第8話 グループ発表って必要なの?
主な登場人物(実在する人物と関係ありません)
新任教諭(音楽専科)長谷川先生
担任の先生(音楽部 長谷川先生の先輩)鈴木先生
指導教官(ベテラン教務主任)村上先生
斎藤先生と同期の音楽専科(他校に配属)岩倉先生
研究会の主宰者(ベテラン音楽専科)日村先生
第8話 グループ発表って必要なの?
「グループ発表って必要なの?」
音楽の授業後。長谷川のもとに駆け寄ってきたAさんが放った一言である。この日の授業では、リコーダーの曲をグループごとに練習して数週間後に発表するよという話をしていた。そのことに対してAさんは納得できない様子であった。
長谷川はAさんに
「どうして必要じゃないと思ったの?」
と尋ねてみた。
「だって、みんなの前で発表するのが嫌だって人もいると思うから。私もみんなの前で発表するのは嫌だし・・。別に発表をしなくても勉強できるんじゃないですか?」
長谷川は、Aさんの言うことにも納得できるなと思った。ただ、Aさんの言っていることをそのまま取り入れたら「みんなが一生懸命に練習できるのかな」とも不安に思っていた。そのことをAさんに伝えた。
「Aさんの言うことも分かるよ。だけど、発表するという目標がなかったら何のために練習するのかがわからなくなってしまって、みんなが一生懸命に練習できないんじゃないかと先生は思うんだ。それに発表することで身につく力もあるんじゃないかな?」
「でも先生。たった一回の発表でも、それでみんなの前で間違ってしまったらトラウマになっちゃうかも・・。発表するために練習するというのはわからなくはないけど・・。」
(うーん。。どうしよう困ったな。。)
長谷川は戸惑いながら「先生も答えが出ないから、先生の次の授業までの宿題にさせて。今度みんなにも発表が必要か確認してみよう。」と声をかけて会話を終了させた。
(さて。。次の授業で、子どもたちになんて話そうかな・・)
作者コメント
長谷川先生のような場面に遭遇したことはありますか?
私は実際に「グループ発表って必要?」と子供から質問されたことがあります。長谷川先生と同じように「その子の気持ちはわかるけど・・授業の計画もあるしな・・どうしよう。」と困ってしまっていました。ただ、このような質問があるということには大きな価値があると思っています。それは、子どもと共に授業をつくっていくことに繋がると思うからです。そのときの状況にもよって、グループ発表をするのか・やらないのか・希望者のみやるのか・動画で提出する形にするのかなど様々な発表の形があるのではないでしょうか。
ただはっきりと言えるのは、グループ発表をやることが目的になってはいけないのではないかということです。もちろん、グループ発表をすることで「協働する力・コミュニケーション能力」などの非認知能力を育むという狙いが達成できるかもしれません。ただ、「子どもが音楽とより親しめるようになってほしい」という願いを忘れてはいけないなと感じます。
グループ発表をすることで、音楽を嫌いになってしまう可能性が少しでもあるなら・・。無理をしてやらなくても良いのではないかと、今の私は考えています。
おわりに
グループ発表をやるorやらないの話だけではなく、子どもにとってこの活動ってする意味あるの?と思うことはたくさんあるのではないかと思います。すべてに答えることは現実的ではないかもしれませんが、私がやっていることの意味や子供に与える影響を考えながら授業をつくっていきたいと思います。