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【詩】 Blue Tint
あなたの
凛々しい足跡を 軸にして
やおら わたしの
半透明の脆さが 暴かれてゆく
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(「ピエト・モンドリアン」オマージュ作品)
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(「ピエト・モンドリアン」オマージュ作品)
彼の、植物画が好きだ。
大胆な配色と勇ましい構図は、温度や匂い、情動さえも知れてしまいそうなほど、「人間味」に溢れている。
一見、洗練された抽象画「コンポジション」と同作家のものとは思えない作風だが、芸術について、“自然の中から普遍的な美を抽出すること”と捉え、原色を力強く使いこなしている様子からは、抽象的表現の試行錯誤へと繋がる起源が伺える。
「オランダカイウ」では、黄色い花を柔らかく包み込む、薄い青色を基調とした萼から、じわじわと主張の強い赤色が滲み出ている。
生命力の壮大さだけではなく、どこか焦燥感も覚えるのは、対照的な色の組み合わせによる摩擦のせいだろうか。
背景もまた同系色であることから、作品全体として、確かな存在感を放っている。
「2本のオランダカイウ」は、同じモチーフ作品ではあるものの、原色による分かりやすい主張は見られない。
しかし、全体的に淡い配色だからといって、「静か」「穏やか」という印象を持つわけでもない。
花茎をぐいっと伸ばした斬新な構図は、変化をもたせた “続き” の場面を彷彿とさせる。
線のムラは、力を込めて身をよじっているような錯覚を演出している。
モチーフの輪郭をなぞるように、大ぶりに、幾重にも塗り重ねられた背景が、熱をもってその動きを強調している。
植物自体から、「感情」を受けとめているのではない。押しつけがましく、人間のそれを当てはめようというのではない。
彼らの、環境がそぐわなければ枯れてしまう呆気なさは、むしろ、システマチックにさえ思える。
植物画に魅力を感じるのは、そのモチーフに作者が込めた「感情」の熱を、垣間見ることができたときである。