鍵を隠したカゴのトリ 感想
FANZAセールのお好きな3本3000円セット(安!)の数合わせとして購入。本作を選んだ理由は綺麗な絵柄とミステリ的要素との組み合わせに惹かれたから。Cabbitの作品はこれが初プレイで、何なら今までメーカーの存在すら知らなかったので、そういった意味ではやや冒険的な購入となった。
攻略順は、夜→伊鶴→みおん→透子。
(プレイ後に振り返ると一応ミステリ的な推奨攻略順は、みおん→伊鶴→夜→透子だと思われるが、正直大差ない。)
本作品は大きく分けて、ビジュアル面(立ち絵CG等)/ラブコメ(個√)/シナリオ(ミステリ部分)の3つの評価軸に分けられると思う。
〇ビジュアル面
まずビジュアル面(立ち絵CG等)に関しては、比較的新しいゲーム(20年代の作品)という事もあってか、文句なく良い出来だったように思う。(そもそも絵柄が好みだったことが購入理由の一つなので、自分がそう思うのは当然と言えばそうだが…。)立ち絵も表情豊かで可愛らしい。CGは枚数自体はやや少ないが、自分はこういうものは質>量だと考えている為、さほど気にならなかった。
絵柄は、王道の綺麗な萌え絵で真っ向勝負といった感じで、ラーメンに例えるなら叉焼、海苔、メンマ、煮卵をトッピングした中華そば(醤油)くらい逃げがない。絵柄の系統としては「蒼と彼方のフォーリズム」あたりに近いか。やはり個人的にはなんだかんだこういう王道的な絵柄が好きだし、恐らく一般的なエロゲーマーの中でもマジョリティなんじゃないかと思う。
CGの質は全体的に高かったように思うが、個人的にはとりわけファッションが秀逸だったように思う。鳥籠館の住人達のほどほどにお洒落でガーリーな私服からは、いかにも「同級生の私服を見てる感」がにじみ出ており、学生時代そのような経験に乏しかった筆者としては立ち絵を見ているだけでもそれなりに楽しめた。しかもパジャマまである。下着の描写からも制作側の細かい拘りが感じられた。共通√で主人公が洗濯物の下着をうっかり見てしまうシーンがCG付きであるのだが、「どれが誰のなのか」を個別√でベットインすることによって概ね答え合わせできる親切設計なのである。
この他にも、各キャラの私物はちょいちょい所持者の名前に含まれる鳥をモチーフにしているものを身につけていたり、LINEのアイコンが夜だけ実写(隠しきれない陽キャオーラが筆者的にはまさに解釈一致)だったりと、視覚面での芸の細かさが随所から垣間見えた。このような細かい部分も含めて、個人的にビジュアル面はかなり満足いく出来だった。
…がこの作品の最も評価できる部分もまたビジュアル面であり、作品全体としてそこ止まりであったような印象は否めなかった。
〇ラブコメ部分
ラブコメ部分(個√)に関しては、攻略対象が各々の抱えている背景はややシビアであったものの、基本的に8割くらいは毒にも薬にもならない甘々のイチャラブで構成されている。エロゲにおけるラブコメ部分の面白さは往々にして攻略対象のヒロイン力のようなものに依存しがちで、前述のとおりビジュアルがハイレベルだった為そのアドバンテージがここでも生きていたように思う。主人公をはじめ心理描写は比較的丁寧で、どのルートも関係性が親密になる過程はまぁわからんでもないという感じ。
個別√のシナリオについては基本的に特に突っ込みどころもないのだが、夜√のgoodエンドについては多少思うところがあった。というのも、2人が親と同じ轍を踏んでしまう未来を自然に連想できてしまうからだ。心理的にも経済的にも苦しい逃亡生活の中でうっかり妊娠してしまい…みたいな展開がそれほど飛躍した発想だとは思えないのだ。あの結末は自分には「夜badエンド2」にしか見えなかった(そもそも警察沙汰になっているのに町からの逃亡が解決になっているのか、という重大な問題はさておき)。
エッチシーンについては及第点+αといったところ。くどいようだがCGが綺麗なので、視覚的には申し分なし。個人的には前述した「下着の答え合わせ」ができるのが楽しかった。
どこかの√(筆者の記憶が確かなら伊鶴)で言及されていたが、女の子とイチャイチャしている時の主人公は非常に語彙が貧弱で、「可愛い」「エロすぎ」及びこれらの派生形以外言わなくなってしまう。必要に応じて適宜脳内で会話を補完してやるといいかもしれない。
また共通√でキャラクター同士の人間関係と人となりを見た感じ、「透子様によるみおんの性教育的な百合プレイ」を、エロゲのお約束的側面からもどこかしらにねじ込んできそうだと勘ぐっていたのだが、そう思っていたのは筆者だけであったらしく、特に何事もないままトゥルーエンドを迎えてしまった。ちょっと残念。
〇ミステリ部分
この作品をミステリとしてみるなら、正直物足りないと言わざるを得ない。
物語のシチュエーション的に、
①放置しても被害が拡大する心配がなく、身の危険もない
②鳥籠館の住人全員にとって真相の解明は急務ではない
③そもそも身内の透子(と夜)が口を割れば万事解決
であり、まるで緊張感がない。
また、本編全体でミステリ部分に割かれている尺が少なく、シナリオ上での存在感は正直空気と言って差し支えないレベルである。そのため、ミステリとしての質云々よりも、そもそも真相を知りたい(なんなら自力で解き明かしたい)というインセンティブ自体あまり持てなかった。
真犯人についても、そもそも犯人候補になれそうな人物が作中にほとんどおらず、まぁ貴女しかいないよなあ、という感想しか湧いてこなかった。ミステリにしては名前付きの登場人物が少なすぎる問題があるように思えた。動機は痴情の縺れという事でいいのだろうか?
本作品におけるミステリ部分は謎解きの提供というよりは、鳥籠館での共同生活という状況を作り出すための装置としての役割しか担っていないように思えた。
総じてこのゲームは、プロットこそシリアス路線であるものの、実質的には綺麗なビジュアルをぴょんぴょんする心で楽しむ「ごちうさ」的ゲームであるように自分には思われた。ミステリを期待して読むと肩透かしを食らうこと請け合いである。
〇フィーリングによる雑評価
ビジュアル→100点
ラブコメ→60点
ミステリ→20点
平均して60点
オープニング曲のギターが綺麗だったのでおまけで2点くらい足して、62点…って感じだろうか。
余談だが、FANZAにて現在進行形でcabbitのデビュー作である「翠の海」が500円セール中だ。本作が面白かったら購入もありだなと思っていたのだが、これは見送りかしら‥‥。
最後の方はやや酷評気味になってしまったが、見るべきところはあったし、最低限は楽しめたと思うのでとりあえずはよしとしましょう。
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