と腹わただけ取って骨が付いたままだが漬け上がった時には骨が柔らかくなっている。どちらかと言われれば食感がハタハタのほうが好きだった。
鮭の方で一番忘れてはいけないものを忘れていた…生のすじこが入るのだ!大根のしっぽを使ってすじこを潰さないようにバラす。
あまり硬くならないようにさっと湯がいて使う。漬け上がった鮭の飯鮓はすじこ入りなのでメインのお正月料理になる。11月半ばぐらいには漬け終わって大晦日に間に合わせる努力を毎年やっていたのだから感嘆するしかないのである。そして必ず夫婦喧嘩が始まるのも其頃だった。家の中の事をしながらなので
母の怒りが容赦ないのは子供心にも感じていた…父の方はうまい飯鮨を食べたい一心でいるだけで、、自分は作るわけではないから
逆なでをするだけだった…
けっして良い空気のなかで作っていたわけではないのに、元旦に食卓にのれば何事もなかったようになる。
ハレの日の鮭とハタハタのこと。
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