数の集合2 整数について
前回の自然数の話の中で、小学校で引き算を習ったときの問題点の話が出た。
「$${7-6}$$はできるけど、$${6-7}$$はできない」というもの。
この問題を解決するのが、「整数」である。
小学校では先に分数や(有限や循環)小数を学ぶので、有理数が先になるのだが、数を構成するのであれば、整数に拡張する方がいいだろう。
自然数は、加法について閉じていたが、減法については閉じていなかった。
そこで、集合を少し広げて、減法でも閉じている集合を作る事を考える。
単純に、自然数で引き算をしたときに、$${3-3}$$をしたら自然数ではなくなる。
$${0}$$が自然数かどうかは前回書いた通りなので省略する。
更に引き算で$${3-4}$$をすると、$${0}$$でもない値が必要になる。
それを引き算の「$${-}$$」と同じ記号を使って、$${0-1}$$と同じ値のことを$${-1}$$と表記して、負の数と呼ぼう、ってことにしたもの。
こうやって$${0}$$とかマイナスを定義して、自然数と$${0}$$、そして自然数にマイナスをつけた数をまとめて「整数」と呼びましょう、と。
マイナスというものが登場すると、世間の8割(勝手な予想)が納得していない問題が発生する。
$$
(-1)\times(-1)=1
$$
本書ではまだ掛け算「$${\times}$$」を定義していないので、細かいことを言うと良くないのでしょうけど・・・
まあ、気にしないでいきましょう。
まず、$${1}$$というのは「$${a \times 1 = 1 \times a = a}$$」を満たすことは明らかですよね。
そして$${-1}$$は「$${1+(-1) = (-1)+1 = 0}$$」を満たす値だということ。
この $${0}$$ というのは、$${a \times 0 = 0 \times a = 0}$$を満たす値です。
それと、分配法則「$${a \times (b+c)= a \times b + a \times c}$$」、「$${(a+b) \times c = a \times c + b \times c}$$」が成り立つ。
これを使って、$${(-1)\times(-1)=1}$$が成り立つことを確認しよう。
分配法則より
$$
1 \times (-1) + (-1) \times (-1) = (1+(-1)) \times (-1) \\
(-1) + (-1) \times (-1) = 0 \times (-1) \\
(-1) + (-1) \times (-1) = 0 \\
1+(-1) + (-1) \times (-1) = 1 + 0 \\
0 + (-1) \times (-1) = 1 \\
(-1) \times (-1) = 1
$$
である。
であるんですよ・・・
であるんですけど・・・
分かりにくい、ですよね・・・
そんなわけて、もうちょっと納得いく理解(解説ではない)を考えました。
まず、マイナスというものをどう解釈するか。
お金の残高がマイナスになると、それは借金です。
つまり、マイナスとは「逆に」向かうことです。
みんなで歩いて行くときに、1人だけ「逆」を向いていたらどうなるか。
「空気読めないヤツ」って思われて、白い目で見られる・・・ではなく、
1人だけ集団から抜け出し、反対方向に向かいます。
みんなと同じ向きを向いている状態で、1人だけみんなとは「逆」に後ろ方向へ歩き出したらどうなるか。
「アイツ、目立とうとしてスベってる痛いヤツ」って思われて、距離を置かれるようになる・・・ではなく、これも1人だけ集団から抜け出し、反対方向に向かいます。
では、ここで逆を向いて後ろ向きに歩いたらどうなるかを考えると・・・
周りの人から見ると、「今頃にキング・オブ・ポップのマネの練習をしてるの??」と思われ・・・るかも知れませんが、一応、周りと同じ速度で進むことが出来ます。つまり、周囲と同じ$${1}$$になります。
では、逆を向いて後ろ向き、というのはどう表現出来るのか。
前向きに歩く人の$${2}$$倍の速さで走ったら$${2}$$になります。逆を向いて通常の$${2}$$倍の速さで走ったら$${-2}$$になります。
$$
-2 = -1 \times 2
$$
であるので、逆を向いたとき($${-1\times}$$)の$${2}$$倍の速さと表されるわけです。
後ろ向きに走るとどうなるか、というと、速度が$${-1}$$になる、というのは良いだろう。
ここまでの内容をまとめると、
$$
(-1) \times (-1) = 1
$$
逆向きに後ろ歩きをしたら、(周りからは浮くけど)同じスピードで歩ける、ということです。