結婚式ゾンビ/毎週ショートショートnote
「新郎新婦のご入場です」
定番の結婚式ソングに乗せて、拍手に迎えられた二人が入場する。
その二人を見送りながら後輩が小声でつぶやく。
「…先輩、あの方これで何回目でしたっけ?」
尋ねられた先輩は笑顔を貼り付けたまま答える。
「6回目」
「うえっ!よくそれで周りやお相手さんにバレないですね!」
「顔、出てるよ。…聞くところによると、結婚するたびに会社を変えてるみたいよ。それに友人枠は呼んだこと無いし、ご両親はすでにおられない。周りにもバレにくいんじゃない?」
「それにしたって変じゃありません?前のお相手さんとか、気にならないんですかね?」
「…上手く立ち回ってるんじゃない?」
「なんでそこまでして…」
「知らないわよ」
「…結婚式マニアとか?」
引きつった顔がこちらに向く。
「マニアというより、ゾンビじゃない?結婚式ゾンビ」
扉が閉まりだし、二人で頭を下げる。
「なんだか私、急に怖くなってきました」
後輩の言葉を残して、扉はゆっくり閉ざされた。