カラハリが呼んでいるを読んで➁
まず始めたのが、カッショクハイエナの調査です。彼らはファミリーを形成して互いに助け合い生きて行っているのです。ハイエナの調査ははじめてだったようで、その報告から徐々に資金を得てゆくようになります。
次に識別できるライオンの調査です。野生動物の母親は身を盾にして子を守ると考えられがちですが、それも状況や個体によるようです。ある未熟なメスライオンは、子が生まれても丹念に育てるという本能が持てないようでした。気まぐれに乳を与えてもほとんど放置して、やがて子ライオンは衰弱し嵐の夜に濡れ雑巾のような姿で遺体で見つかるのです。人間が無闇に手を出せばますます子を見放してしまう、近くで観察していた作者たちはさぞもどかしく思ったに違いありません。しかし、これもある意味野生の姿なのです。
野生動物の保護のために保護区が設けられています。しかし、餌や水を求めてさまよって行くうちにいつしかその区を出てしまうと、家畜を守る現地人や密猟者の標的になってしまうのです。かつて怪我をして瀕死の状態だったライオンが、せめて餓死にしないようにせっせと餌を運んで何とか蘇らせた、愛着のあるライオンが犠牲になった際の筆者の嘆きは半端ではありませんでした。
アフリカの経済を支えるために牧場経営が盛んになってきました。口蹄疫が流行ったため、野生動物からの感染を防ぐため大地のど真ん中に長いフェンスを作ったのでした。そのため水場を求めて大移動する水牛がフェンスに阻まれ大量死してしまうのです。フェンスの端を抜けてさらに長距離を移動すれば水場に辿りつけますが、その途中あるいは水場で力尽きるものも多かったそうです。あるいは保護区を外れてハンターの獲物になる場合も多いようです。
自然の中で生き抜くこと自体至難であるのに、人間が関わることでさらに過酷に追い詰めてします。この理不尽さに、何んともやるせなさを感じます。ただ著者は淡々と調査し現状を世に知らしめて、少しでも状況改善に力を尽くします。