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妄想映画キャスティング
2022 10/26(水)
実家に帰省した時に一冊のノートを見つけた。
緑色のよれよれのノート。それは高校生の時に書いたものだった。
ページを開くと、まず凄い。
「原田亮17歳、カンヌ国際映画祭グランプリ授賞」
と書いてある。
原田亮とは、俺の本名である。
映画好きの俺は、将来、映画監督に憧れていたのだ。
17歳でカンヌ国際映画祭グランプリとは、早熟の天才すぎるではないか。
おそらく、カンヌ国際映画祭というものを知った直後に書いたのだろう。
なんかカッコいいと思ったのだろう。
続いて、
「原田亮18歳、その飛行機に乗った人々で日本アカデミー賞作品賞ほか五部門授賞」
その飛行機に乗った人々、という映画を撮る予定だったようだ。
17歳で、突如としてカンヌという世界に羽ばたき、翌年には日本アカデミー賞とは、なんだかスケールが落ちているような気もするが、続きを読んでみたら、これがかなりのスケールなのだ。
「その飛行機に乗った人々」
監督・脚本・原田亮
出演・高倉健
宮沢りえ
西田ひかる
観月ありさ
牧瀬里穂
古田新太
桃井かおり
西田敏行
ケントデリカット
長渕剛
音楽・坂本龍一
めちゃくちゃ面白そうではないか!
なんなんだ、この日本映画は!このメンバーが同じ飛行機に乗っているなんて、どんなシチュエーションなのだ。
高倉健が一体、なんの用事で飛行機に乗ったのだろう。
乗ったら、近くの席に、宮沢りえ、西田ひかる、観月ありさ、牧瀬里穂。
当時のトップアイドルの面々が座っているなんて、幸せ過ぎるではないか。そこへ、古田新太という名バイプレーヤーがやって来る。
いかにも、ひと悶着ありそうだ。
そして、桃井かおりも来る。きっと、桃井かおりは乗客ではなくて、ベテランのスチュワーデスに違いない。
さらには、西田敏行の登場で、この映画のジャンルが、コメディだと決めてしまってもいいだろう。しかも、泣けるコメディだ。
そのあと、なぜ、ケントデリカットが出てくるのか。
たぶん、ケントデリカットは日本に仕事にやってきたビジネスマンという設定なのだろう。
ケントデリカットは、眼鏡を顔から離して目が大きくなるという一発ギャグを、飛行機の中で幾度となく披露して場を和ませている風景が思い浮かぶ。最後の出演者は、長渕剛になっているが、当時は、長渕剛出演の映画やドラマが多かったので絶対、外せなかったキャスティングなのだろう。
長渕剛は高倉健と意気投合し、宮沢りえたちに悪さをする古田新太をこらしめる役に違いない。
そして、音楽は坂本龍一。
長渕剛が出ているが、映画音楽といえば、ここは坂本龍一の出番だろう。
戦場のメリークリスマスやラストエンペラーで世界的に知名度のある坂本龍一を押さえてくるあたり、映画監督、原田亮のセンスを感じる。
これが、久石譲だと、ファンタジックな雰囲気になり、映画のイメージも随分と変わってくる。
俺は、ノートをめくりながら、あれこれと妄想していた。
そして、落語家になった現在、もしも、あのまま映画監督の道に進んでいたら、ここまでの豪華キャストではないにしろ、有名な俳優さんと仕事をしていたかもしれない。
いや、今からでも遅くない。「その飛行機に乗った人々」撮ってみたい。
当時のイメージしてたキャスティングは無理なので、今、俺がオファーをかけられそうな、現実的なキャスティングを考えてみた。
「その飛行機に乗った人々」
監督・脚本・三遊亭はらしょう
出演・服部健治(コント青年団)
林家つる子(おきゃんでぃーず)
林家あんこ(おきゃんでぃーず)
春風亭一花(おきゃんでぃーず)
桂しん華
トリトン海野
ウルルJUN
ぺぺ桜井
三遊亭好青年
井上雄策(元・三遊亭天歌)
音楽・ベートーベン鈴木
なんで芸人しか出てこないんだ!これはこれで、観たい!
アイドル枠に、落語ファンなら知っているおきゃんでぃーずの面々。
そこに、桂しん華、という天然の魅力満載の女性落語家がストーリーを転がしていく。
らっぱ漫談のトリトン海野は、ひょっとしたらハイジャック犯かもしれない。ラッパを吹きながら、ピストルをぶっ放す。
そんなキレキャラがハマりそうだ。
ウルルJUNは、優秀な客室乗務員。
彼女の判断で、ハイジャック事件が解決に向かう。
ペペ桜井は、一見、穏やかな老人に見えるものの、実はカンフーの達人で、ハイジャック犯をバッタバッタとやっつける。
ケントデリカットの枠に、外国人落語家の三遊亭好青年、というキャスティングも我ながら素晴らしい。
そして最後は、元・三遊亭天歌も、本名の井上雄策で、復活。
音楽は、ベートーベン鈴木。最高ではないか。
酒飲み音頭が映画全編に流れまくり楽しそうだ。
♪飛行機で酒が飲める酒が飲めるぞ~
一体、どんな映画なんだ。
昔のノートには自由な夢があふれていた。
俺は今年、45歳。
あの時の、まっすぐで、まっさらな気持ちを忘れてはいけない。