見出し画像

超短編小説 医者のバカ息子

大寒の寒い中、診療所の前で立ち止まっている。入るべきかどうかと。

中学の頃、医者のバカ息子がいた。口が悪く私はよくからかわれていた。バカ息子は医者になるよう親に勉強を強制させられててストレスが凄かったのだろう。

バレンタインのチョコをあげたこともあったが、二人の間に何もなくバカ息子は大学病院がある系列の高校に進学していった。

大人になってからバカ息子は系列の大学の医学部に入りお嬢様と付き合い医者になって結婚したと噂で聞いた。まあそんなもんだろう。

気がつくとバカ息子は診療所の院長になっていた。お嫁さんも医者で二人で経営しているとか。幸せそうでよかった。

だが、グーグルマップでの評判は悪かった。口が悪いのが災いしていろいろやらかしていたようだ。クチコミなんてそんなものだろう。

そしてしばらく忘れていた。ふと、どうしてるかなと思いグーグルマップを見ると廃院と表示が。病院経営はいろいろあるのだろう。なんとなく調べて見ると近所で小さな診療所を開いていた。

それで気になって診療所まで来てしまったのだ。会ってどうするのだ。

どうしてるのか聞いてみたいという気持ちのほうが強く、扉を開けた。

綺麗な室内だが患者が誰もいない。受付に行くと「新規の患者さんは受け付けていません」と断られた。

「そうですか」と答えその場を去ったが、たぶんそれでいいのだろう。バカ息子頑張れよ。

いいなと思ったら応援しよう!