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✍海辺の狐 第2話
⯈伊豆半島、海辺に想うこと
初めて伊豆半島を訪れたのは、中学生の時、14歳の夏だっただろうか。
現在からは50年以上、半世紀も昔のことで記憶は甚だ頼りないが、東京駅から乗り継いだ列車と修善寺からの東海バスに乗り、海沿いを巡ったことを覚えている。
当時、海沿いの道は整備されてはおらず、下田から先はところどころが砂利道で道幅は狭く、対向車が来るとバスはすれ違いに難儀した。
三泊の旅行だったと思うが、バスを降りて観光した先のことなど、覚えているのは石廊崎でのことだけで、ほかに訪れた観光先や宿泊先などは、もはや記憶に蘇らない。
50年以上も前、私が中学生だった頃に訪れた半島の先端地域は、「伊豆の秘境」とも「陸の孤島」とも呼ばれ、当時は東京から簡単に行ける場所ではなかった。
中学生だった私がなぜ、東京から遥かに遠い南伊豆を目指したのか、今となっては思い出せず知る由もないが、断崖の上から見た海と絶壁のコントラストは、荘厳で厳格な海を瞼に焼きつけ、自然に畏怖する心を胸に刻んだ。
⯈東と南、そして西
一般的に伊豆半島の沿岸は、熱海から伊東、稲取を経て河津までのエリアを「東伊豆」と呼ぶ。
「南伊豆」とは、白浜、下田から始まり石廊崎を周った先、中木から伊浜の間の集落や漁村が点在する一帯のことを指し、概ね半島先端部のことを意味する。
雲見から先は西伊豆と呼ばれ、松崎、田子を過ぎて土肥に至る沿岸とその先、ダイビングで有名な大瀬崎から沼津南部の沿岸までを「西伊豆」と称するのだが、沼津南部沿岸のどこが西伊豆の終着かを私は知らない。
ー東伊豆ー
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相模湾に面した東伊豆沿岸では、熱海からは初島が見え、伊東を過ぎると彼方の沖には伊豆大島が見えてくる。
海は明るく開放的で、沿岸の観光スポットは東京からの列車、「踊り子号」が各駅に停まることで、四季を通じて多くの観光客が訪れる。
熱海や伊東、熱川、稲取など有名な温泉観光スポットがあり、網代や宇佐見、片瀬白田の町のほか、川奈や富戸、八幡野、赤沢、北川などの小さな漁村が沿岸に点在しているが、稲取から今井浜を過ぎて河津に着くと、東伊豆のエリアはようやく終焉する。
ー南伊豆ー
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陽射しが眩しい南伊豆。気候は一年を通じて温暖だが、伊豆半島の先端に位置するため、沿岸の海域は冬に季節風の影響を受けやすく、ひとたび西風が吹けば海は荒れ、人が近づくことを容易に許さない。
白砂の白浜海岸を過ぎた先には、爪木崎灯台、御用邸で知られる須崎半島が見える。さらに進めば、伊豆半島随一の港湾である下田湾、そして下田港に到着する。
下田からは鍋田浜や入田浜、吉佐美大浜などの有名な海水浴スポットが連続して続き、最後は弓ヶ浜海水浴場に行き着く。
沖には神子元島や横根、石取根などの下田沖根が浮かび、石廊崎に至る海岸線からは晴れた日に微かに伊豆七島を望むことができる。
石廊崎から海岸線は断崖絶壁の絶景が続き、沖に浮かぶ大小の島や直下に点在する無数の岩礁は、釣り人を魅了して止まない。
この景観は伊浜の先の雲見まで続き、高台から眺めるパノラマは圧倒的で、半島の先端を訪れた人々を魅了する。
ー西伊豆ー
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西伊豆の町や漁村には、他所とは違う独特の時間が流れている。
鄙びた町や漁村の風景はどこかおっとりとして、ゆっくりと流れる雲のように、すべて大らかに時間が過ぎて行く。
駿河湾に開けた海は波静かな日には優しく穏やかで、柔和な女性を想わせるが、しかし、ひとたび冬の季節風、西風が吹けば様相は変貌し、海沿いに暮らす人々を困らせる。
西伊豆は雲見、松崎から始まる。松崎から仁科、堂ヶ島、田子に続く海岸は、複雑に入り組んでいるが、堂ヶ島は特に訪れる観光客も多く、ホテルや旅館は西伊豆随一と言えるだろう。
田子を過ぎて黄金崎、恋人岬を巡れば温泉と観光の町、土肥に到着するが、その先はダイビングのメッカである大瀬崎に至り、さらに進むと沼津南部の海岸に到達するが、一帯は西伊豆と呼ばれるエリアの最北端に位置している。
⯈海岸線の道
伊豆半島は南北に約50km、東西は15〜35kmに渡り、一周は約300km程である。海岸に沿う道はその昔、片側一車線の狭い道だったが、今では国道の殆どが改修され、一部を除き素晴らしい海岸道路に変貌している。
海沿いを走る道は、崖沿いに急カーブやトンネルが続き、高台に連続するカーブを抜けて開けた場所に出れば、つかの間ほっとするが、再び坂道を登ると山間のアップダウンが待ち構えており、注意深くダウンヒルを下った先は、再び海沿いの平坦に至るという、大まかに言えば全線がこの繰り返しとなっている。
日中に車を走らせれば、様々な景色や景観に感動する素晴らしい海岸道だが、私のように釣り目的で夜間、しかも単独で車を走らせる輩には、油断ならない一面も持ち合わせている。
幾度となく訪れた伊豆半島だが、いつ訪れても飽きることはなく、車窓から眺めた海辺の景色や水平線、打ち寄せる波と陽射しの眩しさは、今も心に深く刻まれている。
次回は釣りにまつわるエピソードです、どうぞ宜しくお願いいたします。