第5話「はじめての音楽授業」
第4話では、子どもに受け入れられたいと思う長谷川先生が、第1回目の授業に向けて準備をする様子を書きました。第5話で、ついに子供たちとの出会いについて書いていきたいと思います。第5話まで書いてきて、昔の記憶は意外と覚えているもんだな・・と驚きました。あくまでフィクションとして楽しんで頂けたらと思いますが、自分の振り返りのために書き残していきたいと思います。
主な登場人物(実在する人物と関係ありません)
新任教諭(音楽専科)長谷川先生
担任の先生(音楽部 長谷川先生の先輩)鈴木先生
指導教官(ベテラン教務主任)村上先生
斎藤先生と同期の音楽専科(他校に配属)岩倉先生
研究会の主宰者(ベテラン音楽専科)日村先生
第5話 はじめての音楽授業
今日は長谷川にとって、教員になってからはじめて授業をする日だ。
手元にあるノートを見ながら、もう1度授業の計画を眺める。
(最初が肝心だぞ、、!!)
自分を奮い立たせるように、笑顔をつくった。
廊下を並んで歩く子ども達の姿が見えた。
「おはようございます!」
長谷川は音楽室に到着する子ども達に声をかけた。
「おはようございます!」と返してくれる子もいれば、緊張した様子・とくに何も考えてなさそうな様子など様々見られた。あらかじめ決めておいた男子・女子交互の位置に子ども達が座っていく。
「きりつ!令!よろしくお願いします!」
元気な子ども達の号令が終わり先生の自己紹介を始める。
「みなさん、こんにちは!今日は先生のことをよーく知ってもらうために、スライドをつくってきました。先生クイズを今から出題します!当てられるかな?」
「第1問 先生の名前は??」
1.長谷川先生
2.谷川先生
3.短谷川先生
「第2問 先生の好きな楽器は??」
1.シンバル
2.トランペット
3.ピアノ
このように進めていった。子ども達が楽しそうに反応している。その姿を見て、だんだんと安心してきた。先生クイズを終えたあとは、自己紹介を兼ねて歌を歌う。曲はビリーブにした。歌い終わったあとに、「おお~!」と拍手を貰えて、またまた安心をした。自己紹介を終えたあと、校歌を歌ったり曲に合わせてじゃんけんをしたりしていたら、あっという間にチャイムの音が聞こえてきた。
(なんとか、楽しく授業を終えることができた、、!!)
こうして、長谷川のはじめての音楽授業が終わったのだった。
作者コメント
長谷川先生のはじめての音楽授業の様子を描いてみました。書いていると当時の記憶が蘇ってきますね。子供たちが廊下を並んで歩いてくる姿を見た時に、ドキドキした感じを思い出しました。
子どもたちは、このときどんな思いで廊下を歩いていたんでしょうか。私と同じように、はじめての音楽の先生に対して緊張していた子もいるかもしれません。「怖い先生だったらどうしよう?」「男の先生ってめずらしいな?」「面白い先生かな?」「音楽の授業は苦手だから心配だな」などなど。子供たちが安心できるような声掛けを行えていたのでしょうか?そして、音楽室に入ったときに、わくわくするような空間になっていたのでしょうか?子供の気持ちに寄り添えるようになりたいと思います。
さて、長谷川先生は「自己紹介スライド」をクイズ形式にしたみたいですね。子供たちの反応が良く安心した様子です。私は今も自己紹介をクイズ形式にしています。ただ、当時とは内容を少しづつ変えています。
現在の私が使っている自己紹介スライド紹介
上記のURLから、今年使った自己紹介スライドを見ることができますので、参考にして頂けると嬉しいです。
当時(1年目)と現在の自己紹介スライドで変化した部分や、その理由を考えてみます。2つの違いを考えることで、自分の教育観の変容がわかるのではないかと思うからです。
当時(1年目)と現在の自己紹介スライドの違い
【当時の自己紹介スライド】
①名前クイズ
②楽器クイズ
【現在の自己紹介スライド】
①名前クイズ
②年齢クイズ
③先生が授業中に絶対言わないことはどれ!?
④先生がいやだなと思うことはどれ!?
⑤先生がうれしいなと思うことはどれ!?
当時のスライドよりも問題数が増えています。また、問題の内容が先生自身の価値観について触れるものになっているなと感じました(③④⑤)。現在のスライドでは、年齢をクイズにしています。(あえて50歳という選択肢を入れていますが、そこに手を挙げる児童もいて面白いです笑)
まず、②の年齢クイズをなぜ入れたのかということです。当時の私は年齢を聞かれても「何歳だろうね~?」とはぐらかしていました。なぜなら、教師自身のプライベートなことまで話すのに違和感があったからです。ただ、今はプライベートな内容もざっくばらんに話すようにしています。これは、私自身の人間性をオープンにした方が、子どもと一緒に授業をつくっていく関係性になれるのではと思うからだと思います。
次に、③④⑤のクイズをつくった理由です。これは、第4話でも述べたのですが、子どもにとってわかりやすい先生を目指すようになったからではないかと思います。ひご先生は「どんなとき嬉しいと感じるのか」「どんなことが嫌だと感じるのか」ということが、子どもから見てわかりやすい先生になりたいという思いが合って、③④⑤のクイズをつくろうとしたのだと思います。
おわりに
1年目の授業開きと、現在の授業開きを比較すると、自分の授業や子供に対する思いが変容しているということに気づくことができました。来年度の授業開きをするときは、本記事を読み返したいなと思います。