【管理職向け】言葉の重みを知る:叱ることから学ぶ、人としての在り方。
人を叱るというのは、本当に難しいものです。愛のある行為だと頭では分かっていても、つい感情が先走ってしまい、言葉がきつくなってしまうことも少なくありません。
成長を願うあまり、つい熱が入りすぎてしまうこともあるでしょう。
私自身、後輩や部下を指導する中で、何度も失敗を経験してきました。自分の未熟さを棚に上げて、感情的に怒鳴ってしまったことも一度や二度ではありません。
しかし、何度かの失敗を経験する中で、叱るという行為の本質は、相手を萎縮させることでも、自分のストレスを発散することでもなく、相手の成長を促すことなのだと気づきました。そして、そのためには、自分の感情をコントロールし、冷静さを保つことが何よりも大切なのだと痛感したのです。
けれど、本当に相手のためを思うのなら、そこはぐっとこらえて、冷静さを保つことが肝心なのではないでしょうか。
人間は誰しも、頭ごなしに怒鳴られれば、反射的に身構えてしまうものです。それでは、せっかくの言葉も相手の心には届きません。
「どうしてこんなことができないんだ!」と怒鳴り散らすのではなく、「今回は残念だったね。
次はどうすればいいか、一緒に考えてみようか」と、未来に目を向けた言葉をかける。
一方的に責め立てるのではなく、共に問題解決の糸口を探る。そんな姿勢が、相手の心に響くのではないでしょうか。
人間は、自分の可能性を信じてくれる人の言葉に、自然と耳を傾けたくなるものです。
また、「いつもあなたはそうなのだから」と、人格まで否定するような言い方は、絶対に避けたいものです。
「今回の件に関しては、〇〇が良くなかったと思う」と、叱る対象を絞り、あくまでもその行動について指摘する。
そうすることで、相手も冷静に話を聞き入れやすくなるはずです。人格と行動を切り離すことで、相手は自分自身を否定されたと感じることなく、具体的な改善点に目を向けることができるのです。
さらに、人は、叱られる内容だけでなく、誰から叱られるかによっても、その受け止め方が大きく変わります。日頃から信頼関係が築けている人からの叱責は、素直に受け入れられるものですが、そうでない人から叱られても、反発心を抱くだけでしょう。
つまり、叱る前にまず、相手との信頼関係を築くことが重要なのです。そのためには、普段から相手をよく観察し、良いところは積極的に褒めるように心がけたいものです。
「叱る」と「褒める」のバランスが、相手の成長を促す鍵となります。
言葉は少なく、でも建設的に。
そして何より、相手への敬意を忘れずに。そんな距離感が、相手の成長につながることを覚えておきたいですね。叱ることは、相手の可能性を信じ、その成長を願うからこそできる、愛情表現の一つなのです。
そして、叱る側の人間もまた、叱るという行為を通して、人として成長していくことができるのではないでしょうか。
叱るという行為は、人間関係における一つの試金石です。
相手を思いやり、言葉を選び、真摯に向き合う。その過程で、私たちは自分自身の人間性をも磨いていくことができるのです。
お互いの成長を促し合える、そんな健全な関係を築いていきたいものですね。