英詩: トマス・ハーディ『許されざる結婚予告』
作. トマス・ハーディ
訳. 出雲 幽
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「どんな手があるってんだい、先生閣下
今日の結婚予告を阻止するのに!
お前さんの息子は宣言してるよ、
たとえ身内千人が駄目と言ったって、彼女と結婚するって」
「何がなんだろうとやるったらやるさ!
たとえ俺が倒れてくたばろうと、
今日は教会に行くんだよ、
そんで二人は結婚するべきじゃねえって言ってやるのよ!」
その日、教区牧師は女の名前と男のとを
はっきりと発音した。
彼の父親は集まった身内の真ん中で
発言した、「この結婚予告は断じて許せん!」
それから血の気のない顔面に冷気が触れた、
彼は着席することにした、
彼が前方に倒れ、窺っていた間に
彼の命は飛び去ってしまっていたことが判明した。
二.
それは真夜中へと向かう夜の時間、
彼女の夫は低くつぶやいた、
「俺は心の底から思うよ
父親が死んでいなかったらと!」
彼女は右往左往していた
彼女は悲しみの女性
彼は続けた、「父は死ななかっただろう
俺のことさえなかったら!」
彼女が結婚して彼にもたらしたのは愚かな子供、
そしてもう一人愚かな子供、
彼の容色は衰えて青ざめた、彼の様子は
子供達の母親への憎しみで荒涼たるもの。
「耳を傾けよ、私の息子よ。いけない、いけない、
彼女の血統には狂気が受け継がれている!」
これらが彼の父親の言葉であった、見よ、
今ようやく彼は理解した。
あれは何の音?物音が一度、二度
近くにある銃から鳴り響いた。
発見されたのは二つの死体、隣人たちは
その行為が誰によってなされたかを知っていた。
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The Forbidden Banns
I
" O what's the gain, my worthy Sir,
In stopping the banns to-day!
Your son declares he'll marry her
If a thousand folk say Nay."
" I'll do't; I'll do't; whether or no!
And, if I drop down dead,
To church this morning I will go,
And say they shall not wed!"
That day the parson clear outspoke
The maid's name and the man's:
His father, mid the assembled folk,
Said, " I forbid the banns!"
Then, white in face lips pale and cold,
He turned him to sit down,
When he fell forward; and behold,
They found his life had flown.
II
'Twas night-time, towards the middle part,
When low her husband said,
" I would from the bottom of my heart
That father was not dead!"
She turned from one to the other side,
And a sad woman was she
As he went on: " He'd not have died
Had it not been for me!"
She brought him soon an idiot child,
And then she brought another:
His face waned wan, his manner wild
With hatred of their mother.
" Hearken to me, my son. No: no:
There's madness in her blood!
Those were his father's words; and lo,
Now, now he understood.
What noise is that? One noise, and two
Resound from a near gun.
Two corpses found; and neighbours knew
By whom the deed was done.
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banns・・・結婚予告。教区の教会に、連続して3回、日曜日に結婚を公示すること。異議の申し立てがなければ結婚式が行える。(英辞郎 on the WEBより)
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