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横溝正史『怪獣男爵』を読んで※ネタバレ注意

横溝ジュブナイル、今回は『怪獣男爵』の感想などを投稿します!ネタバレを盛大に含みますので、ご注意ください。

今回は金田一先生も御子柴くんも登場せず、等々力警部と小山田博士が奮闘しますが、それについてはまったく違和感はありませんでした。

怪獣男爵という存在
「脳を移植する」という、実際はないけど、でもあってもおかしくない。絶対にないとは言えない。そんな少しSFチック(?)な設定が、何とも言えない奇妙さを醸し出しています。ほかの人の体を借りて、第二の人生を歩む…うん。ちょっと怖い。

北島博士
この方の発言(日記)が、非常に印象に残りました。特に、「三年分の食糧を買いだめして、船をすべて沈めた」という部分が衝撃的でした。絶対に男爵を島の外に出すまいと、必死だったことが分かります。でも、結局は音丸に檻を開けられてしまいました。どこかのタイミングで檻を開けて(鍵がなくても、何とかして開けようとしたかもしれない)、北島博士を殺害しようと考えていたところで、タイミング良く史郎たちが向かってきた。ということだと思いますが、それまでずっと男爵を檻に入れていた北島博士には拍手を送りたい気分です。

最後のシーン(終わり方)
男爵と音丸は、実は死んでいないのではないか…。という終わり方。のちに『大迷宮』『黄金の指紋』という続編が出ているため、小山田博士の悪い予感は的中することになります。今回のラストシーンは、サーカスの小虎さんがボートで待機し、そこにポポが乗り込み、逃げようとしたが撃たれた。ということですね。どうしてそんなに都合よく、二人をボートまで誘導できたのか…?と思いましたが、男爵は催眠術が使えるので、もう何でもアリなのでしょう。小虎さんもポポも、操られていたかもしれません。それにしても、人間だかゴリラだか分からない生き物が二人…。この設定もすごく奇妙ですね。

頭のいい人を怒らせるな
私がこの作品を読んで強く思ったことです。人は誰でも怒りの感情があります。そして怒りが恨みになり、最終的に復讐を考えることもあると思います。でも、頭がいい人の場合、その「復讐」でとんでもないことを考えるかもしれません。この作品で男爵は「人類を滅ぼす」ことを視野に入れていたと考えられます。普通の人でも、病めば「人間全員消えろ」くらいのことは思うと思います。でも、頭のいい人なら、それを実現することもできてしまうかもしれません。普通の人が思いつかないような手段で。(とは言っても、男爵には同情の余地がなく、自分の非を認めず世間に逆ギレしている感が否めませんが…。)だから、頭のいい人は敵に回さない方がいいと思うのです。

最後に
今回も無理な展開や不可解な部分が少なく、読みやすいと感じました。簡単に言えば、男爵が次々に悪事を思いつき、それを警部と小山田博士が止めようとする話です。「人が次々に殺害され、犯人を突き止める」タイプの推理小説が好きな方には、ちょっと合わないかもしれませんが、男爵が次々に考える悪事の内容に驚かされると思います。本当に何でもやってのける恐ろしい奴です。でも、なぜかやっぱり音丸は嫌いになれないなぁ(笑)

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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